麻巳子
私は薄目を開けて外の様子をうかがう。
どうやら、なんとか難を逃れた子達が捕まったようだ。
見覚えのある顔が何人も数珠つなぎで連れてこられている。
その中に空もいた。
しかし、あれ、なんだか小さいような?
隣にいる信君と並んでも身長差に違和感を感じる。
あれ、それに夜はどこに行ったのかしら?
難を逃れたと言っても着ているものはぼろぼろになりあちこちに血が飛び散っている。その表情もどこか優れない。
まだ逃げているのか途中で脱落したのか抜けている顔もあるようだ。
状況は全くよくなっていない。
青金ちゃんの姿が見えないのが気にかかる。
あの子はどうしたんだろう。
今、私の意識があるのを気取られてはいけない。
私はこの中で意識を失っていることになっている。
なぜかあの子だけ、別の場所に連れて行かれたのか。それとも力尽きた中にいるのか。もどかしい。今の私にそれを知る機会はない。
将そうに背筋に冷たい汗を感じて。そして、あれ?
私は須藤氏のガラスケースのようなものに入っているはずだ。こちらが見えるようにあちらも見えているはず。
どうして空はなんのリアクションもしないんだろう。この素通しのガラスの中が見えないはずないのに。
見えているのは、こちらだけ? あちらには何も見えていない?
それとも、壁が素通しのガラスに見えているのは私だけなのだろうか。
少しうとうとしたようだ。空が生きているのを見て少し気が抜けた。
これで夜もいてくれれば申し分ないのだが。
そう思いながら、周囲を探る。
青金がいた。
私が閉じ込められているものとは少し違う形のものに閉じ込められている。
意識は失っていないようだ。中でうずくまっているが視線は忙しく動いている。
だけど私に気づいた様子はない。
何が起きているの。私は青金に視線を凝らした。
じっと青金を観察していると、何人かが青金の前を通ったはずなのに、その視線は動かない。何も見えていない。
あれは洋君といったっけ。何やらガラスの筒のようなもののに身体を押しこまれている。そのままつるんと身体が入ってしまった。
まるでシャボン玉に入ったようだ。
空も押し込められようとしたが、その時に空は無理やり振り払いそのまま駈け出した。
空は何をするつもりだろう。
単なる悪あがき? それとも何か考えがあるのか、それとも誰かに入れ知恵されたのか。
とにかくそろそろ寝た振りはお終いにするべきだろう。
ゆっくりと指先を伸ばした。
一滴言って気を垂らすように、その時に備えて指先に力を込める。
しばらくは時間がかかる。だけど確実に力はたまっていく。
そうね、それにはしばらく暴れてもらいましょうか、時間を稼ぐために。
空は一目散にかけていく。その姿に思わず微笑みそうになって慌てて顔を引き締めた。




