玉響媛
ふうん。
水鏡の向こうを覗いて私は吐息をもらした。
ふんっふふふううん~♪と鼻歌など歌ってみる。
私は、手の中に落ちてきたそれを見詰めた。
長い髪と襦袢姿。成人したての女。それは、あの中にいた一人だ。
まとまって行動していたはずなのに、どうして一人で行動しているのかわからないけれど、まあ、回収はしやすいな。
私は、水鏡に映るそれを見ていた。
確か、まどかと呼ばれていたか。どうやら迷子になっているようだ。
髪にまとわりつかせていた玉を数個むしり取る。
半透明なそれを掌でしばらく弄んでいたが、のぞいていた水鏡にぽとぽとと落とす。
水鏡に波紋がいくつも浮かび上がり、小さなさざ波を立てる。
それは、いつしか現実に、まどかを取り囲む環になる。
「まあ、手っ取り早く保護させてもらうね」
環は360度まどかの周りを取り囲み、環で作られた毬のような球体の鳥籠のような形を取った。
まるい鳥籠にとらわれたまどかはそのまま釣りあげられる。
私の水鏡の中から。
水鏡の真上に浮かんだまるい鳥籠を私はつかんだ。
小さな人形のような円の顔を私は覗き込む。
掌の上で、私を見上げるそれを一瞥すると、水晶細工の箱に収めた。
玉が、再び手の中に戻る。
球形の鳥籠はそのまま滴に戻りまどかの周りに滴った。
それを再び髪ふりまいて、水晶の箱に納められたまどかに視線を戻した。
どうやら私は睨まれているようだ。
「どうして一人でいたんだ」
そう尋ねてみた。
そして水晶の箱を掴んで軽く揺らした。
箱の中でよろけている。何やら悪意を持たれているようだ。その分も聞いておかねばなるまい。
「答えなさい」
私が毅然とした声でそう言えば、切れ切れの声小さく答えた。
「一人のほうが、身軽だと思って」
まあ、それも理由の一つだろう。しかし、それだけではあるまい、でなければ私に向ける敵意の理由がわからない。
「月無が、言った」
月無、知らない名だ。まあ、私が知らずとも、私のことを一方的に知っている者がいることは珍しくもないが。
「月無は、お前がもともと私の先祖だと言った。そして子孫の血脈に取りついて、生き返ったと」
実感のない話ではあるが、そうであるらしい。
自分自身の先祖は私。
頭がこんがらがりそうな話だ。それに実感がないのは、私自身の記憶がないせいだ。
同一人物だという先祖の記憶はほとんどない。どういういきさつで、子孫の血脈に取りついたのか、その辺の記憶は全くない。
ただ、それでも自分の実の両親に対する愛着というものが全くないのはそのせいかなとも思う。
「それで、月無というのは何」
「知らない、魔物だと自分で言った。黒づくめの男」
それは特徴でも何でもない。しかし言っても無駄だろう。
「なんとなく胡散臭くて離れたかった」
なるほど。




