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Lv.0 死亡する。

「何度言ったらわかるの!?もうゲームは処分!部屋で勉強して!!」

そう母親に怒鳴り散らされ、俺は2階に駆け上がる。

怒鳴られた理由はそう、成績の低迷だ。

そして、部屋に戻ってしまっておいた漫画を取り出した男こそが、この俺、山田すぐるだ。



俺は、県内有数の底辺校に通う高校生である。

そして、なぜ成績が低迷しているからというと、授業をまともに受けていなかったからだ。


高校入学早々、周りの環境もあってかただただモバゲーを触りながら授業をやり過ごす、そんな日々が続いていた。

もちろん、自主勉強、テスト対策、1ミリたりとも手をつけずじまい。

そんな中学の怠け癖が抜けなかった結果、というかまあ当然なのだが、高校初回のテストはボロボロだった。


その時も、母親に

「信じられない!!いつまで子供の気分で遊んでいるの!?早く勉強しなさい!!」

と、こっ酷く叱られた。

が、この時は塾に通って勉強することを条件に、ゲームを始めとする娯楽たちはなんとか死守することに成功。

まあ、命拾いしたってところだ。


しかし、根っこから腐っている俺は、契約なんて忘れて、塾の課題もやらず、部屋に引き篭もりゲーム三昧。

そして2度目のテストは、これまた大爆死で終わった。

そして、冒頭に続く…という感じだ。

まあ、俺には3度目の正直とかないし、相も変わらずまた引き篭もる予定だ。


こんな自分に、時々自己嫌悪する。

すぐる なんて名前、わざとつけたのだろうか。

もう親もすぐるなんて呼ばなくなった。

お前とか、バカ息子とか。

まあ絶賛反抗期の俺には、罵倒も何も効かない。

もう堕ちるとこまで堕ちているのだ、俺は。

そして、そんな事、流石にわかっているからだ。


「周りを見てみさい!お前みたいなのはどこにもいないよ!」

そんなことを吐かれたこともあった。

心に傷がついた感覚はある。

けれど、心が麻痺していて、もう痛みはないのだ。


でも、こんなことをした俺でも、人生をやり直したいと思ったりする。

リセットして、何かがうまくいくとも限らないが、少なくとも今の自分よりはいい景色を見ることができるだろう。


そんな戯言を考えながら、読み飽きた漫画に目を通していると

「おい、バカ息子!てめえ塾はどうした!!」

下の階から、また怒鳴り声がする。

ああ、もうそんな時間か。

最近の塾は、漫画喫茶に行ったり、ゲーセンに行ったり、こちらにも娯楽趣味が侵食している。

俺としては、口うるさい奴から逃げられる良い口実みたいなもので、この時間を重宝している。

よし、あらかた準備はできたかな。

そうして、ろくにテキストの入っていないカバンを背負って、家を出た。


ここで、事件は起こる。

ゲーセン前のいつもの交差点。

俺は赤信号を待っていた。

隣には、小学生ぐらいの女の子。

俺と違って、純粋無垢な瞳をしていた。

そして、おつかいの袋を大事そうに抱えている。

俺にも、こんな時代があったんだろうな。


なんて思いつつ、信号の切り替わりが遅いので、車両用信号の方へ目を向けた。

すると、向こう側からものすごいスピードの軽トラがやってくる。

どうやら、この信号を抜けようとしているらしい。

だが、俺が目を向けた頃には車両用信号は黄色になっており、軽トラはおそらく抜けられない。

それなのに一直線でこちらに向かっている。


危険を察して、逃げようとする。

が、どうしても少女が気がかりで、さっきいた位置を見る。

少女がいない。

少し目線を戻すと、前方に少女がいた。

俺が軽トラに気を取られているうちに、歩行者用信号は青く光っていたのだ。

「危ない!!」

あいつの怒鳴り声の如く、俺は叫ぶ。

こんな俺にも、正義感はある。

俺が事故っても悲しむ奴はいないだろうが、この子にはきっと輝かしい未来がある。


俺は、少女の行手を阻む壁となり、そのまま軽トラに轢かれて、ガシャン!

ガードレールに衝突し、即死だ。

一瞬にして五感を失って、自分が死んだことも認識できなかった。

結局、あの子が無事かわからない。

助かっていて欲しいな。

そうしたら、死ぬ前にせめて、生きててよかったって思えるかもな。


《職業が、勇者に決定しました》


あ?

勇者?

勇者か、なれるもんならなってみたいもんだな。



Lv.0 end

明日から、月間連載『山田転生 〜《チートスキル》が《チープスキル》になる前に〜』がスタートします。


よろしくお願いします!


(もともとラブコメやる予定だったんだけどねー)

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