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母上との約束

母上は本当に美しく強い人だった。


父上と母上はこの学園で出会った。父上が学科分けテストの魔力テストの時に雷魔法を暴発させ怪我したらしい。その時に父上を軽々と持ち上げて、救護室に運んでくれたのが母上だ。


母上は儚げな容姿だが、無茶苦茶強かった。そんなギャップにやられたのか、父上は救護室でいきなりプロポーズしたらしい。


母上はびっくりしたが騎士科のテストで最短タイムを更新した父上の事を覚えていたらしく、すぐにOKしたそうだ。


「私は見た目だけだと大人しく見えるから、求婚してくる男は私の本性を知ると、こんなゴリラみたいな女とは結婚できないってすぐに逃げて行ったのよ。強い私を見て好きになってくれたのはあなたのお父様だけだったから、逃してはいけないとその場でプロポーズを受け入れたわ」と楽しそうに俺に話してくれた。


2人はとても仲がよく、学園を卒業してすぐ2人は結婚した。父上は魔法騎士団へ、母上は騎士団へ入団する予定だったが、すぐに母上の妊娠がわかり、入団は諦め遠征で家を空けることが多い父上に代わりに伯爵家を切り盛りした。


俺は母上が大好きで、父上が遠征に行くと聞くと、母上を独り占めできるので大喜びだった。


しかし5歳下の妹のエマが生まれた時から状況は変わった。父上も母上もエマに夢中だった。俺はエマに物凄く嫉妬した。


同じ頃、伯爵家の切り盛りで忙しい母上の子育ての負担を軽くするために、エマに住み込みで乳母兼教育係のマーサが雇われた。まあ授乳は母上がしたがったので、主にそれ以外の子育てをしていたが。そのマーサには俺と同い歳の娘ミリーがいた。


ミリーは俺よりも背が高く、力が強かった。俺がエマに嫉妬して、泣かせようもしたら、同じ事をして俺を泣かせた。


「小さい赤ちゃんに嫉妬してどうするの!赤ちゃんは弱いんだから大切にしなきゃいけないの!エマ様はこんなに可愛いのに、何で意地悪するの!」


やっぱり俺の味方をする奴なんかいないんだな。そう思うと何だか悲しくなった。


「みんなエバン様が嫌いなんじゃないのよ。赤ちゃんを育てるのは本当に大変なのよ。寂しいなら意地悪するんじゃなくて、直接あなたのお母様に寂しいいえば良いのよ。何も言わなきゃわからないわよ」


そういうとミリーは俺の頭を撫でてくれた。ミリーの手は暖かくて気持ちよかった。


俺はエマが寝ている間に母上に本当の気持ちを話した。自分だけ除け者にされている様で寂しかったと。エマに意地悪をしてしまった事を反省していると。


母上は俺を抱きしめてくれて、エマを理由に構ってあげれなくてごめんねと謝ってくれた。


その日、母上と俺は街に行きカフェで2人でチョコレートケーキを食べた。凄く幸せだった。


それから時々母上と俺はカフェで2人だけの時間を取る様になり、俺は大の甘党になった。


エマはスクスクと大きくなり、話ができる様になるとどんどん可愛くなってきた。何で俺はこんな可愛い子に意地悪をしていたのかと反省した。ミリーは相変わらず俺に厳しい事を言うが俺は気にせず、ミリーは俺の1番の友達になった。


エマが3歳になった頃、俺の家に同じ伯爵家の子供達が遊びにくる様になった。ニコラスとアリスターだ。


そして、その頃ミリーは母上から剣術を習って、将来は騎士になるって張り切っていた。


4人が揃うと「騎士ごっこしましょうよ」とミリーが誘うが俺達はウンザリした顔をする。


というのも、俺たち悪党3人組から守る女剣士という役をやりたがるからだ。


「俺は騎士ごっこより、ポーションを作りたい」とアルがぶつぶつ言ってる。


「僕は悪党役でも良いよ。ミリーかっこいいし」というニコラスはミリーと遊べるってだけで嬉しそうだ。


ミリーはエマを悪党に囚われたお姫様役にして、クッションで作った牢屋に入れるが、エマはアルの銀髪が気に入ったらしく、すぐに出てきてアルにくっついてしまうので、遊びにならなかった。


