青金
洋君が開いた口の片方をつかむ。
「青金さんもう片方を掴んでくれ」
言われて私もつかんだ。もともと私が始めたことだ。
二人で反対方向に渾身の力を込める。
上あごと下あごで真っ二つになった。
その残骸から全体図を想像してみるとトカゲよりもオオサンショウウオに近かったかもしれない。
真っ二つになっても尻尾がバタバタ跳ね回っているのもサンショウウオっぽい。
私の靴についているのも、バラけた内臓に付着しているのも、緑色の血だ。
サンショウウオの血は確か青いんだったか、それとも青い血はトカゲ?確か蛇の血は赤いはず。
そんなことを考えながら、今自分達がやった殺戮を見下ろす。
鼻がばかになったかと思ったけれどそんなこともなく、新たな臭気が漂い始める。
円さんが袂で顔の下半分を覆いながら、その残骸を恐る恐る覗き込む。
「ここを離れよう、また何があるかわからない」
そう提案して、信と茉莉花ちゃんが言った方向に顔を向ける。
「やっぱりバラバラになるのはまずいと思う」
そう言って洋の後を追いかけた。
洋はまだ茉莉花ちゃんに追い付いていない。
進んでいるうちに内装が変わったことに気がついた。
たぶん従業員用の場所なのだろう。壁紙や床が妙に飾り気のないものに変わっている。
いつの間にそんな扉を開けただろうか。確かにあちらこちら、壊された痕跡はあるけれど。
そしてそれ以外の変化も現れ始めた。
死体が転がっているのは相変わらずだけれど、そのうちなんだか違和感のある死体が転がっているのに気がついた。
明らかに人間のものではない死体だ。
剛毛に覆われていたり、鱗みたいなのが生えていたり果ては全身緑色で、つる草のようなものが生えていて、それに人間の顔がついている。
その顔は苦悶の表情を浮かべて悶絶していたが。
そんなものが点々と落ちていた。
「これ、なんだと思う」
そう問いただす円さんの顔はひきつっていた。その円さんをどうこう言えるほど私が冷静沈着であったとも思えないが。
「何があったんでしょうねえ」
私に言えるのはこれだけだった。
そして隆俊君に至ってはただ無言を貫いていた。
信がなんだかグローブほどの手をした生き物の前で足を止めている。
それは見るからに凶悪なご面相で、ナマコ大の唇から下をはみ出させて、事切れているようだった。
その下半身が丸ごとない。
「信、茉莉花ちゃんは」
そう問いかけても信は動こうとしない。
たぶんこの殺戮を行った生き物に会うのが恐ろしいのだ。
「どけ」
信を突き飛ばして私は先に向かう。
「青金ちゃん、危ないわ」
そう背後で、囁くような声で円さんが呼びとめた。
かろうじてついていた明かりが消える。
真っ暗な中、なんだか視界の位置がずれた場所で、うずくまる影が見えた。
私はふだん使い慣れた両目ではなく、額にあいた新しい目で見ているらしい。
うずくまる影が顔を上げた。
金色の丸い目が、際立って見える。
その金色の目の中に、縦にさけた光彩まで。
それは小さな子供の姿をしていた。




