表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
挟魔 ≪HAZAMA≫青金  作者: karon
青金
15/73

 私は、空といくら走っても同じように見える景色の中を進んでいた。

 白かった壁は血で彩られ、死体が散乱している。

 かろうじて生き延びた人間はただ怯えるばかり、壁の隅に潜り込んで泣きじゃくっているのは、学校の担任ぐらいのおばさんだ。

 職員だけじゃなくて、たぶん、帰り損ねた客らしい人も死んでいたりおびえていたりした。

「ねえ、空、どうしてあの光景が見えないんだろうね」

 ひゅるひゅると伸びてきた。長い長い腕、それをとっさにかわす。

 まるで骨がないかのように身体にからみつこうとする。その腕を掴んで握りつぶした。

 手の中にある骨の感触は、丸で魚の骨のようにしなやかだ。いっそ固いほうが壊しやすいのに。

 変わってしまった身体にもだいぶ慣れてきた。

 走るのに、足がもつれることもない。

 急速に育ったのじゃなくて本当に良かった。そのほうが、身体の扱いに慣れるのに時間がかかったかもしれない。

 走っているうちに、正面玄関口に出た。

「空、たぶん、私達がいたのは二階じゃなかった?」

「さっき階段を上ったから、二階じゃないにしろ絶対に一階じゃない」

 めくらめっぽう逃げているうち、階段を何度か上り下りした記憶がある。しかし、さっき、階段の入り口にある、階数を確認したはずだ。

「正面玄関か、出てみるか?」

「さっきみたいに、窓が壊れたのに出られないってことないよね」

 まるで、誘うように目の前にある正面玄関、しかし、ここから出られる保証はない。それにママの無事も確認していない。 それに、玄関の外に出られたとしてもそこが元の街とも限らない。

 恐る恐る、玄関に近づいてみる。

 いやな気配を感じた。

「空」

 小さく呟くと空が身構える気配がした。

 ずっと前方に注意を向けていたので、うっかり後ろがお留守になっていたのに気がついたのは、何か布のようなものでからめとられた後だった。

「夜」

 空がとっさに飛びのいて、同じようにからめとられるのを避けるのが見えた。

 何とか払いのけようとじたばたもがいているうちに、布は顔まで覆ってきた。

 視界をふさがれる。

 布にかみついてみた。

 きめの細かい布地は、ずいぶんと薄いのに全く噛み裂けない。

 布は私の腕を後方に拘束する。

 足もきつく巻かれて、もがくこともできなくなった。

 とっさに焼くことも考えたが、こんな風にがんじがらめの状態で焼けば、私もろとも火だるまだ。

「夜」

 そう叫ぶ空の声がまだ聞こえていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