母上はそんな俺たちを見て嬉しそうにしていた。


俺はそんな楽しい平和な時間がずっと続くと思っていた。


その年の母上の誕生日の日、父上は討伐遠征からまだ戻っていなかった。

寂しそうな母上を元気づけたいとミリーと相談して母上の好きなチョコレートケーキを街のカフェにこっそり買いに行く事にした。


「たまにリリー様とエバンが出かけると思ってたら、こんな素敵な場所に来てたんのね。部屋にいつもケーキの包み紙が落ちてるって母が怒ってたわよ」


「この前もマーサに怒られた。アリが大量発生したらしい」


「うわーーお母さん、可哀想」


2人でケーキを選び、店を出ようとすると外が嫌に騒がしい。


外に出るとそこには大きな黄色の斑点がある黒いトカゲの魔獣がいた。なんで王都に魔獣がいるんだ?


「毒トカゲだ。。。エバン、あれは毒の液体を吐いてくる魔獣よ。液体に触れたらだんだん体が衰弱して最後には死んじゃうから、私の後ろから絶対離れちゃダメよ」


「そんなミリーを盾になんかできないよ」


「私はあなたの護衛もかねてるんだから、ここにくる許可を取る時にリリー様にお願いされているのよ」


「え?サプライズなのに!」


「それじゃなきゃ、子供2人だけでここには来れるわけないでしょ。それより逃げるわよ」


俺たちはトカゲが移動した方向と反対に向かって走り、家の方へ向かった。


家の門が見えてきて、後少しという時に俺は転んでしまった。


「エバン!!後ろ!!」


後ろを振り向くと毒トカゲが脇の林から出てきた。口を開けて毒を吐き出す準備をしている。


もうダメだ。。


でも誰かが俺を抱えた。


ミリーが叫ぶ声が聞こえる。

「リリー様!!!」


魔獣が街に現れた事を聞いた母上は、まだ帰ってこない俺たちを探す為に家から馬で出る所だった。


トカゲに襲われている俺を見て駆けつけてくれた。


母上は俺を守りつつ、剣で毒トカゲの首を斬り落とした。


しかしトカゲの毒は母上にかかってしまった。


家から使用人達が出てきて、母上を家に連れて行ってくれた。


それから毒は少しずつ、でも確実に母上の体を蝕んでいった。


遠征から帰ってきた父上は毒消しのポーションを手に入れるために奔走したが、毒消しのポーションは製作が困難な上に長い時間がかかる。この国唯一のポーションマスターに相談したが、到底間に合わないと言われてしまった。


父上は泣きながら、母上に自分の不甲斐なさを謝っていた。


俺がケーキを買いたいなんて言わなければこんな事にならなかったのにと、俺も母上に泣きながら謝った。


その頃母上はもう起き上がる事もできなくなっていた。


「エバン、そんな事を言っちゃダメよ。ケーキを買ってきてくれるって聞いた時は本当に嬉しかったし、魔獣が出たのはエバンのせいじゃないのよ。あのままだと、あの魔獣は家を襲っていたから、エマも危なかったの。あそこで止められてよかったわ」


母上は俺を抱きしめながら言った。

「これから、エマの事は貴方が守るのよ。私の体は無くなるかもしれないけど、ちゃんと貴方達を見守ってるからね。騎士にはなれなかったけど、貴方を守り抜く事ができて最高に誇らしいわ。そして、1番大事な事。エバン、あなたはあなたの幸せを見つけて、それが出来たら私も安心して眠れるわ」


それから数日後母は亡くなった。


母の葬儀ははひっそりと行われた。

ニコラスとアルも来てくれて、大きくなったら、ニコラスは魔道具師に、アルはポーションマスターになって母上のような人を救ってみせる約束してくれた。


ミリーは母上に立派な騎士になってエマ様をお守りしますと誓った。


俺は何も言えず、ただ母上の棺を見つめていた。


ミリーはなんも言わずに俺を抱き寄せて、頭を撫でてくれた。


そんな俺達をエマはじっと見ていた。


父上は葬儀では毅然としていたが、葬儀の後、母の居なくなったベットを前に声を出さないように泣いていた。


それを見たエマは

「お父しゃま、エマがいるから大丈夫よ」と頭を撫でていた。ミリーが俺にしてくれた様に。


父上はエマを抱きしめて大泣きしている。


エマは母に似て強い、でも小さなエマから母上を奪ったのは俺だ。一生かけて俺が守ってやる。




実はエバンのシスコンは使命感からのシスコンでした。

伯爵の娘溺愛は生まれた時からなので筋金入りですが。

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