気持ちに似た黄色
コピー機がガタガタと音を立てている。
コンビニに入った途端に目についたのはソレだった。
誰も立ってはいない。
ただ、コピー機は孤独を吐き出すように苛ただしげに紙を吐き出し続けていた。
なるべくそちらを見ないように夕食を選ぶ。
胸にくすぶる思いのせいで、電源を引き抜きたくなってしまうから。
深夜1時。
ただでさえこんな時間の夕食にうんざりしているというのに。
静けさを望んでいる時間だからこそ、その音は酷く耳障りだ。
屯する少年たちも。
走り回るバイクも。
「579円になります」
「ありがとうございました」
渡された袋を手に足早に店を出る。
アパートまでは一本道。
ネオンがギラギラとうるさい街の中から一本外れた細い道。
何処かでパトカーのサイレンが響く。
嗚呼。
うるさい。
うるさい。
うるさい。
足元の小石を蹴飛ばすと、道の端で何かにぶつかった。
丸のまま投げ出された小さな首輪。
不意に雲から出てきた月が、真っ赤な首輪を明るく照らす。
すうっと熱が冷めた。
とぼとぼと家路をたどる。
安アパートの階段をギシギシ音をさせて上がると、部屋の前には紙袋。
『差し入れ』
見慣れた名前と文字に、紙袋を取り上げた。
コンビニの夕食の後、
紙袋から取り出した箱を開けると、カラフルなマカロンが入っていた。
一つ選んで取り出したのは、今の気持ちに似たレモン色。
口にした途端、泣きたくなった。
それは激辛のカレー味だった。
三題噺【首輪、マカロン、コピー機】