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第43話:野良猫と赤犬

 アルカンシェルから少し北へ歩くと、ほどなく海に出る。

 そこに広がる浜辺は手のひらサイズの黒っぽい石がゴロゴロと転がっており、学院の近くの美しい砂浜(サンドビーチ)と比べると実に対照的だ。

 その殺風景さゆえだろうか、浜辺の中央にポツンと鎮座した巨大鍋は、周囲と馴染んであまり違和感を感じさせない。

 鍋は石段で持ち上げられており、その下では薪が豪快に燃え、鍋の中は湯がグラグラと煮え立っていた。

 その中身を木の棒で背伸びしながら一生懸命に攪拌(かくはん)しているのはアーシェルだ。


「……暑い。死ぬ」


 顔にビッシリとかいた汗を(そで)をまくった腕でぬぐうが、たいした効果などない。

 火の近くにいれば暑くて当然だったが、それに加えてギラギラと照りつける陽光を遮ぎるものがここには何も無いのだ。

 首の後ろがチリチリと痛み、いい加減頭がクラクラしてきた時――ようやく救いの声はかかった。


「アーシェル、お疲れさま!」


 振り返るとアルマがいた。獣道をひょっこり抜けてきたらしく、元気に手を振りながら走ってくる。

 朝食は自分もアルマも同じ(わず)かな木の実だけだったはずだが、無駄に豊富なそのエネルギーはどこから来るのだろうか。


「ほら、学院からナバル達が戻ってきたよ。結果は大成功!」


 嬉しそうに報告したアルマの後ろからレディンとカンナ、ナバル達3人組にクレアとザイルのバカップルまで沸いてきた。

 その中でレディンがアーシェルを見るなり驚いた顔で近づいてきて、水の入った革袋を差し出す。


「アーシェル、すごい汗ですよ。無理しないでください」


 革袋を受け取ると急に喉が渇いていることを思い出し、その口から新鮮な水をゴキュゴキュと飲む。

 冷たい液体が体中にじんわりと染みて心地よい。生き返るとはまさにこのことだ。

 革袋いっぱいにあった水を一気に半分ほど飲み干し、アーシェルはようやく首を傾げた。


「で、みんなで来るなんて、どうしたの?」

「シュルトに知らせなきゃいけない事があるんだけど、アイツどこいったの?」

「どっか行った。もうすぐ戻る」

「そう……ならちょうどいい機会だし、ナバル達にアレを見せてあげてよ!」


 アルマは巨大鍋を指差し、いたずらっぽく唇の端を上げる。

 その会話を横で聞いてたナバルが、だれたような顔でつぶやく。


「アレって何の事だ? もったいぶるなんて意地が悪いぞ。こっちは歩き詰めで疲れてるんだ」

「まぁまぁ、おじさん臭い事言わないの。その鍋の中を覗いて見て。それ、いったい何だと思う?」


 アルマに(うなが)され、ナバルは身を乗り出して鍋の中身を覗いた。

 ボコボコと沸騰するお湯の中で、白く細長いパスタのような物が所狭しと舞っている。

 その横からウルスラやオグも覗きこみ、クンクンと鼻をひくつかせた。


「食べ物にしちゃあ、あんまり良い匂いじゃないね」

「鍋で植物を煮込むって事は染料――じゃないし、糸かな?」

「おしい! 実はこれ、紙を作ってるの」


 そのアルマの答えに、ナバル達の三人は揃って目をむいた。


「紙だって? これがかい?」

「紙なんて本当に作れるのか?」

「しかも、こんな鍋なんかで」


 半信半疑な言葉にムッとしたのはアーシェルだ。

 真剣そのものの表情で三人組にビシリと指を突きつけた。


「お鍋があれば何でもできる!」

「お、おいおい。そんな無茶苦茶な――」

「お鍋があれば紙だってできる!」

「分かった、分かったから」


 いきなり熱を帯びて宣言するアーシェルを前に、さしものナバルもタジタジと苦笑を浮かべアルマに助け舟を求めた。

 アーシェルは鍋が絡むと途端に根性論になる。それで納得しろと言うのもさすがに可哀想だと、アルマは肩すくめてパンパンと手を打った。


「はいはーい、注目! ええとね、この煮込んでるのはタケって言って、さっき私が売ってたタケノコが成長したものよ。ふやけちゃう前のがあそこに転がってるヤツね」

「へええ、さっきのヤツとは全然別物だな。おお、中が空洞になってる! こんな植物もあるんだな」


 ナバルは地面に転がっていた竹を手に取り、興味津々と言った顔で感嘆の声を上げる。

 その反応に満足そうに頷いたアルマは、攪拌(かくはん)用の大きな棒で鍋の中から細い糸状になったタケをすくい上げた。


「紙を作る材料の条件は強い繊維質を持ってる事。アーシェルが言うにはこれだけ強い繊維質をもつ植物は珍しくって、紙を作るには最適らしいの。後はこれをじっくりと茹でて柔らかくして、最後に整形しながら乾燥すれば――」

