青金 あおか
自分の作風に悩む今日この頃、今度はホラーアクションです。
今まで読んでくださっている方、呆れないでください。
親類の結婚式に出席するため日も暮れかけた式場に私はいた。
本日の夜の部の式はうちだけだ。そろそろ暮れかけた日が辺りをオレンジに染めている。
時間までまだ少しある。そう思った私はロビーの自動販売機に向かった。
そこにはすでに先客がいた。
「この子たちがぐずって」
そう言って十歳の子供を二人引き連れた美しきシングルマザー麻巳子さんが佇んでいた。
そっくりな双子はそれぞれ小学校の制服姿だ。名前はおかっぱの女の子が夜、丸坊主が無精で伸びたような頭をした男の子が空。
二人とも、見た目は整っているがあまり麻巳子さんに似ていない。
麻巳子さんは可愛い感じの顔立ちだが、二人はどちらかというと奇麗系だ。
「結婚式の前に甘いものはだめよ」
親戚の結婚式、私はそう言って、双子を睨んだ。
「この子たち、こらえ性がないから」
麻巳子さんはため息交じりに呟く。
「うっかり、ご挨拶が始まる前に食事に手をつけたりしないかしら」
双子は男女の別こそあれ、そっくりな顔で、私を見上げている。
麻巳子さんは私の従姉に当たる。
麻巳子さんの父親が、私の母の年の離れた兄だった。
麻巳子さんがシングルマザーになると宣言した時、親戚一同大騒ぎになった。
誰もが反対したが、麻巳子さんの意志は固く、結局双子は生まれてきた。
今は在宅でインテリアデザイナーと様々なバイトを掛け持ちして、麻巳子さんは子供たちを少々辺鄙な土地で、古い一軒家を借りて育てている。
なんでそんな辺鄙な土地で、暮らしていると聞いても、麻巳子さんは物価と家賃が安いからとしか答えない。
私はまだ高校生だ。だからなぜ麻巳子さんがそんな選択をしたのかいまだ理解できないでいる。
だからと言って双子にいなくなれとは思わないが。麻巳子さんは誰かいないのだろうか。奇麗な人だから、シングルマザーで四十ちかくっても結婚は不可能ではないと思うのだが。
麻巳子さんの双子、夜と空は結局オレンジジュースで妥協した。
「まあ、学生は制服でいいわよね」
かわいらしいブルーのブレザー。臙脂のリボン。結婚式にはいいが、葬式にはちょっと微妙だ。
「結婚式ですね」
「そうね」
「麻巳子さんは、したくなかったですか?」
「内緒」
麻巳子さんは鮮やかに笑う。
ダークパープルのスーツに、白いコサージュ。シャギーに切ったショートカット。どこかマニッシュな雰囲気の麻巳子さんが母親だというのには違和感を感じる。
双子はもくもくとオレンジジュースを飲んでいる。
「この親戚一同が集まるのは、三十年近くぶりなのよ」
そう言って麻巳子さんは笑う。
「あれはあたしがまだ子供のころだったわ」
そう言って麻巳子さんは語り始めた。