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ORANGE  作者: 陽葵


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 気まずくなって、思わず視線を逸らした。

 あかり君がスコーンを食べて「おいしい」と言ってくれたのは嬉しい。

 けれど、恥ずかしさで胸がいっぱいになる。


 葵ちゃんは、必死に場の空気を明るくしようとしてくれていた。

 でも燈君は、そんなの気づかないのか――まだ「おいしいなあ」とか言ってる。

 ほんと、空気読めない。かわいいけど。


 「もう大丈夫だよ」と言いかけたその時。


「ランチ行こ!」


 葵ちゃんが元気いっぱいに提案して、流れでランチに行くことになった。


 今日のランチは――うどん!


 きしめんもいいけれど、燈君にはぜひ“天ぷらうどん”を食べてほしい。

 ヒマリおすすめの一品だ。


 ちょっと恥ずかしいけど、勇気を出して、燈君の手を引いた。


「お、おっと……!」


 その声が、少しくぐもって聞こえる。

 手のひらから伝わる鼓動。

 あ、緊張してる……? もしかして。


 そんなことを考えている間に、隣では葵ちゃんがスキップしていた。

 その横を、不器用に歩くヒマリ。

 そして、私に手を引かれながら、穏やかに景色を眺める燈君。


 三人並んで歩く姿は、まるで絵のように完成されていた。

 たとえるなら――青春の一コマ、ってやつ。


 (……でも、できれば私の顔にはモザイクかけてください。ぴえん。)


 そうして着いたのは、「うどん ゐぬべゑ゙」。

 ヒマリお気に入りのお店だ。


 味噌煮込みから天ぷら、ぶっかけまで、うどんの種類は実に豊富。

 個人店なのに、季節限定メニューもあって飽きない。

 ……というわけで、超おすすめです。


「あれ、なんて読むの? ……あ、読むんですか?」

「さあ、なんでしょう」

「え、なんだろう。ぬぬべる?」

「もう、いぬべえだよ!」


「Learning Japanese is no joke.」

《翻訳:日本語マジでむずい》


 ――ぷっ。

 思わず吹き出してしまう。


 やっぱり燈君、面白い。

 これはもう、教育係ヒマリの出番だね。やった!ぱおん!


 暖簾をくぐると、出迎えてくれたのは優しそうな店主さんだった。


「はい、いらっしゃい!」


 店内は落ち着いた木の香り。

 静かで、でもどこか温かい。


「おお、本格的ですなぁ~!」


 葵ちゃんがわざとらしい声を出して、レポーターの真似をする。

 店内に、くすっと笑いが広がった。


 ヒマリは四人席に腰を下ろし、葵ちゃんの隣に座ろうとした――

 その時、ふと燈君の視線を感じた。


 (え……怒ってる?)

 (いや、そんなはずないよね……?)


 なんだか胸がざわつく。

 最近、こういう小さなことでも気になってしまう。


 「天ぷらうどん、一つください」


 そう告げて、注文を済ませる。

 ヒマリが頼むと、必ずと言っていいほど、燈君も同じものを頼む。


 「俺も、それで」


 ほら、また。

 ほんと、真似しないで……。


 ――なんて思いながらも、心のどこかでちょっと嬉しいヒマリだった。






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