すれ違う幼馴染達
母上が亡くなって4年が過ぎた。エマは7歳になり、俺達は12歳になった。
俺の世界はエマを中心にまわっていた、朝エマが起きてから、エマが寝るまで俺はエマが必要とすることを先回りして全てした。
ミリーはそんな俺を見て不満そうだ。
「エバン、あんたはエマを何にも出来ない子にするわけ?甘やかすだけが良いわけじゃないのよ」
「エマは魔力も弱いし、まだ小さいんだから俺がやってやらないと」
「エバンが頑張っているのはわかるのよ、でもねエバンも自分の事を大事にしないと、エマの事ばかりでエバンがしたい事はないの?」
「俺がしたい事はエマの世話をする事だから問題ない」
「とにかく、ちょっとずつで良いからエマにも自分でやらせる事を増やしなさいよ。ご飯ぐらい自分で食べさせないと、後で恥をかくのはエマだからね」
ミリーは父上にも同じ事を言ったらしく、父上からもやりすぎだと言われた。
ミリーは俺の味方だと思ったのに何だか裏切られた感じだ。
ミリーだって、父上だってエマの事を甘やかしているじゃないか。何で俺だけ。
久しぶりにニコラスとアルがきた時もそうだ。
エマは相変わらずアルに懐いていて、一緒にポーションの本を読みたいとせがんでいる。アルは困った顔をしているが、嫌ではないようだ。
「アル兄様ありがとう」と言うエマに、アルはポーションの本を読んでやっていた。
ミリーの助言の通りに、試しにエマに自分で自分の事をさせたら、エマはあっという間に学習して、俺が手伝おうとすると自分でやりたいと言う様になった。
本だっていつもは自分で読みたいって言うのに、何でアルには本を読んでくれって頼んでるんだ?すごくイライラする。
ニコラスとミリーはそんな俺を見てくすくす笑っている。
「エバン、そんなにヤキモチを妬かなくても」
「でもあの2人すごく似合ってるわよね、アルが女の子に優しいのってエマ様だけだもんね。幼馴染同士が将来結婚するのとか素敵じゃない?でもそうしたら、アルがエバンの弟になるの?シスコンの義兄がいると苦労しそうね」
俺はむかついてつい言い返した。
「エマにはまだ早すぎるし、幼馴染同士なんか、小さい時頃からずっと知ってて兄妹みたいなもんだから、好きになんかならねえよ」
エマはアルの事もニコラスの事も兄様って呼んでるしな。
ミリーはちょっと黙った後
「そ。。そうよね、私もあんたの事なんか恋愛対象に見られないし」
何でミリーは俺の話をしているんだ?今はエマの話だろう。
「そうか?僕は幼馴染同士でもありだともうけどな。妹としか思ってなかった子がいつの間にか綺麗になってドキッとする事があるんだよ」とニコラスはミリーにウインクをした。
ミリーを見ると少し頬が赤くなっている。
ニコラスはミリーの事が好きなのか?
そう思ったら、エマとアルの事より、もっとイライラが増した。
「ミリーがいくら綺麗になっても、俺はこいつががガサツな暴力女って知っているからな」
だからニコラスとは合わないと言おうとしたら、ミリーが突然立ち上がった時はびっくりした。
いつもなら毒舌で返してくるミリーは目に涙を溜めながら、
「そういえば、お母さんの手伝いがあったんだ」と走ってその場を去った。
「おい、エバン。今のはいくら何でも酷いぞ」とニコラスが咎める様にいう。
俺はミリーが泣くなんて初めて見て動揺していた。
ミリーもニコラスの事が好きだったのか?
エマもミリーも俺以外のやつを好きになるのか?
