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ORANGE  作者: 陽葵


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2

 



 おはようって、言い出せないまま――今日も私たちの一日が始まる。


 実はね、ヒマリ、今……あかりくんと同棲してるんです。

 ……ごめんなさい。いろいろすっ飛ばしました。


 ある日、元気なお母さんと、やたらテンションの高いお父さんが、

「ヒマリの友達を見たい!」って言い出して。


 仕方なく燈くんを連れて行ったら……案の定、お父さんが気に入っちゃったんです。

 私、あわてて言いました。

「お父さん、燈くんに悪いよ」って。


 そしたら――びっくりです。


「俺、ヒマリと結婚します」


 ……え? 何言ってるの、この人。

 お父さん、当然ブチ切れ。

「おまえ、何を言っているのかわかってるのか!」って怒鳴り散らすし。


 でも、燈くんは落ち着いた顔でこう言ったんです。


「行動で証明します」


 そして、まさかの提案。


「この家の家政婦をやらせてください」


 家政婦!? なんでそうなるの!?

 ヒマリは、もうパニックです。


 どうしたらいいのか分からなくて焦ってたら、

 燈くんが、いつもの穏やかな声で言いました。


「大丈夫だよ」


 その瞬間、頭をぽん、と撫でられて――もう、ダメです。

 狼みたいなその仕草に、ヒマリ、完落ちしました。


 うちの家は二階建てで、空いてる部屋が一つあったから、

 燈くんはその部屋で寝泊まりすることに。


 ――で、事件は二日目に起きました。


 私がふざけて「アイ・ニージュー!」って言ったんです。

 すると、燈くん……そこから猛勉強モード突入。

 たった一週間で日常会話をマスターしちゃいました。


「どうやってそんなに喋れるようになったの?」って聞いたら、


「本を読んだんだ」

 と、あっさり言うんです。


 しかも読んでるの、全部難しい本ばっかり。

 最近は伊坂幸太郎さんの小説を読んでて、感心するばかり。


 私の好きな作品を教えてあげたんです。

「『カラフル』って知ってる?」って。

 そしたら、


「もう読んだよ」

 って、返されました。……ぴえん。


 ヒマリ、よく「ぴえん」って言うんです。

 言葉の響きが好きなだけなので、気にしないでください。


 でもね、「カラフル」を教えた時も、


「発音、違うよ」

 とか、ドヤ顔で言ってくるんです。もう、むかつく!


 日本語は私のほうができると思ってたのに……ほんと、びっくり。


 そんなある日の午後。

 おやつの時間になって、私は燈くんの部屋の前に立ちました。

「トントン」と、二回ノック。


 ……うるさくなかったかな。

 そんなことを考えながら、静かにドアノブを引くと――


 そこには、すやすや眠る燈くんの姿がありました。






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