青金
頬に飛んだ血を舌でなめとる。
生臭い。
ペッと吐きだした。
めり込んだ拳をそのまま突き進め、内臓を引きずり出す。
鯖の味噌煮を作った時に見たベージュがかかったピンクの内臓がずるずると抜け出した。
そのまま魚はどこかへと飛んでいく。
さすがに内臓を抜かれたら生きてはいられないだろう。
洋君と信は何とか食べられるのを避けるのが精いっぱいのようだ。
意外に円さんが善戦している。
長く延びた刃状の爪。それを使って相手を切り裂いている。
ほっそりとした指先の針のように細い爪なのだけど、それは簡単に相手を切り裂いていく。
顔がひきつっている。
むしろ私のほうが余裕がある、さっきのサンショウウオで要領をつかんだ気がした。
空は、ものすごく楽しそうに、かぎづめで相手をえぐっている。あんな小さな手で、どうしてあんなに大きな傷を与えることができるのだろう。
「きゃあああ」
背後で甲高い悲鳴が聞こえた。
「茉莉花ちゃん…」
私は息をのんだ。
茉莉花ちゃんの右腕が方の付け根から食いちぎられている。
ぼたぼたと、血が塊になって流れた。
ああ、このまま茉莉花ちゃんが食われる。
今度こそ、本当に。
茉莉花ちゃんのほうに向かおうとした私に、三体の魚が、前方をふさぐ。
じりじりと対峙しながら周囲をうかがう。
洋君は、様子に気づいたのだろうけれど、私と同じく魚に阻まれた。
信は必死に目をそむけている。
「茉莉花ちゃん」
喉の奥に声が張り付いた。
一度血を流せば、どんどん魚が寄っていく。
悲鳴は聞こえなかった。
あとに残るのは、血で染まった襦袢の残骸。
月無に、魚が向かう。
しかし手をかざすだけで、魚はみじんに刻まれた。
ギリと唇をかみしめる。
「なんで、茉莉花ちゃん、助けてくれなかったの」
月無は不思議そうな顔をした。
「自力でやれといっただろう?」
私は、前に来た魚の目玉をえぐった。
「助ける力があったのに」
「その気がなかったから」
あっさりと月無は答えた。この男はなんで私達と行動を共にしているのか。改めて不気味に思った。
すべての魚を始末した後、円さんが血まみれの袂を拾った。




