エマの護衛騎士
あれから何年経ったんだろう。
エマが18歳だから6年か?ミリーが領地からエマの護衛騎士として帰ってきた。
長い髪を一本にまとめて、美しい騎士の礼をするミリーから目が離せない。
でもミリーは俺を無視してエマに話しかけている、それでつい。
「げ、暴力女かよ」と言ってしまった。
「エバン様も相変わらずですね」と笑顔で言うミリーの目は笑ってない。
ミリーが父上に向かって
「ラフィーノ伯爵様、おまかせください。命に変えてもエマ様をお守りします」と言った時に、俺の心臓が嫌な音を立てた。
母上が俺を守ってくれたあの時の事を思い出した。
エマは大切な妹だ、でもミリーが傷つくのも嫌だ。
だが父上と俺は明日から討伐遠征に行かなくてはならない。だからこそエマを守るためにミリーが来てくれたんだが。なんか嫌な予感がする。
出発前もその嫌な予感は消えず。行きたくないとエマにしがみついたが、ミリーにあっさり引き剥がされ、俺は他の団員に連行される。
「エバン様、エマ様の事は私に安心してお任せください。討伐の成功をお祈りしています」と手を振られる。
馬に乗せられた俺は同僚のジムと並んで馬を進める。
「ミリーさんかっこいいな、エバン。すごく美人だし。誰か相手がいるのか?」
「あんな暴力女に相手がいるわけないだろう」
「そうか?じゃあ俺、討伐から帰ってきたらデートに誘おうかな」とジムが嬉しそうな顔をする。
それを聞いて瞬間、またイラッとした。お前がミリーの何がわかってるんだ。お前にはミリーは勿体無い。
と言おうとしたが。。
「ミリーに相応しくないのは俺だな」
「なんか言ったか?エバン?」とジムが不思議そうな顔している。
「何でもない。とっとと討伐終わらせるぞ」
今回の討伐もすぐに終わった。エマに手紙を書いて、撤収準備をする。ただここは王都からかなり離れている。急いで帰っても週明けにならないと王都にはつかないだろうな。帰りにあのカフェでケーキをエマとミリーに買って行くか。
「エバンは何処だ!」父上が早足でこちらへ来る。
「団長!何かありましたか?」
「撤収作業の傍らにこの町の住民と話をしていたが、討伐中は一時的に国境を閉じているはずだが、町外れで見慣れない外国人数名を見かけたそうだ。おそらく不法入国者だ。彼らは王都に向かって昨日出発したそうだ。隠れて話を聞いていた住民は外国語の為、話は理解できなかったが、ポーションとエマ・ラフィーノという言葉だけわかったと証言している。
「父上!それは!」
「お前は先に王都に帰って、エマを保護しろ、お前なら追いつける」
俺はすぐ様行こうとするが、父上に止められた。
「待て、もし間に合わない場合は。。あのポーション馬鹿男に会いに行け、あいつはエマにエマの場所を探知できる魔道具を付けさせている」
「え?アル!!何やってんだよアイツ」
「その事は後で俺がキッチリ話をつける。とにかく行け」
うわーーアル、やばいな。父上はかなり怒っている。だから舞踏会の時にアルが手が痛いって言ってたのか?
俺は通常2-3日間かかる道程を1日半で走りきった。王都につき、いつものカフェに前を通ると馴染みの店員が俺の名前を呼ぶ声がする。
「悪いな、今日は急いで家に帰るんだ、後で行くから」
「エバン様!!エマ様が!」
今なんて言った?
「先ほどエマ様と護衛の方がいらしてて、お帰りの際、護衛の方が馬車を用意する間、エマ様は店内で待たれていたのですが、いつのまにか姿が見えなくなっていまして。ケーキの箱をお忘れになっていたので届けようと外に出たら、見知らぬ馬車にぐったりしたエマ様が運ばれているのが見えたのです」
「護衛はどうした!」
「彼女の姿は見えませんでしたが、店の裏手に空の伯爵家の馬車がありました」
ミリーが持ち場を離れるわけない。ミリーが先に捕まったのか?
