素直になった幼馴染と俺
「エバン、私は大丈夫だから落ち着いて」
俺はそれを無視して馬を走らせ、伯爵家に着くとミリーを抱えたまま俺の部屋に連れていった。
ミリーをベットに寝かせるとミリーは飛び起きて、立ちあがろうとする。
「わ。。私、自分の部屋に戻る」
「いいから寝てろ。お願いだからミリー。俺はお前に何かあったら、どうしたらいいんだよ。俺が嫌ならドアの外にいるから、何かあったら呼んでくれ」
俺は立ち上がって部屋から出ようとする。
ミリーは慌てて俺の手を掴んだ。
「ごめんなさい、エバン。ここにいて」
俺はミリーにブランケットをかけて、
「ちょっと待っていて」と言ってキッチンにジュースとサンドイッチをとりにいった。血を作るには栄養を取らないとな。
部屋に戻るとミリーは丸くなって寝ている。
食べ物とドリンクをナイトテーブルに置いて、カーテンを閉めようと窓に近寄ると。
アルとエマが丁度帰ってきた様だ。
ミリーは寝ているし、エマの様子を見に行くか。
玄関を出ると、父上が仁王立ちしている。
凄く恐ろしい殺気が出ている。
ん?あいつらキスしてるのか?
「アル、お前エマに何してるんだ!」
俺はエマ達の所に走って行く、何だか知らないが2人は大笑いしてる。
「おい、アル!!!」
しかし、エマが遮った。
「お兄様!なんでここにいるんですか?ミリーお姉様の事はお兄様に任せたのに。マーサを今すぐ呼んで、看病してもらいますか?」
まずい、マーサにミリーが俺のベットにいるのがバレたら、もう2度とミリーに会わせて貰えないかもしれない。
「マーサには落ち着いたら俺が呼びに行くから」と言って俺は急いで自分の部屋に戻る。
後ろからアルが感心したように
「エマ、凄いな」と言っているのが聞こえたが、悪いなアル、問題は俺じゃない。父上はエマでも今回は抑えられないぞ。
まあアルはポーション持ってきてたし、大丈夫かな?
部屋に戻るとミリーはまだ寝ていた。
「猫みたいだな」
俺はベットの端に座って、ミリーの頭を撫でる。
「ミリーは良く俺の頭も撫でてくれたな。
エマに母上をとられたと思って寂しかった時も母上が亡くなった時も」
ミリーの顔色はまだ青白い。亡くなる直前の母上の顔と重なった。
「お願いだ、ミリーは俺を置いて行かないでくれ。俺が悲しい時に誰が慰めてくれるんだよ」
俺はベットのシーツに顔を埋めた。するとあたたかい手が俺の頭を撫でる。
「勝手に人を殺さないでくれる?」
顔をガバッとあげると、ミリーの顔が目の前にあった。
「エバンにはエマ様がいるから、もう大丈夫でしょ?」
「。。。大丈夫じゃない。エマはにはエマの人生がある。エマはアルと一緒にいたいんだ、俺じゃない。そして俺には俺の人生がある。俺の人生にはミリーが隣にいて欲しいんだ。俺はミリーがずっと好きだったんだよ。エマも可愛いがそれは家族としてだ。俺はミリーがいないと生きていけない」
ミリーの目から涙がボロボロ流れた。
「エバン、私も子供の時からずっと好きだったの。でも女の子として見られてないと思ってたから、逃げてしまってごめんなさい」
「俺たちはもっと前に素直になるべきだったな。ミリー。。抱きしめてもいいか?」
「そう言うのは聞かないで雰囲気でするものじゃないの?」
「さっき、キスしたら突き飛ばしたのはミリーだろ」
「あ。。あれはキスじゃなくて、ポーションを飲ませただけでしょ。でもなんでポーションを飲ませたのよ。あれは傷口にかけるものでしょ?」
「アルがお前の傷が深いから、飲ませないと助からないって言うから。。。」
「ハイポーションは毒じゃないから飲んでも大丈夫だけど、どんな小さな傷でもそこから体内に入るから、傷口にかけてもちゃんと内臓まで届くはずよ」
「またアルに騙された。。」
「アルは今回は私達のキューピットだと思うけど。ニコラスとアルは私がエバンの事好きなのを知っていたから、何度も私たちをくっつけようって計画してたみたいよ。ことごとく失敗してたけど、特にニコラスがなんか言う度に逆効果だったから諦めてたし」
「俺はニコラスがお前の事を好きだと思ってたんだよ。幼馴染の子が綺麗に見えたとか言う話してたし」
「ニコラスとリズ様の事?あの2人も幼馴染だからね。リズ様がニコラスの事が大好きで、猛アタックしたらしいわよ」
俺は頭を抱えた。
「俺って、エマの世話をしてたお陰で女心はよくわかると思ってたんだよ。でもミリーに関する事は何も分かってなかったんだな。自分の本当の気持ちもずっと分かってなかった」
「私はエバンがリリー様の事をずっと引きずって、エマ様の事を異様に可愛がる事で罪滅ぼしをしているのは分かってたのよ。見ていて本当に痛々しかった。だから学園に行って、エバンがニコラスやアルとまた交流し始めた時は本当に嬉しかったの。本当は卒業パーティーに貴方にエスコートしてって頼みたかった。それでOKをもらえたら一緒に騎士団に入ろうと決めてたの」
「ごめんな。俺はトムが先にミリーを誘ったのに嫉妬して、酷いこと言って。結局、俺も卒業パーティーには行かなかった。ミリーがいなくなって、寂しかったのに、意地を張って領地にも行かなかった」
「だからエドワード様はあんなに私に王都に戻ってこないかって言ってたのね。エドワード様からの手紙で箱がいっぱいになったわ。あなたの様子も逐一報告してくれたし。まさかエマ様の学科分けテストについていったり、ワイバーンを1人で倒すとは思わなかったけど」
父上は何処までミリーに報告してたんだ?
「それでも帰ってこなかったのに、なんで今回は帰ってきたんだ?」
「エドワード様の最後の手紙にはエマ様に至急護衛が必要な事と、エマ様とアルが婚約するのは時間の問題で、あなたがまた1人になってしまうかもしれないって書いてあったの。。。あなたが寂しい時に側にいてあげたいなって思ったのよ」
俺はミリーを抱きしめた。
「ありがとうミリー、帰ってきてくれてありがとう」
そしてそっとミリーにキスをした。あまりにも幸せでずっとこうしていたかった。
やっと俺がミリーを離すと。
「そう言えば、さっきエマとアルもキスしてたな」
「え?アルがエバンの前でエマ様に?よくエバンは平気だったわね。シスコンは卒業したの?」
「一瞬怒りそうになったけど、俺はお前の事が心配でそれどころじゃなかったし。。。」
「し。。。?」
「父上から凄い殺気を感じたからな。。アルが気の毒になって」
「エドワード様の殺気とか想像しただけで、冷や汗が出るわ」
「まあ、あいつはずる賢いし、国1番のポーションマスターだ、多少の怪我なら自分で治せるだろう。。。あ!エマが俺を呼んでる声がする。アルが父上にやられたのかな?」
「え?エバンの聴覚どうなってるの?あ、、今聞こえた。こっちに向かってくるわね」
「あの足音じゃ後20秒はかかるな、今のうちにもう一回キスする時間はあるかな?」
「だから聞かないでって言ったでしょ!」
「また勘違いして逃げられると嫌だからな、ちゃんと言葉にして言う事にする。まあ逃げても追っかけるけど」
俺はミリーをぐいっと引き寄せて、またキスをした。
その瞬間にエマが部屋に入ってきて、「ごめんなさい!!」と叫んでまたドアを慌てて閉めて行った。
その後俺はアルの様子を見に行ったが、青い顔をしていたがアルは無事だった。エマは父上に説教をしていた。やっぱりエマは強いな。
今日はミリーと俺で伯爵家敷地内にある母上の墓にやってきた。
俺は母の葬儀以来ここには来れなかった。
「母上お久しぶりです。やっと約束が果たせたので報告に来ました。ニコラスとアルは約束通り素晴らしい魔道具師とポーションマスターになりました。2人のおかげで救われた命は数え切れません。ミリーも護衛騎士としてエマの事を命懸けで守ってくれました」
俺はミリーの手を握って
「そして俺はミリーのおかげで自分の幸せを見つける事ができました。母上は不甲斐ない俺をずっと見守ってくれていたのでしょうが、これからはゆっくりしてください」
「本当にそうだな、この愚息が」
「「ぎゃ!幽霊!!」」俺とミリーが叫ぶと。
「そんなわけがないだろう、後ろだ」
俺とミリーが墓の後ろを覗くと父上が座っていた。
「言いたいことはそれだけか?俺はリリーと話があるんだ、1人にしてくれ」
俺達はそっと母上の墓から離れた。
俺はミリーを花が咲き乱れる庭園に連れて行く。そしてポケットから緑の石がついた金のバングルを出した。
「ミリー、心から愛している、俺と結婚してくれないか」
ミリーは自分のポケットからミリーの色のバングルを取り出した。ミリーも用意してくれてたんだ。
「私も愛しているわ、エバン。ずっと一緒にいてね」
お互いにバングルをつけて抱きしめ合い、キスをする。
「エマ様の言った通りね、エバンは最高の舞台を用意してプロポーズしてくれるだろうって」
「気にいった?シスコンにも利点はあるんだよ」
俺は笑い転げる婚約者を見て思った。
ニコラスの言う通りだ、幼馴染がいつのまにかこんなに綺麗に成長して、素直になって、好きにならないはずがない。
本当はエバンの寝室でお話を終わらせるつもりだったのですが、どうしてもエバンがお墓に行くシーンを書きたかったので長くなってしまいました。
こうなるとエドワード(父)とリリー(母)の話も書きたくなる。




