Lv.1 転生する。
「勇者様、勇者様」
そう声をかけられ目を覚ますと、周りの不思議な格好の人らもざわめき出す。
一体どういう状況だ?
「はじめまして勇者様。お名前を伺ってもよろしいでしょうか」
周りを見渡すと、誰もがこちらを見ている。
もしかして、勇者って俺のこと? ほんとに?
恐る恐る口を開く。
「山田すぐるです」
「スグル様。召喚されてすぐで戸惑っておられると思いますが、すぐに王様のところへ向かってもらいたいのです」
本当に戸惑っていてどうすればいいか分からなかったので、とりあえず頷く。
すると、先ほどの人が道案内を始めた。
よろよろとついていきながら思う。
俺は、俗に言う異世界転生をしてしまったらしい。
しかも、モブとかじゃなく勇者。
もしかして、死ぬ直前にそんなことを思ったからか?
いやーまずいことになった。
俺は勇者と呼ぶにはあまりに非力すぎる。
なんせ、ゲームや漫画やらで、相当体は鈍っている。
と思ったが、体を見てみるとかなり引き締まっている。
そういえば、事故の痛みを感じない。
どうやら別人の体に、魂が宿っているようだ。
となるとこれは異世界転移?
でも俺が暮らしていた世界の俺は死んでいるし…?
わけわかんね。
まあこの点に関してはどうでもいい。
問題はやはり勇者であると言うことだ。
体の問題はなさそうだが、勇者って事は獣と戦うんだろう。
流石に戦闘経験はねーぞ。
そうなると仲間次第か。
でもポッと出の俺に、仲間なんてできるのか。
いろいろな不安に駆られる。
気晴らしに周りを見たところ、すごく平和そうな西洋風の街並みが広がっていた。
そしてどうやら、この王宮はこの街の中心に位置しているようだ。
すごく栄えているし、獣らに襲われた気配はない。
だけど勇者を必要としているって事は、この街はピンチなんだろう?
そんな時に駆けつけた勇者が俺って、まじで大丈夫なのか?
そうして広い王宮を5分ほど歩き、ようやく王の元へ辿り着いた。
どうせなら、魔法でワープとか、魔法の絨毯とか使おうぜ。
「おお、よく来てくれた勇者殿」
いかにもな白髭の生えた男が話し出した。
「私は、このヴィミニ王国の王、エル・サター3世だ。其方は?」
「山田すぐるです」
エル・サター?
そんな感じの名前が普通なら、俺めちゃくちゃ浮かないか?
て言うか自然に会話してるけど、日本語じゃないよねそれ。
俺はどうやって喋っているんだ?
「ほう、スグルと言うのか。この国へようこそ。早速だが、勇者の君に頼みがある」
頼みとは?
今さっき勇者になった俺に頼みとは?
「今現在、この国の周りには、一部バイオームを除いて、ほとんど魔獣はおらん。なぜなら、ここ近辺の魔獣の親玉、と言うより獣の王と言った方が正しいかもしれない、そんな存在の獣が眠る時期だからじゃ」
お、ラスボスっぽい奴だ。
「奴は暑い土地には近寄れない性質上、ここの土地に現れる事はない。ただ、日々人間を襲おうと、獣に呪力を込め、旅人を襲っておる。まあそこは、この国の警察隊が討伐してくれるので問題はない。問題はなかったのだが…」
「何かあったんですか」
「最近、警察隊の数名が呪殺されてしまったのだ。もちろん、呪殺した獣は討伐したが、今までこんな事は起きた事はない、おかしいと思い専門家に調べさせると、この国全体で気温が下がっておったのだ」
「と言う事は、ドラゴンの活動範囲が広がった?」
「広がったとは思うが、幸い何故かドラゴンは元居た洞窟を離れようとしない。そこはいいのだが、呪力は強まる一方。しかもこの先、数十年ぶりの大寒波がきてしまう。そうなれば、奴もここぞたばかりに、この国に襲いかかるだろう」
思ったより深刻な状況だ。
「そこで、お前さんを召喚させてもらった。お願いだスグル殿。北の果てにいる魔獣、スノウスドラゴンを討伐してきてくれ!」
そして、お決まりの流れ。
もう逃げ場はない。
どうする? 嘘つくか??
いや、もう正直に言ってしまおう。
ここで嘘つくと、信用を失いかねないし。
「あの、俺いきなり勇者にされただけで、スキルとか何にも知らないんですけど」
「何を言っておる。お前さんのスキルは、どれもLv.99(MAX)じゃないか」
「…え?」
「嘘を言っているのではないぞ。試しにお前さんの掌に、逆三角形を描いてみなさい。そうすると、ステータス表が身の前に現れるぞ。閉じる時は、先ほど描いた方の掌に、丸を描きなさい。これは、冒険者の基本じゃ!」
言われるがまま俺はやってみる。
すると、テレン!という効果音と共に、水色のステータス表が出てきた。
山田すぐる -ヤマダ スグル- 総合Lv.99
性:男
身体:身長166.3cm 体重61.0kg
装備:勇者の剣 SSS 勇者の鎧 SSS
職業:勇者
パーティーメンバー:なし
獲得スキル:
[体力]Lv.99
[学力]Lv.99
[思考力]Lv.99
[創造力]Lv.99
[計算力]Lv.99
[日本語力]Lv.99
[ヴィミニ語力]Lv.99
[コミュニケーション力]Lv.99
[攻撃力]Lv.99
[防御力]Lv.99
[瞬発力]Lv.99
[跳躍力]Lv.99
[魔力]Lv.99
[呪力]Lv.99
etc…
なんだこれ!?
ズラッと続く獲得スキル表。
そして、そのレベルは全て99(MAX)だ。
ていうか剣装備してるじゃん!?
普通に気が付かなかったんだが?
「お前さんは、神からの奇跡を受け取っておる。向かうところ敵なしだろう。お願いだスグル殿、冒険に行っておくれ。もちろん、報酬も軍資金も出す。ドラゴンを倒せば、名声も得られるじゃろう」
名声か。
今まで地の底にいた俺が、この国を救えば、英雄になれてしまうのか。
そうなれば、もう答えは一つだ。
「ああ分かった。行ってやるよ、冒険に」
そう高らかに宣言した。
広い王宮全体、いやこの街全体に轟くような声で。
この恵まれたスキルを活かさない道はない!
絶対に討伐してやる!!
ここから俺の、名声を得る冒険が始まるのだ。
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その晩は、王宮の一室へ案内され、一晩止めてもらえることとなった。
転生してすぐで色々あったけれど、俺は大満足だ。
なんてったって、馬鹿みたいにステータスの盛られた勇者になったんだ。
そりゃあ、今までの人生にないほど嬉しいだろう。
そういえば、あのスキルたちはどうやって使うのだろう。
確か解説が載っていたはずだが、読まなくてもつかいこなせるだろう。
そう思い、特に開きもせずにベッドに寝転ぶ。
明日から早速、俺の冒険はスタートする。
今日は臨時でここで寝ることになったが、宿もこれから調べないといけないな。
どんな仲間と出会えるだろうか。
どんな奴と戦うのだろうか。
そんな妄想は、いつまで経っても収まらない。
未来に夢を抱きながら、俺は眠りについた。
異世界での初めての睡眠だ!
zzz…
《[体力]のLvが99→98になりました。
また、他73項目のLvが99→98になりました》
Lv.1 end




