1/1
序章
とある冬の朝。
「寒っ...!!」
雪紀は一人呟く。真冬のプラットホームは、地下鉄とは違い剥き出し状態なので冷風が容赦なく吹き付けてくる。
──電車が来るまで、とりあえずスマホでもいじるか。
SNSを開くと、皆も同じらしい、『寒ぃ:;((•﹏•๑)));:』のようなことでタイムラインが埋まっていた。だが、やはり私宛の通知は無かった。
SNSを閉じ、ゲームのアプリを開く。
「私はやっぱり皆に必要とされていないんだ」
マフラーの中に、声はかき消された。
電車がホームに到着し、ぎゅうぎゅう詰めの車内になんとか乗り込んだ。背が低いので大人達の背中で外の景色が遮られていた。
電車が次の停車駅に着くと、人の大半が降りたので、ドア側スペースの特等席に私は滑り込む。外の景色を眺めるのが好きな私はスマホから顔を上げ、窓の外を見た。
「......!?」
外を背中に羽の生えた人間のようなものが通り抜けていったように見えた。目をこすりもう一度見たが、それの姿は消えていた。
──気のせいか...。
電車はトンネルに入り、私はイヤホンをして目を閉じた。