作品 0 「白い下着の女、または自画像」
白い下着の女、または自画像
[離迷宮←都市]
いや、神は何物でもない。神は我々が
信じてやらなければ存在し得ないほど
弱い存在である。
(大岡昇平「野火」より)
いつからここにいるのかわからない。そしてこのさき、いつまでここにいつづけることになるのかも……。
地下鉄・地下道。ここはかつてそう呼ばれたところの場所だ。網の目のように張り巡らされ、原生動物のように偽足を伸ばし、大都市を震撼させたあの懐かしいどっしりした鉄路の偉大なる付属物であり、それ自身も生物然とした人工の迷宮。人を飲み込んだ。店を飲み込んだ。イルミネーションを飲み込んだ。汚物を飲み込んだ。そして、最後に <かれ> がその造物主たる現存在の罪を飲み込んだとき、かれは盲いた。高貴なる日輪へと至る道を――知られる限り永遠に――閉ざされたのだ。
○「香魔」
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まだ高校生だった頃、わたしはある香りを嗅ぐ。柑橘系だが、香りの元は女。まるで幽霊のような女に、わたしは家まで誘われる。そこはデザイナーズマンションの十三階。エレベーターを降りると回廊のような空間だ。そこを通り抜け女の部屋に入り、ベランダを望むフローリング床の一室で会話をする。やがて女にお茶を出され、わたしがそれを飲むのだが……。
Woman in white lingerie, or self-portrait




