青金
コンクリートにあいた大穴の前で、私は瓦礫を掘って生存者を捜していた。
コンクリートの塊ならだいたい大きさで重さの判別がつく。
今の私の腕力なら、人の頭ほどの塊でもまるで軽石だ。
ひょいと放って振動でずいぶん重かったのだと気づく
指先が動いたのでそれを引きずり出す。
麻巳子さんが、穴のあいた壁の向こうをのぞき見る。
「何もいなくなったのかしら
「待って、まだいるかもしれない」
「いえ、気配は感じません」
理津子さんがそう言って、入口のほうを警戒するように見つめていた。
「あの、まださっきのがいるの?」
開いた扉いっぱいの巨大な顔、あれがどういう形で除いていたのかそれは謎だが。
あの位置に顔があるとしたら胴体はどうなっているんだろう。床の下ならとっくに抜けているはずだけど。
異常なこと続きでそのことを忘れていられた自分に驚く。
というかどうしてあれは行動を起こさないのだろう。たぶん扉くらい簡単に壊せる。
来てほしいわけではないが、気にはなる。
まるで何かを計っているようで。
「ちょっと、誰か手伝う気ないの」
洋君が、おずおずと手を挙げた。
変化した人もしていない人も、怖々とこちらを見ているだけ。
おそらくこの壁を砕いた力の源があるのが怖いのだろう。実際私も怖かった。
あの渦のような漆黒の者に見えない目で睨まれた時、心臓が止まるかと思った。
だけど今は何もいない。それはわかる。
あの透明な掌が持ち去ってしまった。
あの掌の主、優花が。
よくよく思い出せば、あの顔は、麻巳子さんに似ているのだ。きれいというより可愛い系の顔立ち。
さっき見た時は天井いっぱいに広がっていたインパクトで気がつかなかったけど。
麻巳子さんは壁の向こうを覗き込んだ。
「あっちにも扉があるわね、それにこの部屋に窓がある」
麻巳子さんはそのまま壁をくぐりぬけて、隣の部屋に入った。
麻巳子さんは何とかこの部屋を抜けて空と夜を探しに出たいんだ。
さっきから起こり続ける異常な事態。
あれがこの部屋の外でも起こっているのならあの子達が無事でいる可能性は低い。
たった二人で、どうしているんだろう。
どうしてあの二人が駆けだしたときに止められなかったのか。
だけど、もう一つの可能性。あの二人は何とか脱出できている?
子供の、野生の本能で、異常を察知して逃げ延びられた?
ただの希望的観測だと思ってもその可能性であってほしかった。
風が吹いてくる。
閉ざされた場所に。
「また来るの」
恐怖に唇が震える。麻巳子さんは怪訝そうにこちらを見ている。
あちら側には風が吹いていない。風が吹いているのはこの場所だけ。
暴風が私達を吹き飛ばす。