「紙が出来るわけだね!」


 ウルスラの言葉に、アルマはにっこりと頷いた。


「でもよ、整形ってどうやるんだ? 地面に敷いたって、かなりデコボコになるだろ?」

「……そこで、これ」


 いつの間にやらアーシェルの手には平べったい木枠が握られており、誇らしげに差し出していた。

 ナバルが手にとって調べると、大きな木枠の底には麻糸が細かく張り巡らされている。どうやらこれで鍋の中のタケをすくい、水気を切りつつ整形までやるらしい。

 高級品と言われていた紙が、案外簡単な手順で出来ることにナバルは心底驚いた。


「アルマの嬢ちゃんは、これも売るつもりなのか?」

「もちろん! なんと言っても神学部の卒業条件には必須アイテムだもの」

「神学部の?」


 首を傾げたナバルに、レディンは「そうなんですよ」と嬉しそうに頷いた。


「神学部の卒業課題は聖典の写本を作る事なんです。ですから、紙とインクはどうしても欲しかったんですよ」

「なんだい。それじゃ紙が作れなきゃ課題をこなせなかったって事かい?」

「はい、ウルスラさんの言うとおりです。それに持ち込む物品に聖典を選んでなければ、写本なんてとても無理でした。幸い、僕は父さんの聖典を持ってきたのですが……もし持ってこなかったらと思うとゾッとしますね」

「そりゃあ怖い課題だったね。神学部じゃなくてほんと良かったよ」


 オグは苦笑いを浮かべてレディンに同意すると、アルマは「何言ってるの」とお決まりの言葉を吐いた。


「紙は文明の基本、聖典は神学の基本よ。金品を持ち込む聖職者なんて冗談じゃないでしょ」

「そりゃあ正論だけどね……で、紙は量産するの?」

「もちろん! 今後は製紙業をウチの主力商品にするんだから! 第一号が出来上がったら、みんなで交代で量産するわよ!」


 アルマが元気よく拳を振り上げ、みなが盛り上がる中――たった一人、怒りに震えている人物がいた。


「……お前ら、何考えてるんだよ!」


 我慢の限界だとばかりに叫んだのはザイルだった。


「どうしたの、ザイル?」

「どうしたのじゃないだろ。もうすぐ学院の連中が大挙して攻めて来るって言っただろ? なんでみんな暢気なことばっかり言ってるんだ!」


 烈火のごとく怒っているザイルに、アルマは人差し指で頬をかき、苦笑いを浮かべる。


「そりゃもちろん心配よ。だからシュルトのいるここに来たんだし」

「じゃあ、そのシュルトはどこで何をしてんだよ!」


 確かに、アーシェルと一緒に海岸にいると伝言を預かっていたのに、シュルトの姿はまだ見えない。


「……アーシェル、シュルトって何してるの?」

「地形を調べるって」


 アーシェルの答えに、ザイルは信じられないと首を振った。


「地形だって? そんな事してる場合じゃないだろ! 一刻も早く準備しないと、みんな……みんな殺されるかもしれないんだぞ!」

「ちょ、ちょっと、ザイルさん、落ち着いてください」


 ザイルがアルマに詰め寄ろうとしたので、それ以上近づかなせないようカンナは間に割って入る。

 しかし、ザイルはカンナの肩越しにアルマへ溜めていた疑問をぶつけた。


「だいたい、なんで大事な防衛をシュルトなんかに任せたんだよ! あんなヤツに全部任せるなんて、ありえないだろ!」

「――そう思うのが普通だろうな」


 突然、ザイルの背後から声がした。

 ギクリとザイルは後ろを振り向き、顔を青く染める。

 シュルトがゆっくりと、こちらへ歩いていたのだ。


「……シュルト、あのね」


 アルマが慌ててフォローしようとしたのを手で制し、シュルトはザイルの前に詰め寄った。


「ザイル=タンツェン、俺に言いたいことがあるみたいなだな。言ってみろよ」

「う……あ……」


 凶悪な隻眼に睨まれ、恐怖でうまく言葉が出てこない。

 言いたい事はあるのに、シュルトの雰囲気にすっかり飲まれてしまった。


「どうした? 隠れていないと何も言えないのか?」


 そう言って浮かべた薄笑いが憎らしくて、ザイルはグッと奥歯を噛み締める。


――そうだ、こいつはまだ何も聞いて無い。何も知らないから余裕なんだ!


