作品 25 「裏表紙」
裏表紙
そうやって、しばらく上を向いたまま佇んでから、私はナップザックを探り、二個で対になっている鍵を取りだした。まず最初に手前、左から二番目の生活必需品の入っているはずのロッカーを目差した。いわれた通りに六つと四つを数え、鍵を差し込んだ。開かなかった。それではと思い、すぐにもう一方の鍵をロッカーに差し込んだ。今度は開いた。鳩を意匠したと思われるマークの付いた紙袋が入っていた。手に取ってみると、それはずっしりと重かった。開くと、中には約三日分の食料が入っていた。パンとコーラと野菜と果物。それに自動販売機用の小銭が十数枚。これはソフトプラスチックのケースの中に仕舞われていた。その下に、いつものように薄い本が三、四冊押し込まれていた。エロ本だった。あるいはもっと上品に官能写真集といい換えてもよい。これみよがしに、一六、七歳のダイアナたちが痴態を披露していた。惜しげもなく。明らかに作りものとわかる恍惚の表情を浮かべている娘もあれば、ちょっと見には見当もつかない、いい表情を浮かべている娘もあった。そして私にはそのどれもが彼女に見え、またそうではないように見えた。私はそれら生活必需品すべてを、やっとのことでナップザックに押し込むと、ロッカーを閉め、鍵を引き抜くと、彼女に指定された次なるロッカーに向かった。二つと七つを数え、鍵を差し込んだ。また開かなかった。どうやら私には一種の隠れた才能があるらしい。私は自分に苦笑すると、鍵を取替えてロッカーに差し込んだ。
○「棗と凪」
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わたしは弟の凪が好き。その感覚はとっても微妙。だからわたしは自分でもちょっとヤバイんじゃないかと思うときがある。もちろん凪さえしっかりしていれば何も起こるはずがない。そう信じる。しかも凪には彩音という可愛い彼女がいるし……。
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