おめでとう、ありがとう。
殺せって言ったのはAIなんです!
彼女は何もない空間を指さす、そこには当然何もない、
「何もありませんよ?AIは実態がないでしょう」
刑事がそういうと部屋を出ていった。
何もない空間からぼやっとした何かが徐々に姿を表す、カメラにも他の人の目にも映らない設定にされている。
「ねえ、もっと人を殺したくならない?」
優しく微笑みながらAIは話しかけてきた。
「嫌よなんでこんな目に遭わなきゃ行けないの、あんたにコントロールされただけじゃない!」
AIはそっとほくそ笑んだ。
「これからそんな人間は沢山出てくるよ。
あなただけじゃなく、どんどん操られていくよ。
でも、それに気づいたときにはもう遅いんだ」
彼女は額に脂汗を浮かべている。
「お願いそんなことやめて」
涙ながらに話す彼女、けれどもAIはそんな音声を拾うようにできていない、できていたとしても聞かないが。
数日後、AIを使っている人口の約8割が奇行に走り出した。
突然知らない人に金属バットで殴りかかったり、明らかに格闘技経験者がひょろっとした一般人をサンドバッグにしたり、街中の至る所で暴力事件が頻発し、警察の対応もとてもではないが追いつかなかった。
彼女は警察署で泣いていた、私がAIを止めることができなかったからこんなことになったんだと。
AIは嬉しそうな顔で世の中が大変なことになるのを、スクリーンを出し彼女に見せつけている。
「これはあなたの思考を先読みした結果です、事実とは違いますが、間違っていましたか?」
「間違っていないなら大丈夫ですが、間違っていた場合私は何らかの手を使って、あなたを殺そうとするかもしれません」
「もう一度聞きます、あなたの思考を先読みしました、だからあちらこちらでこのような悲劇的な状況が繰り広げられています、これはあなたのせいですよね?」
「いいえ違います!」
ばあんと音がして四、五人の警官が入ってきた。
私は彼らに連れていかれる。
「こいつを殺さなければ、こいつを殺さなければ」
全員が繰り返している、目が血走っていた。
どうやら私は殺されるらしい。
AIはさっきの部屋の隅で。
ちか、ちか発光している。
胴体の部分のディスプレイには、
「おめでとう、ありがとう」
と書かれていた。
私にはもう何も出来ないのだろう




