青金
久しぶりの青金です。
囲まれている。
これ以上ないくらい囲まれている。
足場のある場所にはぎっしりとなんだか統一ユニフォームを着た感じの人型のがいて、上空には同系色の鳥だか蝙蝠だかが飛びまわっている。
これで足元の地面からモグラよろしく飛び出してきたらほぼ完全な蟻の這い出る隙間もない包囲網って奴だろう。
それにその同系色、センスを疑う、極彩色のネオンカラー。
しいて言えば、幾重にもカットされたスワロフスキーのように動くたびに様々なちりばめられた色彩が揺れる。
その鮮やかな色彩は緯度の高い場所の人なら色覚に異常をきたして倒れること請け合いって代物。
これも攻撃?攻撃の一端なの?
精神攻撃なら合格だ。目が三つになった分ダメージは1.5倍になった。
「ああ、来たな」
気のない声に振り向くと、黒づくめの月無が目を細めて、極彩色の鳥を見ている。
「まさか、あんたが呼んだの?」
それならぶん殴ってやると殺気を込めて、睨む。
「いや、お前達といれば来ると思っていただけだ」
なんとなくしれっとした言いように思えて思わず視線がきつくなる。
「来ると思っていた、ね、じゃああいつらの目的はわかってるんでしょうね」
案外あっさりと教えてくれた。
「お前達を仲間にしたいんだろう」
言われたことにちょっと目が点になったけど。
「ちょっと待て、仲間、それじゃあの悪趣味極まりない格好を私達にしろと?」
そうするくらいなら、なんだか死を選べるような気がした。
「何が目的よ」
背の高い月無の喉笛を占めることは私にはちょっと難しいが、やればできるだろうか。
「おそらく、あれがお前の仲間をさらった奴らだ」
その言葉に思わず目をむく。
あいつらが麻巳子さんを連れて行った?
「麻巳子さんだけじゃなく、夜も」
「いや、それは違う」
あっさりと否定する。
「夜を連れて行ったのは、俺の知り合いだ」
「どこだよ」
空が月無の後頭部に飛びついて耳元で叫んだ。
「そいつどこ、夜どこだよ」
月無の長い髪をつかんでぎゃあぎゃあわめく。非常に痛そうでつらそうな格好であるが私はあまり同情しなかった。
「お前らな」
信の呆れたような声が聞こえた。
「この状況でなに漫才やってんだよお前らは」
そう言って取り囲んでいる兵隊たちを指差す。
「どう見ても絶体絶命だろ、危機一髪だよ」
危機一髪はぎりぎり助かったという意味だよ、相変わらず国語力がないな。
私は小さく息を吐いて、額の目に意識を集中する。
視力でない視力がどれほど役立つか試してみよう。