俺はちょっと気分が悪いから、帰ってくれないかとニコラスとアルに言った。
そしてそれから、2人を家に呼ぶのはやめた。
エマは「ニコ兄様とアル兄様に会いたい」と言っていたが、2人が忙しい事にして会わせなかった。
そしてあの日から、ミリーは俺の名前に「様」をつけるようになった。
「今までの無礼をお許しください。もう小さな子供ではないのですから」と言って、エマとは遊ぶが、俺が近づくとそれとなく何処かに行ってしまう。
ニコラスとアルともだんだん疎遠になっていった。寂しくなった俺はまたエマに対して過保護になっていった。
エマに優しくすれば、エマは俺と一緒にいてくれると思ったからだ。
ミリーはそんな俺を見て悲しそうな顔をしていたが、何も言わなかった。
そして俺たちは17歳になり学園に入学し、学科分けテストから1ヶ月が過ぎた。
「痛ってえな、少しは手加減しろよ」
俺はミリーが木刀で思いっきり叩いた肩を手で押さえる。
「魔獣は手加減なんかしないですよ、エバン様」
「アル、お前ポーション持ってないか?」アルはポーションの本を読んでいたが、不機嫌そうな顔をあげて俺を見た。
「それぐらいなら、ポーションはいらないだろう。ポーションに頼りすぎると傷が治りにくくなるからな」
「アルはエバンに厳しいね。まだ根に持ってるのか?」とニコラスはニヤニヤしている。
「アル様は何を根に持っているんですか?」とニコラスの婚約者のリズが目をキラキラさせて聞いている。
「後で教えてあげるよ」とニコラスは笑顔で返す。
「何度も言うが俺は根に持ってない、変な事を言うな」とアルが静かに言う。
俺達は学園に入ってからまた一緒に行動する様になった。アルは無表情男になったし、ニコラスは婚約者とイチャイチャしてる、ミリーは相変わらず敬語だが、俺を見ても逃げずに一緒にいてくれる。
エマとの時間が減ったがこれも悪くない。
そうやって2年間の学園生活はあっという間に過ぎ去って行った。
卒業が近づき、みんなの話題は卒業後の進路と卒業パーティーに誰を連れてくるかだ。
アルは王宮のポーションメイカーとして働く事になっているし、ニコラスは学園で魔道具科の講師として働く。母上の葬儀の約束を果たしてくれているんだと、俺は感動した。
なのでミリーも俺と一緒に王宮騎士団に入るものだと思い込んでいた。
「ミリーさんは卒業後はどうするんですか?」とリズが聞いた時に、
「まだ迷っていて」と言ったミリーの答えに俺はびっくりする。
「王宮騎士団からのオファーが来ていたろ?父上が言っていたぞ」
「ええ、光栄な事ですが、ちょっと考えている事がありまして。少し返事を待って頂いているんです」
俺がどうしてか聞こうと思った時にリズが今度は卒業パーティーについてミリーに聞いている。
「ミリーさんは誰と一緒に卒業パーティーに行くんですか?」
「え?私は誰からも誘われてないですし」
「えーーミリーさんは素敵だしかっこいいのから人気あるのに、私の従兄弟が。。。」
「リズ、それよりドレスは決めたのかな?」ニコラスが慌ててリズの話に被せて質問する。
そうか、ミリーはパートナーがいないのか。
何だかちょっと嬉しくなった。卒業パーティーは行くつもりがなかったが、ミリーと行くのも良いな。
アルは全く興味がないと行くつもりはないらしい。
「ミリー、、、」
「ミリーさん!!!!!」
後ろから同じ騎士科のトムの声が聞こえた。
「ミリーさん、もし宜しければ俺に卒業パーティーのエスコートをさせて頂けないでしょうか?」
「え?トム様?」ミリーは顔を真っ赤にさせている。
今、俺が誘おうと思ったのに。トムには諦めて貰わないと。
「トム、やめておけよ。俺の妹と違ってミリーはダンスが苦手だし、足を踏んづけられたらお前の足が折れるぞ」
ミリーの相手は俺ぐらい頑丈じゃないとなできないんだ。
それを聞いてミリーの表情は硬くなった。
「トム様、お誘いありがとうございます。私は卒業パーティーの頃にはここには居ないと思いますので、申し訳ございません」
「は?ミリー?何でここに居ないんだよ!パーティーの後はすぐに騎士団の仕事が始まるだろう」と俺が言うと。
「たった今決めました。私は王宮騎士団の仕事は辞退して、ラフィーノ伯爵領の騎士団に入ります」と言ってミリーは立ち去ろうとする。
「おい待てよ、聞いてないぞそんな事」俺はミリーの腕を掴んだが、振り払われた。
「エバン様、長い間お世話になりました。これでエバン様のお守りもお終いです。なので最後に言わせて頂きます、エマ様が大切なのはわかりますが、他の人への配慮がなければ、貴方はそのうち独りぼっちになりますよ」
「何だお前、エマに嫉妬してるのか」
ミリーは目を見張って俺を見た。
「さようなら」
それだけ行って去っていった。それが俺がミリーを見た最後だった。
とうとうミリーがエバンの事を諦めてしまいました。