 ザイルは息を吸うと、シュルトに向かって言葉を吐き出した。


「し、知らないようだから教えてやる。もうすぐ学院のヤツらがここに大挙して攻めてくるんだ! 俺達の食料を狙ってな!」

「――ふむ、攻めてくる人数は?」

「300だ! しかも素人じゃない、ちゃんと全員訓練されたヤツらが300人も攻めてくるんだ!」


 どうだ、とばかりに事実を叩きつけたザイルだったが、次のシュルトの言葉に口をぽかんと開けることになる。


「……そうか、予想より少ないな」


 ザイルだけじゃない。周りで成り行きを見守っていた誰もがその発言に目を丸くした。


「なっ――少ないだって? じゃあ、お前、どうにかできるって言うのかよ!」

「当然だ。そのために俺はここにいる」


 あまりにも平然と言ってのけたシュルトが理解できず、ザイルの胸に正体不明の怒りがこみ上げてきた。


「ふざけんなっ! お前が失敗すれば、みんなが危険になるんだ。場合によっちゃ殺されるかもしれないんだぞ? もしそうなったら、どうやって責任とってくれるんだよ!」


 ザイルの言葉に、シュルトは何も言い返さない。涼しげな顔で受け止めるばかりだ。

 その顔をなんとか歪めてやりたくて、ザイルはさらに言葉を重ねた。


「何とか言えよ! ……ああ、そうか。分かったぞ。どうせお前、自分さえ生きていれば、みんなが死んだって平気なんだろ!」

「――ああ、その通りだ」


 即答したシュルトに、ザイルは目をしばたかせ、やがて勝ち誇ったように叫んだ。


「き、聞いたかよ! こんなヤツに防衛を任せるなんて、俺は納得できねえからな!」


 変な雲行きになったと、アルマはシュルトを見るが、当の本人は平然としている。

 どうしてと問いただそうとした時、ザイルへの援護が思わぬところから入った。


「――ふむ。ザイルの意見に俺も賛成だな」

「ナバル!」


 驚いて声を上げたアルマに、ナバルは肩をすくめて答える。


「なあ、アルマの嬢ちゃん、冷静になって考えようぜ。シュルトは確かに優れてるかもしれん。だが、どれだけいい作戦を思いついたって、皆が従わなきゃ意味が無いだろう?」

「あたらしらはともかくだよ。疑心暗鬼になった奴らは命令なんて無視するに決まってる。さっさと逃げ出したり、中には裏切るやつだっているだろうさ。そんなバラバラな集団じゃ、作戦なんてあって無いようなもんだろ」

