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第5話 永遠の再稿
――結末は、いつも夜明けの後で書き換えられる。
夜が明けるたび、マチルダの原稿は違う物語へと変わっていた。
書き終えたはずの結末が、翌朝には書き換えられている。
タイプライターのリボンを新しくしても、同じ現象は続いた。
リアムはそれを「再稿現象」と呼んだが、彼女にはそれが他人事には思えなかった。
彼女が眠っている間に、別の意識が書き足している――そんな確信が胸に宿る。
紙の上で文が脈打つたび、誰かの声が混じる。
「これはまだ、終わっていない」
その言葉に呼応するように、マチルダの手が動いた。
筆致は震え、記憶の底から何かが浮上する。
それは過去でも未来でもなく、“推理という祈り”が形を変えた存在だった。
夜明けの窓辺に、ひとりの作家がいた。
彼女は書き続ける――再生の真実を、再び語るために。
次回予告:
――第6話「記憶の終章」
語り手と作者、登場人物と読者。その境界が消えるとき、“推理”は最後の真実に触れる。




