Lv.3 前進する。
仲間を引き入れた俺ことセイラ隊一行は《アンバラン》を後にし、さっそく冒険への一歩を踏み出した。
――のだが。
「だから! ボクは《カバリル遺跡》に行きたいって言ってるの!」
「いーや、次の街の方が近いんだし、今日はそっちだ!」
開始早々、セイラとどこへ行くかで衝突した。
ほんと、昼間っから体力削る真似はやめてくれ。
……とか思いつつ、引くつもりがないのはお互い様。
慌てふためくサヤーナを横目に、俺は悩み続けていた。
埒が開かない。どうにかならないか。
――そうだ、チートスキルに頼ろう。
こんな場面で使うもんじゃないが、背に腹は代えられない。
ステータス表を開いて目を走らせる。
[学力]、[ヴィミニ語力]……違うな。
……おっ、[説得力]なんてあるじゃん。
よし、使おう。
……どうやって?
《[説得力]や[跳躍力]など、オートで発動され続けると不利益になるスキルは初期設定でOFFです。使う場合は、詳細欄からONに切り替えてください》
なるほど。
俺は言われた通りに説得力をONにする。
《[説得力]をONにしました》
体の変化は特にない。
でも、これでオート発動してるはず。再交渉だ。
「なあ、やっぱり《ダープ》の――」
「うーん、確かに」
え? 聞き間違い?
「《ダープ》の武器屋に――」
「うーん、おっしゃる通り」
あれ?
譲る気ゼロだったセイラが、二つ返事どころか三つ返事してくる。
というか…
「そうだね! わかる! ボクもそう思ってた!」
……賛同ロボット化してる。
チートスキル、やっぱえげつないな。
強化すると洗脳じみた効果になるらしい。
いや便利だけど。
《[説得力]をOFFにしました》
「よし二人とも、《ダープ》に出発だ!」
「……? うん……」
セイラは説得されてたことを忘れてるらしい。
よし、これで真っ直ぐ向かえる。
でも、歩きだとどれくらいかかるんだろう。
馬も借りられなかったし、乗り物なしで歩くとか気が遠くなる。
こんなことなら元の世界で運動しとけばよかった。
「あ、あの! 2人とも!」
俺の怠け心を察したのか、サヤーナが声を上げた。
「あの、私これから乗り物を作ってみます!」
作る?
草原に材料なんて――
と思ったが、もう魔力を練り始めているので止められない。
任せるしかなかった。
肌を撫でる風が、サヤーナへ集まるように吹き寄せる。
草が靡き、やがて風は青く光り、その光は彼女の手元へ吸い込まれていった。
「……ライドル…ディパワー……クリエイト!」
唱えた瞬間、周囲の草が一斉に抜け始めた。
1本2本ではない。
草原を丸裸にしかねない勢いで抜けていく。
そして青い光の中で結ばれ、柄と毛のある一本の……箒が現れた。
……え、箒?
「ちょっと何これ!? 乗り物じゃないじゃない!」
セイラが叫ぶ。
それも当然だ。どう見ても箒。
だがサヤーナはドヤ顔だ。
「この柄の部分には渦の模様が刻まれています。ここに魔力を込めると、このフサフサから動力として排出されるのです!」
意外と本格仕様だった。
ファンタジー要素満載だ。
「(この世界では)何て名前なんだ?」
「いや、まだ無いです」
無いのかよ。
「解説すると、私のスキルは――」
そこでふと気になって、俺は彼女のステータス表を覗く。
サヤーナ=ホープ
総合Lv.-
職業:魔法使い
獲得スキル:要[観察力]
ウインクして詳細を出す。
獲得スキル:
[創造力]Lv.26 ほか
これだな、[創造力]。
説明を読む。
《用途や性質を設定し、その場の素材で作り上げるスキル。低レベルでは未知の物を作り、高レベルでは馴染みある物が作れるようになります》
なるほど、だから“性能だけ箒のような何か”が生まれたのだ。
「よし、じゃあこれに乗って《ダープ》へ行こう」
そう威勢よく言ってまたがってはみるものの、意外に操作が難しい。
揺れる揺れる。
《[??操作力]が解放されました》
出た、この声。
まだ箒とかの名前がないから“??操作力”なんだろう。
「ちなみに、名前はどうしましょう?」
とサヤーナ。
やっぱり、俺の予想通りだ。
「箒でいいだろ」
「なるほど、ホーキですね!」
その瞬間。
《[ホーキ操作力]がLv.99になりました》
……いきなりカンストした。
これが召喚者補正か。
Lv.1のものは問答無用で最強になるっぽい。
恐ろしいほど楽勝だな、この冒険。
「よし、出発だ!」
こうしてホーキで《ダープ》へ向かうのだった。
「ねぇ、難しいんだけど!」
――なお、操作力低レベル組が足を引っ張るため、結局ノロノロ進む羽目になった。
Lv.3 end




