夜
なんとなく変わった姿になった気がするけれど、確かにそこにママがいる、そのことだけであとは吹っ飛んでしまった。
「ママ」
ママは膝をついて私を抱きとめてくれる。
横にいた空が私の腕をつかんだ。伸びた爪が痛かったけれどそんなことはどうでもいいと思った。
「夜、あんたどうしてたのよ」
なんだか青金も変わり果てているけれどもうそんなことはきにすることではないようやく家族の元に戻れたんだもの。
そして私は最後の家族に向かって笑いかけた。
「ただいま、パパ」
パパはともかくなぜか青金が変な顔をしていた。
「どうしたの、青金」
「ぱ……ぱ……?」
ぎこちない動きで青金はパパを指差した。
「青金、人を指さしちゃいけないんだよ」
私はそうたしなめてあげた。
ぎぎいと音がしそうな感じで青金はママを振り返る。
「なんで月無が夜のパパなんですか」
ママはあえて青金のほうを見ないで呟く。
「だって、まあ、いろいろとあってね」
青金は今度は空に話しかける。
「空、パパはどこにいるの」
当然のように、空はパパを指差す。
よく見れば、まわりのよく知らないお兄さんやお姉さんが目を剥いて硬直している。
「月無、あんた空のパパなの」
パパはつまらなそうに鼻を鳴らす。
基本的に、ママと私達以外のものには興味がないのだ。
「とにかく、私は、夫とこの世界で暮らすわ、だからそっちの保護はいらないの」
唐突にママは話を別方向に持って言った。
椅子に座る知らない女の人。その人に向かって言っている。
「あ、まあ、そう言うことね」
なんだか頭痛をこらえているように見えるのは私の気のせいだろうか。
「どっかで見たような気がしていたんだよね」
「もともと私の家にしばらく住んでいたじゃない」
長い髪を指先でもてあそびながら呟く。
「覚えているわけないでしょ。三歳の時のことなんて」
額に手を当てて深い深いため息をつく。
「私が見たのは、あっちとこっちの境界線でのことだよ」
「境界線?」
「完全にこっちにわたってくる途中の道で私達はすれ違っただろう」




