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第9話 鏡の読者

――読むことは、書かれることのもう一つの形だった。

リアムが目を覚ますと、机の上に鏡が置かれていた。

そこに映っていたのは、自分の顔ではない。

見知らぬ女性――マチルダ・グレイが、静かにこちらを見つめていた。

鏡の中の彼女は、まるでページの向こう側から覗き込んでいるようだった。

リアムは恐る恐る手を伸ばす。

指先が鏡面に触れた瞬間、世界が波紋のように揺れた。

壁が文字に変わり、天井が紙面に崩れ、彼の足元が文章の行間へと沈んでいく。

誰かがタイプライターを打つ音が響く。

――“読んでいるのは誰か?”

その問いに応えるように、鏡の奥から声がした。

「あなたが読むたび、私は生き返るの」

リアムは最後に気づいた。鏡とは、読者自身の眼差し。

そして彼が今、読み続けている物語の名は――『転生クリスティ』。

次回予告:

――第10話「沈黙の筆跡」

文字が消えた原稿、残されたのは“書かれなかった物語”の跡。

沈黙の中で、最後の真実がゆっくりと形をとり始める。

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