作品 5 「終末の浜辺」
終末の浜辺
「毎日毎日、飽きもせず、よくも御託を並べていられたものね。呆れかえちゃう! この間、あたし、いわなかったけ。神のことなんて忘れなさいよ。そんなモンいないんだから。考えてみてもご覧なさい。こんなにあなたが苦しんでいるのに――いったい、いつからあなたのそれは続いているんでしょうね――神は現前してくれないじゃないの。ウン、そうよ、別にあなたにじゃなくたっていいんだよね。あなたの苦しみや悩みなんて、かつてもっと酷い時代に、酷い状況で苦しみ抜いた人たちの悩みに比べれば、赤ん坊の嘘泣きみたいなものですからねぇ。でも、その人たちにだって、一回だって、あの畏れ多い、慈悲深い神様は顕れてくれなかった。少なくとも、客観的な実体としてはね。もっとも彼らの多くは、いまでいうところの精神錯乱を起こしていて、彼らをして神と出会ったのは、彼らの真実でしょうね。たぶん。だから幸せね、彼らは。そして同じ論法でいって、あなたは不幸ね。だって、あまりにも正気なんですもの。うふふ。正気、しょうき、ショウキ、konscio、sanaspirito、racio、sobreco、seriozeco。……そうねえ、あなたのそれは折紙つきだわ。だって、あたしを信じているくらいですもの。まともな精神の産物であるとはとても思えない、このあたしの存在を*****」
○“variant”
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