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挟魔 ≪HAZAMA≫青金  作者: karon
青金
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青金

サブタイトルは、一人称の名称になります。

 麻巳子さんが子供の頃、と言えば私など影も形もないころだ。

 麻巳子さんの母方の叔父に当る人。当時は高校生だったらしい。その人がある女性を妊娠させた。その女性も遠縁にあたる人で、わずかながらの親戚づきあいがあったらしい。

 両方とも十八歳になっていなかった。

 無論両家大騒ぎになった。無知ゆえか、それとも確信犯か、子供を堕胎するには時間がたちすぎていた。

 結局のところ、両家は二人を十八歳になったところで、籍を入れさせ、環境を整えるということで同意した。

 そして子供が二歳の誕生日を迎え、いよいよ入籍となった時、その麻巳子さんの叔父さんは、ほかの女性と逃げてしまったのだそうだ。

 それから三十年近く音信不通だった。

 そして当然のことながら、親戚は先ほどとは比べ物にならないくらい大騒ぎになった。

 麻巳子さんは述懐する。

 あのとき、麻巳子さんの、母はあんな馬鹿だとは思わなかったと、髪を逆立てて怒り狂っていたそうだ。

 まあ、それはそうだろう。

 そしてその騒ぎを、幼い麻巳子さんは問題の子供と手をつないだまま。呆然と見ていたそうだ。

 最初は麻巳子さんの祖父母も、お母さんも、ほかの叔父叔母たちも平身低頭で誤っていたのだそうだ。

 しかし、相手のあまりの言いように、遂にたまりかねた。叔父、問題の叔父のすぐ上の兄だったらしいが。手を出してしまった。

 それを皮切りにもともと気が立っていた全員が乱闘に参加してしまったらしい。

 茫然と見ているしかできない麻巳子さんと問題の子供をを除いて。

 麻巳子さんのお父さんのブレーンバスターだの、相手の女性の父親が、最初に手を挙げた叔父にウエスタンラリアットを決めた瞬間だの。果てはバックブリーカーや究極の大技ジャーマンスープレックスまで炸裂したらしい。

 そして、すべては警察の介入によっておさめられた。

 あまりの騒音に隣家が通報したのだ。

 ドロップキックで弾き飛ばされた人間がガラスを突き破って飛び出してきたところで110番したそうだ。

 当然と言えば当然だ。通常の防音のレベルを超えた騒動だったろう。

 なんでもその時、無事な家具は何一つなかったという。

 問題の家とは、それで絶縁したのだとか。


 語り終えて、麻巳子さんはくすくすと笑う。

「まさか、父方の親戚とあの家に縁組が起きるとは思わなかった。腐れ縁ってあるのねえ」

 麻巳子さんの言葉に、私はなんて言っていいのかさっぱり分からなかった。

 というか、親族席の様子を平静に見ている自信がない。

 おそらく麻巳子さんは私に、あのおじさんがラリアットの叔父さんだとか、

 ジャーマンスープレックスの叔父さんはあちらだとか、事細かにこっそり耳打ちしてくるのではないだろうか。

 私達は親族席でも割と奥まった場所に座った。

 なんだか派手な傷跡のあるおじさんが視線に入った。まさかあの人が例のドロップキックでガラス窓を突き破った人だろうか。


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