黒い炎
人は欲深い生き物だ。
アレが欲しい、コレが欲しい……。
そう言った欲望は、際限なく噴き出してくる。
例え一時の満足を得たとしても、しばらくするとまた新しい欲望が噴き出してくる。
もっと評価されたい。
もっと認めてもらいたい。
そんな風に、欲望は際限なく広がり続ける。
決して、欲望が収まることは無い。
そして――――その欲望が満たされないまま、己の欲する物を持っている他者を見ると、どうなるか。
――――あいつは、持っている。
するい。何故あいつだけ。
何故自分は貰えない。
そのような――――真っ黒な感情に染まった黒い炎が心の中に燃え上がる。
その炎は――――決して消えることは無い。
己の欲望を満たすまで。
己の中にその炎を灯させる「あいつ」を自分が完全に上回り、優越感を得るまで。
この炎は、欲望は、消えることは無い。
そして――――炎が消えず、己の心をも飲み込み始める時、心のうちに留められなくなった黒い炎がついに外に解き放たれてしまう。
――――どうしてお前だけ!
――――何故お前だけ!
――――俺も欲しい!
――――俺にも寄越せ!
嫉妬の炎は思考を狂わせ、良識すらも塗りつぶす。
持てる者を全て嫌悪し、持たざる者を、否、自分より下に居る者を見て優越に浸るようになる。
あいつは俺が持ってる物を持っていない――――このあまりに情けない優越感が、どす黒い嫉妬の炎に蝕まれた心を何よりも落ち着かせるのだから。
もう一度言おう。人は欲深い生き物だ。
この欲望に限界は無い。
他者が持っていて、自分が持たない物、その全てを妬んで欲しくなってしまう。
それが――――人なのだ。
常に己の内の黒い炎を制御しなければいけない欲に塗れた生き物。それが我々なのだ――――。
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