「ウルスラまで……」


 学院の状況を直接見てきた3人が揃ってシュルトでは不安だと言っているのだ。

 アルマは二の句が告げなくなって、うつむき唇を噛んだ。

 その重い沈黙を破り、シュルトが口を開いた。


「……お前らが言いたい事はよく分かった。ではザイル=タンツェンに問う」

「な、なんだよ」


 正面から睨みつけるシュルトを、ザイルは精一杯の虚勢を張って見返した。


「皆が死んだ時、貴様ならどうやって責任を取る?」

「せ、責任?」

「そうだ、貴様が言った事だろう。何故、他人の死に責任を取らねばならない? 俺は、その答えをお前から聞きたい」

「ええと、それは……」


 ザイルは偉そうな事を言ったものの、自分に何も考えが無い事にようやく気付いた。

 しかし、シュルトのような無責任な態度を受け入れるわけにいかない。

 そりゃあ、自分が弱い事など知っている。あのアルマが頼りにしているシュルトに比べたら、力も頭脳も比べ物にならないのだろう。

 しかし、それでもザイルは必死にならざるを得なかったのだ。


――だってそうだろう、俺は、俺は、


「俺は、クレアを守りたい。なにがあっても、絶対に……」


 ザイルは腹の奥から搾り出すように、その言葉をシュルトに返した。


「クレアが死んだら、俺、責任なんて取れない。俺がどれだけ苦しんで死んだって、そんなの全然足りないんだ! だから、俺は死んでも、クレアだけは絶対に守る!」

「……ザイル」


 隣で黙って聞いていたクレアは、嬉しさだけでは収まらない複雑な表情を浮かべた。

 死んでまで守って欲しいなどと、クレアは思ってないのだろう。

 だが、自己満足だろうがなんだろうが、彼女だけは絶対に死なせたくない。

 それがザイルの全てなのだ。


「だから責任なんて、俺もとれない……すまん」


 ザイルが悔しそうに頭を下げるのを見て、シュルトは表情をフッと和らげた。


「やはり、貴様が適任のようだな」


 そのつぶやきに、ザイルは顔を上げてシュルトの顔を見た。


「適任……って、どういう事だよ?」

「俺は初めからここの戦力などあてにしていない。戦う覚悟のあるヤツだけ使えれば十分、それ以外はハッキリ言って足手まといだ」

「ええと――ごめん、何言ってるんだかさっぱり分からん」


 ザイルは苦笑いを浮かべ、簡単な説明をシュルトに求めた。

 そこで、非常に簡単な言葉でシュルトは言い直した。


「つまり、俺とお前の二人で敵を撃退する――そう言う事だ」


 直後、ザイルの口から驚きの叫びが上がった事は、言うまでも無いだろう。





 夕焼けに染まる大教棟の一室。

 そこでエラの張ったいかつい男が、一本の剣を丹念に磨いていた。

 貴重な油と綿布を惜しげもなく使い、鼻歌交じりに豪奢(ごうしゃ)な剣を拭いている。

 そこへ痩身の男が音も無く侵入してきた。

 侵入に気付かない男の背後に近づくと、そっと声をかけた。


「いい気なものだな、カイツ」

「うおおおおおっ!」


 カイツと呼ばれた男は、驚きのあまり剣を取り落として立ち上がった。

 暴れる胸を押さえて振り向ると、そこにいたのは見覚えのある顔だ。


「……貴様、たしかアグリフ様のガーディアン」

「シャデラクだ」


 シャデラクと名乗った男は制服を動きやすいように切り刻み、まるで盗賊のように着こなしている。

 いぶかしげなカイツの顔を見て、シャデラクは薄笑いを浮かべて告げた。


「カイツ、お前にアグリフ様からの伝言がある」


 ただの3等級生徒のはずだが、敬語を使うそぶりすら見せない。そもそもいきなり高級貴族の部屋に入るなど、アグリフの手下でなければ切り捨てるところだ。

 そのふてぶてしい態度にカイツは内心で舌打ちし、せめて上下関係を示すように胸を張った。


「ご苦労、内容を伝えよ」

「……出発は明後日の早朝、総指揮をお前に任せるそうだ」


 総指揮と聞いてカイツは小躍りしそうだったが、頬をピクリとしただけで平静を装う。


「そ、そうか。それにしても明後日とは随分と早まったな。予定では5日後のはずだろう?」

「こちらの動きを野良猫どもに漏らしたバカがいたからな。下手に準備をされてはやっかいだと、アグリフ様のご配慮だ」


 野良猫――とは、アルカンシェルに巣食う愚民どものことだ。

 一致団結せねばならないこの非常時に、自分勝手な行動で秩序を乱した許されざる集団を、アグリフが憎しみを込めてこう呼んだのだった。

 しかし、野良猫の存在はアグリフにとってはむしろ好都合のはずだ。食糧難で不満を募らせている生徒どもへ、呈の良いスケープゴートになるからだ。

 それを見抜いたカイツは、いつの間にやらアグリフに取り入ることに成功し、今では正規軍の総指揮を任されるまでになったのだった。

 この討伐に成功し、無事本土へ帰る頃になれば、シュバート国随一の豪商ラーゼ家と強力なコネクションが生まれていることだろう。


――これで、あの田舎(ノイン)領ともおさらばだな


 カイツはほくそ笑むと、何気なくシャデラクに尋ねた。


「で、その情報を漏らしたバカとは誰だ?」

「弟が処理した。気にするな」

「――っ」


 さも当然とばかりに答えられ、カイツは肝を冷やした。

 内心の動揺を見抜いたように、シャデラクは一歩近づいて脅すように言う。


「……お前はアグリフ様から300の兵を預かった。(あるじ)は失敗など許さぬ。それをよく覚えておけ」

「わ、分かっておる。失敗などありえんよ」

「それと、もう一つ。お前を信用して内密な伝言がある」


 何、とカイツが言葉を漏らす。

 内密と言う事通りシャデラクはさらに近づき、カイツの耳元でささやいた。


「食料さえ奪えれば、こちらの犠牲は問わぬ。むしろ多くて構わん――との事だ」


 ゴクリとカイツの喉の奥が鳴る。

 食料を手に入れつつ、多すぎる学院生徒の数を調整するつもりなのだ。


――失敗すれば我も調整(・・)される、と言う事か


 群衆の前で見せているアグリフの顔が偽りの仮面だということは気付いていた。だからこそ、こうやって重要な役割を与えられているのだと言う自覚もある。

 今はヤツを最大限利用するべき時だが、絶対に心を許してはならない相手だとも理解した。


「分かった。アグリフ様には安心して待っているよう伝えられよ」


 カイツは内心を悟られぬよう、重々しく答える。

 その言葉を聴くや、シャデラクは全く足音を立てずに部屋を出て行った。

 残されたカイツは床に落ちた剣を拾うと、その刃の表面をゆっくりと撫でる。


「我は失敗などせぬ。待っていろよ、アルマ=ヒンメル、シュルト=デイルトン」


 真っ赤な夕日が窓から差し込み、その光の束に向かって剣を振り上げる。


「あの古井戸で大人しくしていればよかったと、悔いながら死ぬがいい!」


 カイツの振り下ろした剣が、血の色に染まった。


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