表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
挟魔 ≪HAZAMA≫青金  作者: karon
青金
5/73

青金

 麻巳子さんがただぼんやりと立っている夜を慌てて回収する。

 私は真正面から信を睨みつけた。 周囲はきっちり私達に注目しているが、私は容赦する気はなかった。

「うるさいんだよ、あの餓鬼が俺の脚にぶつかって、いらん迷惑かけただけだろう」

「子供に責任を押し付けようっての、どこまで根性腐ってんのよ」

「証拠はあるのか証拠は」

 平行線になるかと思いきや思わぬところから、助け船が、まあ信には破滅の使者だけど。

「あの、すべてビデオに収められていると思われます」

 式次第をデジタルビデオで撮っていたそれを再生すれば、はっきりと脇によけた夜。そしてわざわざそれを蹴とばした信の姿がはっきりと映っていた。

 動かぬ証拠を突きつけられて、信は青ざめる。

 そして、そろそろとやってきた信の両親に、被害にあった女性の旦那さんからクリーニング代を弁償するようにと要請された。

 くすくすと押し殺すような笑い声が聞こえてきた。 

 それはさざ波のように広がり、嘲笑は、さらにあからさまになった。

 再び、信は夜を睨みつけた。

 この場で腹いせの対象が小学生なんて、本気で情けない男だ。

「いい加減にしなよ、だいたい彼女がいるくせにこんなところでナンパして、それで振られて小学生に八つ当たり、どんだけみっともないの」

 信の顔が真っ赤に染まる。

「あんな女どうでもいい」

「もしかして、あの彼女ともう別れた、まあ振られたとか…?」

 どうやら図星をついたようだ。

「そう、あんたの彼女になるなんて、ボランティアの鏡だと思ってたけど、それにも限界があったのね、まあ、仕方ないわよね」

 思ったことをそのまま言うと、今度はやっと私に向き直った。

 来るなら来いという感じでファイテングポーズを決める。

「やめろ」

 声は思わぬところから来た。そう下のほうから。

 振り返れば、そこにいたのは、空だ。

 つかつかと、空は信に近寄っていく。その足取りはよどみない。

「いい加減、飯がまずくなる騒ぎはやめてもらいたいな、せっかくの飯が台無しだ」

 いや、これ結婚式だから、食事会じゃないから。

 思わずそう突っ込んだが、空は全く気にした様子もなく。信を睨みつけたままだ。

 そして、プライドのかけらも持ち合わせていない信は、再び小学生相手の喧嘩を買ってしまった。

 空の襟首を掴んで、持ち上げようとしたのだろうか。

 しかし、空が、その手首をつかんだ瞬間信の情けない悲鳴が上がった。

 空は軽くつかんでいるようにしか見えない。にもかかわらず、信はつかまれた手首を放すことができないでいた。

 軽く力が入った、と思った時には、信の情けない悲鳴が聞こえてきた。

 空が腕を軽く動かすとさらに悲鳴が大きくなる。

「これだけ騒げばもう気が済んだだろう。なら隅っこでおとなしくしてな」

 空はそのまま腕を放り出すと信はそのまましりもちをついた。

「空?」

 恐る恐る私は空に話しかける。

「コツがあるの、合気道のとこに通ってるんだけど、すごく痛いつかみ方とかあるんだ」

 空はいたずらっぽく笑う。

 日本古来の武術って侮れないなと私は感心した。


次から怪奇現象が始まります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