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無職だけどちょっくら異世界で稼いでくる  作者: 折坂勇生
6話 ザムラーのアイリス
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4・この世界に希望はないのか?

「私たちはまだいい。滅んだところで、地球に戻ればいいんだ。だが、永住者たちはどうなるかな」

「永住者も戻ればいいんじゃ?」

「知らないのかね? 地球に戻れないから永住者なのだよ」


 知らなかった。


「10年以内に、この世界の生き物は、みんな死んでしまうと?」

「間違いないね」


 久保さんは小さく頷いた。


「守護神のことは知っている?」

「知っている。新たな守護神の誕生で、世界は救われるらしいが、実際のところはどうだろうね。私が言っているのは、守護神が誕生しないと仮定してのことではある。だが、したところで、この世界にいるバイラスビーストを全滅できるのかね? この世界にいるバイラスビーストの数は、君たちが思っている以上に多い。しかも、増え続けているんだ」

「増え続けている?」

「君は戦っていて不思議に思わなかったかね? なんで、バイラスビーストを倒しても倒しても、次々と沸いてくるのか?」

「思っていた」


 幾ら倒しても現れていた。

 終わりが無いから、いつも途中で切り上げていた。


「それは、バイラスビーストは我々のように生殖行為をして生まれてくるわけではないからだ。彼らは、なんらかのエネルギーを受けて、一匹が二匹、二匹が四匹、四匹が八匹と、分裂することで増殖していっている。やっかいなのは、赤ん坊から大人へと成長することがなく、皆コピーされたように肉体、知力、体力、全てが同じなんだ」

「複数のバイラスビーストが合体して大きくなることもある」

「それが奴らの成長といえるかもしれない。ただ、好き勝手に増殖できるなら、この世界はとっくにバイラスビーストに支配されている。だから、なんらかのエネルギーを受けなければ増殖しないと推測している」

「つまり、バイラスビーストを倒すには、この辺りにいるのを闇雲に倒すのではなく、そのエネルギー源を突き止めて、破壊するしかない」

「それがユリーシャの光なら、どうしようもないね」


 お手上げだと両手を上げた。


「それはないだろう。バイラスビーストの目的は光の破壊だ。自分を強くするものを壊そうとするバカはいない」

「たしかに」


 同意していた。


「それが理由か?」

「もう一つある。エムストラーンが地球人を招いたのはバイラスビーストを倒して欲しいからだ。だけどね。危険を顧みずバイラスビーストに挑む者は少ないんだ。私も含めてね。この辺りにいるイェーガーが君一人というので良く分かることだろ。白骨の砂漠だって、そう強いバイラスビーストがいるわけではないのだが……」


 人がこない。

 大抵の者は、ネオジパングの周辺でウロウロとしているだけなのだろう。


「つまり、大半の地球人は、安全圏にいるザコ退治をして小遣い稼ぎをするだけ。本来やっつけて欲しい凶悪バイストは、高額だろうと挑戦しようとしない」

「その通りだ。この世界を調査をするとき、場所によってはイェーガーを雇うんだが、危険地帯は断られるんだよ。だから、調査が思うようにはかどらないでいる」

「弱いバイラスビーストはやっつけられてしまうが、強いバイラスビーストは危険を恐れて放置してしまう。その強いバイラスビーストは増殖を繰り返し、数が増えていっている」

「原獣に取り憑いて、新たなバイラスビーストが生まれる恐れもある」


 そういう厄介なことがあった。


「原獣に取り憑くバイラスビーストはそう多くない。発見次第、始末するべきだが、それを実行する組織も人もいない。作りたくても、ここに入り浸る者たちは訳ありだらけだ。地球側の生活だってある。まとまることができずに、派閥が生まれて、闘争が起こってしまうだろう。できることは、せいぜい賞金額を上げることぐらいだ」


 倒すべきバイラスビーストが放置状態になっている。


「一年せずに、レベルの低いイェーガーには手をつけられないバイラスビーストだらけとなる。新しいイェーガーが育たなくなるのも、この世界にとっては脅威だ。どうかね。私の予測は、外れると思うかね?」

「いや、その通りだろう。久保さんの説を反論する材料を俺は持ってない。そうであって欲しくないと願うだけだ」

「浅田くんだったかな。君は素直でいい。生徒に欲しいよ」

「もう、学生という年でもないけどな」


 俺は苦笑する。


『イブキさーん、イブキさーん、生きていますかーっ!』


 ケータイからセーラの声が聞えた。


「話し中だ。黙ってろ」

『ええー、あ……』


 通話を切って、直ぐにポケットにしまった。


「君は、ナビがいるのかね?」

「いるんだが、連れの魔法使いが連れてった」

「それは珍しい」


 ナビがいることか、連れが連れてったことか。

 両方だろう。


「この世界に希望はないのか?」

「浅田くんのようなイェーガーがいるのが希望といえる」

「買いかぶりだ。俺は強くない。つい最近、友を失ったばかりだ。俺の力不足でな」

「それはそれは、お悔やみを申し上げる。私も、生徒を失ったよ。それも三人……」


 三人も……。

 教授だと言っていたし、大学内に転送機があって、生徒たちがエムストラーンに来ているのかもしれない。


「自殺扱い?」

「エムストラーンの死者はそうなるようだ。本当のことが言えず、辛かった。ここに来るのは止めようと何度誓ったことか」


 話したところで、鶫山警部がやってきて、自殺だと言われるだけだ。


「それでも、あなたはここに来ている」

「死んでいった生徒のためにも、なおさら引けなくなったよ」


 俺と同じ理由のようだ。


「友を殺したバイラスビーストは、この北西の所にいる」


 俺はその方向を指さした。


「名はダークドクロ。この辺りにいるドクロを巨大化した奴だ。普段はサラダンスの中に入って身を隠している。それで、サーチするとレベル8と表示されていたんだ。甘く見ていたよ。サーチの色が黄色なのを警戒するべきだった」

「ユニークビースト……」


 目の色を変えていた。


「ああ、絶対に仇を取ってやる」

「それがいる位置を詳しく教えてほしい。ユニークビーストに関心があってね、調査をしてみたかった」

「危険だぞ」

「分かっているよ。戦いはしない。観察するだけだ。それに、ユニークビーストの生態を調べる人が欲しいだろ?」

「そりゃ……」

「ユニークビーストに、気になる点があるんだ。私の仮説が正しければ、この世界に、希望が持てるかもしれない。ほんのちょっぴりのだが、無いよりはマシだ」


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