俺は店員に馬車は後で取りに来させると言って、アルの家に向かった。
アル、頼むから家に居ろよ。
ドアが壊れる勢いで叩いてると、アルが無茶苦茶不機嫌な顔で出てきた。
腕を見ると、金のバングルに緑の石がついたバングルをしている。
エマの色。。。うっわ、こりゃ父上に殺されるな。
「エマが誘拐された、そのバングルで位置がわかるんだろう、お前も来い」
アルを掴んで連れて行こうとする。
「待て、エバン。靴ぐらい履かせろ。あとポーションも持って行く」
アルはエマのことが心配で顔色が悪いが、こういう時は冷静だ
そこで俺もエマが学科分けテストの時に作ったハイポーションを持っている事を思い出した。父上と半分ずつに分けたが、勿体無くて使えずにお守りがわりに持っている。
「待たせたな、行くぞ」アルは自分の馬に乗ってやってきた。
アルのバングルについた石が光る方向へ馬を走らせる、そして街の外れにあった建物の前で石が最も光った。
「ここだ」
俺は馬を飛び降りて、建物の中に飛び込む。
中には外国人が4人いた。
何か外国語で叫んでいる。ナイフも持っていたが、雷魔法で全員を気絶させた。
奥には部屋が数室ある様だ。何処にいるんだろうか?
床には何か赤黒い物がついて、何かを引きずった跡がある。
あれはまさか。。
そして奥の部屋からエマが叫ぶ声が聞こえる。
「アル兄様の嘘つき。このバングルが守ってくれるんじゃないの!!!!」
ここだ!俺は鍵がかかっていたドアを蹴破った。
「そう言う時は、エバンお兄様って呼ぶんだろ!」
俺の目の前には泣き叫ぶエマと血を流して床に倒れているミリーがいた。
嘘だろ、ミリー。
「アル先生、ハイポーションを作らないと、ミリーお姉様が!!」とエマがアルに叫んでいる。
「落ち着け、エマ。ハイポーションなら俺が持っている」と俺は胸ポケットからハイポーションをとり出した。
「それって」
「エマが学科分け試験の時に作ったハイポーションだ。勿体無くて使えなくて、お守り代わりに持ち歩いていたんだ」
「エバン、この傷は外からポーションをかけてもダメだ。内臓が傷ついているなら飲ませないと」とアルが言う。
ミリーの意識はない。
死なせてたまるか。
俺はハイポーションを口に含んで、ミリーに飲ませた。
ミリーお願いだから目を開けてくれ。
俺はミリーに口をつけたまま祈る。
「死ぬなよミリー、起きやがれ」
一瞬ミリーの体が光った感じがした。
「ぎゃーー何であんたが私に!!」と聞こえた瞬間、思いっきりミリーに突き飛ばされた。
「いってえ、命の恩人に向かってそれはないだろう」
「ミリーお姉様!!!」
今度はエマが俺をを押し除けて、ミリーお姉様に抱きつく。
なんなんだコイツら。
そうしたら、アルも近づいてきて。
「これだけの怪我だ、傷は治っても安静にしなくてはいけない。ミリーを早くここから連れ出そう。エバン、俺ではミリーは運べない。頼めるか?」と言う。
そうだ、ポーションは傷は治せるが流れた血は修復しない。騎士団でもポーションで治ったからと急に動き出して、貧血で倒れる奴がいる。
「ああ、しょうがないな。ミリー、暴れるなよ」俺はミリーを抱えて歩き出す。
「え?え?私歩ける!!」
「大人しくしろって言ったろ。またポーションを口移しで飲ませられたいのか?」
暴れるミリーにそう言うと大人しくなった。エマはアルに任せておけば大丈夫だろう。
部屋を出ると床に倒れている外国人がいる。。そうだコイツらどうするかな。でもミリーを早く家に連れて帰らないと。
アルが手早く全員を拘束して、あとは騎士団に任せようと言ってくれたので俺はそのまま外に出る。
俺はミリーを抱えながら馬に乗り「先に行っているぞ」と言って馬を走らせた。
ここは前作の話でも出てきたシーンですが、エバン目線になります。ここが書きたいために、このお話を書きました。




