表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ORANGE  作者: 陽葵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/12

4

 



 ポワンとしていたヒマリの耳に、ふとあかり君の声が届いた。

「今読んでる本、面白いよ」と言われて覗き込むと、ページのタイトルに「マスカレード」の文字。


 ――マスカレード?

 え、なにそれ。魚のカレー?

 そんな他愛もないことを考えながら、ヒマリは燈君の横顔をそっと見つめた。


 鼻筋がすっと通ってて、まるで彫刻みたい。

 ……なんて思っていたら、急に視線が合う。


「どうしたの? 大丈夫?」

 ヒマリは慌てて頷いた。危ない危ない、見惚れてたなんて言えない。


 ---


 そういえば――明日は友達の葵ちゃんと女子会の日だ。

 スタバでやる予定なんだけど……燈君も来たら楽しいかも。

 そう思ったけど、口には出せなかった。


 便宜上でもなく、ただの“同居人”。

 恋人でもなく、家族でもなく。

 二人はただ、“オレンジ組”という名の不思議な関係。


 ヒマリはチキンをひと口かじりながら、ぼんやり考える。

(燈君って……胸板厚いんだなぁ。)

 なんて、ちょっと不謹慎なことを考えていると――


「おいしい?」

 その声で、また心臓が跳ねた。


 ヒマリはコクリと頷き、ちょっと上を向いた。

 どうしてだろう。胸の奥がもやもやする。

 楽しいのに、少しだけ寂しい。

 ……これが、ぴえんってやつなのかもしれない。


 ---


 家に戻ると、ヒマリは元気よく台所へ向かった。

「よーし、晩ごはん作るぞー!」

 そう意気込んだ瞬間、燈君がさらっと言う。


「下ごしらえはもう済んでるよ」


 えっ? どういうこと?

 冷蔵庫から取り出したのは――ブロック肉。

 しかも、見たこともないほど大きなスペアリブ!


 ヒマリは、思わず「え?」と声を漏らした。


「ごめん。お父さん、お肉ダメだったかな?」

「そんなことないよ!」


 いつの間にこんなの用意してたの!?

 学校の勉強も、日本語の勉強もして、本も読んで……そのうえ料理まで。

 ほんと、いい旦那さんになりそう。


 ……あ、いや、まだ旦那じゃないけど!


 そんなヒマリの混乱をよそに、燈君が言う。

「You don’t know?」


 出ました、英語。

 ヒマリは慌ててスマホを取り出し、文明の利器――翻訳アプリを起動!


「もう一回言って!」

「いいよ」

 《意味:あなたは知らない。会話を続けますか?》


 アプリとは続けたくないけど、燈君との会話なら、永遠に続けたい。


 ---


 夜。

 お父さんは居間でテレビ、お母さんは韓ドラに夢中。

 ヒマリは自分の部屋で、今日のことを思い出していた。


 そういえば、燈君には妹がいるって言ってたっけ。

 どんな子なんだろう。かわいいのかな。

 そんなことをぼんやり考えながら、机に向かう。




日課の一言日記。


11月9日

明日は、燈くんと女子会です。楽しみ♡


――ヒマリ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