青金
結局私は正しい選択をしようと迷っているだけなのだろうか。
人間をやめるか、人間に戻るか。通常なら決してありえない究極の選択だ。人間ってなんだろう。
そんな哲学的な思考すら浮かんでくる。人間をやめることは正しいのかといわれれば正しくないに決まっているけれど。
ふと思いついたことを言ってみる。
「あのさ、これ、白い石を選んだ人ってもう、子供を作れないようにしたんじゃないの」
玉響媛は小さく眼を見開いた。
「よく気がついたな」
「あの女が言っていたもの、私達は玉響媛を害する道具だって、だったら自分の管理の外にまた血脈が増えるのは御免こうむりたいんじゃないの?」
なんとなく背後がざわめいた。
玉響媛はうすい笑みを刻んだまま、私に言う。悪びれもせずに。
「というより、体質が変わってしまったのはもう元には戻せないんだ。ただ私の力で戻ったように見せかけているだけで、だから寿命を五十年に区切らせてもらった」
つまり、五十年後に殺すってことだけど。五十年後に死にはぐったらまた元に戻るってことか、死にはぐる可能性は低そうだけど。とにかく最初の質問に戻る。
「ええと、こっちって。子供ができにくいの?」
「確率は低い、長生きする個体はとことん長生きするからな」
「なるほど」
強い個体は繁殖能力が低い。象やライオンがウサギやネズミより繁殖しにくいみたいなもんなんだろう。
「あと、子供ができた場合、その子供に私の力は及ばないから」
その言葉に一気に血の気が引く。
「それってもしかして、夜や空みたいになっちゃうってこと?」
うあ、それは怖い、夜と空がなんとかなっていたのは結局月無が育児参加していたからなんだ。
「そうだね、そう言う事態になるよりは不妊症のほうがまだましだね」
不妊症という仲間がいっぱいいる不幸のほうがまだましだろう。人間じゃない子供を持つ、人間になるよりは。
周囲のざわめきは別の形になったようだ。
玉響媛は両手を私に差し出している。
もう、すべての判断材料は出尽くした。
麻巳子さんと両親を両てんびんにかけるのは両親に悪いだろうか。
右か左かを選べば、どっちかとは確実に縁が切れるけれど。
右を取ったとしても、麻巳子さんともう一度会えるなんて決まってはいないだろうし。
だけど、私は覚えている。命を食らった時のあの愉悦を。
つかんだ首から流れてくる。それがとても心地よかったこと、あれを覚えてしまった私があちらで生きていっていいんだろうか。
ぺろりと私は唇をなめた。
少しずつ少しずつ玉響媛に近づいている。
そして私は手を伸ばす。
青金がどちらを選ぶかはわからないまま終わらせる。この落ちは最初から決めていました。引き延ばしたままこんな落ちと怒られる方がいましたらごめんなさい。




