2/9
第2話 夜明けのプロローグ
――物語が始まる前に、すでに誰かが終わっていた。
リアム・クロウは、彼女の原稿を初めて読んだとき、奇妙な既視感に襲われた。
文体の奥に、見知らぬ時代の埃と呼吸が潜んでいる。
彼は編集者として冷静にページをめくったが、次第に“自分が読まれている”という錯覚を覚えた。
マチルダ・グレイ。その名の向こうに、もうひとつの意識がある。
彼女が書く推理小説の犯人は、まだ登場していない。
けれど、文中の語り手が時折、リアムの過去を言い当てるのだ。
それは偶然ではない。
彼女の中の“記憶”が、彼の現実を書き換えているのかもしれない。
夜明けの街に鐘が鳴る。タイプライターの音とともに、現実が少しずつ物語に飲み込まれていった。
――第3話「語られぬ犯人」
彼女が描く“虚構の罪”が、誰かの現実を告発し始める。




