作品 12 「囚われ人のモノローグ」
囚われ人のモノローグ
私はウォークマンの電池収納部の中蓋を外し、中の古い電池を取り出した。取り出した二本の電池を手に持ってしばらく見比べてから、そのときたまたま左側になった方の電池を新しいものと交換することに決めた。背中のナップザックから出したマジックペンで古い方の電池に使用済みの印を入れ、デジタル時計で確認してから日付を書き加えた。マジックと使用済電池をナップザックに放り込み、それを背負うと、わざと自分を焦らすようにウォークマンに電池を入れた。蓋を閉め、カセットを装填した。ライトヘッドフォンを耳に掛け、再生のスイッチを押した。すると、
「さっきはごめんなさいね。うっかりしちゃって……」
開口一番声がいった。一六、七歳の少女の声だ。声はさらにその若さを象徴するかのように転げるように笑った。
○「囚われ人のモノローグ」
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わたしは長く囚われている。ずっと、ずっと囚われている。いつも、いつも疲れている。ある日、半鐘の音を聞く。どうやら火事があったようだ。かつてわたしには価値があったらしい。わたしの盗人がいたからだ。が、彼女はもうこの世の人ではないだろう。わたしは無数に存在する。わたしはいろいろ知っている。わたしはいろいろ想像する。わたしは毎日血を抜かれる。身体の一部を奪われる。接する人が仮面を被る。ある日、わたしが夢を見る。わたしに対するヒントを掴む。が、彼女はそれを逃してしまう。民がそれを逃してしまう。時間が過ぎ去り、時間が止まる。接したジェルは人ではない。わたしが可能性を阻むのだ。遠い昔、別のわたしが体験する。気配があって襲われる。空気がすっかり変わっている。わたしは孤島にも囚われる。わたしを嫌う存在がいる。核ミサイルが発射される。けれども、わたしは助かってしまう。半鐘の音は鳴り止まない。今甦る現代の神話。
Monologue of the prisoner




