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僕は乱に身を立てる  作者: らる鳥
三章 北西部の雄

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 カシューシアの戦いには関わらず、リャーグを目指して進むと決めた僕達だったが、ダストリアのフィルダンを出立する商人の護衛に雇われる事となった。

 最初はそんな心算はなかったんだけれど、この冬、フィルダンに滞在してる間、色々と世話になった宿の主に頼まれたのだ。

 なんでもフィルダンを訪れる旅に宿を利用してくれる商人が、隊商の護衛が居なくて困っているという。

 話を聞いてみると、ここまで護衛をしてきてくれた傭兵達が、カシューシアの戦いに加わる為、バーバラント王国に行ってしまったらしい。


 あぁ、まぁ、それは仕方ないか。

 戦争に参加するとなると危険は大きいが、その分、報酬も多くなる可能性がある。

 その傭兵達は、隊商の護衛という安定より、戦争で大きく稼げる可能性に賭けたくなったんだろう。

 特にバーバラント王国は、この戦いで比較的だが有利な立ち位置にいるから、狙い目である事も間違いはないのだし。


 ただ、それで護衛に居なくなられては、商人としてもたまったものではない。

 困った商人は宿の主人に護衛のアテはないかと相談し、冬の闘技会で活躍したダラッドの話を聞いて、僕らの紹介を頼んだのだ。


 正直、護衛の仕事は少し面倒だった。

 まず何よりも、隊商の護衛をするとなると、僕らの旅のスケジュールは全て隊商に合わせる事となる。

 護衛をするんだから当たり前だけれど、自分のペースで物事を決められないというのはどうにもこうにも面倒臭い。

 例えば、仮に途中の町で割のいい仕事を見つけたとしても、護衛の仕事があるからとそれを諦めなければならないだろう。

 いや、元々の護衛だった傭兵達は、それを諦めずに護衛の仕事を投げ出して、カシューシアの戦いに行ってしまったのだけれども。

 でも僕は、一度引き受けた仕事を途中で投げ出す真似はしたくない。


 なのであまり気乗りはしなかったが、世話になった宿の主人の願いとあって、僕らはその護衛を引き受ける事にする。

 冬の間、酒場や娼館の護衛といった、細々とした仕事を紹介して貰った恩もあり、無下にするのは心苦しかったのだ。

 それも詰まらない仕事じゃなく、一般的に見れば割のいい仕事で、更に護衛の不足から割り増しの報酬まで付いてるのだから猶更だった。

 宿の主人だって、損のある仕事を薦めてくるようなぼんくらじゃない。

 隊商の目的地はリャーグの首都で、これだと道中で他の、リャーグを相手にするような仕事は受けられなくなるが……、まぁそれはそれで運命だったんだろう。


 尤も、僕とダラッドでもたった二人じゃ、数台の馬車守る事は不可能だ。

 すると商人は、僕がダラッドに戦い方を教えたって話を聞いて、フィルダン近郊の村で燻っている、農家の次男や三男に支度金を出して集めてくると言い出した。


 農家に限らず大体はそうなんだろうけれど、田畑等の財産を親から継ぐのは基本的に長男である。

 当たり前の話なんだけれど、田畑は分割して分け与えると、そこから得られる食料も分割されるので、ポンポンと分割して分け与えていくと、数代で全員が十分な飯を食えなくなってしまう。

 故に余程のぼんくらでもなければ、親の財産は長男が全て継ぐ。

 次男は長男に何かあった時の予備であり、長男が嫁を取って子ができれば、その予備の役割も失われる。

 まぁ、次男ならばまだ、他の家が男子に恵まれなかった時、婿養子となれる場合があるが、三男は基本的に育ってしまえば居場所はない。


 だったら最初から子供を何人も作らなければいいんだけれど、生まれた子供が確実に大人にまで成長できる訳じゃないから、そこは仕方ないんだろう。

 後は、村人は他の娯楽が乏しいというのもあったりするし。


 なので村では次男や三男が燻っているという事は多かった。

 一部は村を出て町に仕事を探したり、新たな地を切り開こうと開拓民になったり、或いは何もかも上手くいかずに賊に転落したりと、色んな道を辿るが、そうした者達にとってはこの前のルパンダであったような、兵士の募集は非常に良い機会らしい。

 戦争で命を失う危険はあるが、生き残れば纏まった金が手に入り、戦争に参加したという経験と、戦って生き残ったという自負が得られる。

 更には国の為に戦ったという信用も。


 もちろんそうやって兵士を経験しても、結局は賊として生きるしかなくなる者もいるだろう。

 得た金を持って元の村に戻り、少しだけ自分の立場をマシにして終わる者も。

 けれども兵士を経験した事を転機に、新たな人生を切り開く者も、決して皆無じゃないそうだ。


 ……と、話が逸れたが、今回の商人の話は、そうした村で燻る次男や三男にとっては、国の募兵程ではないが中々に良い機会に成り得る。

 仕事の内容が戦争じゃなくて、街道を行く隊商の護衛だという事まで含めて考えると、或いは募兵よりもこちらを好む者もいるだろうってくらいに。

 国の募兵は基本的に戦争の間の一時雇いだけれど、商人の護衛は真面目にこなして成果を出せば、継続して雇って貰える可能性が高かった。

 商人も、一度や二度じゃなく、長く雇える事を期待して、支度金まで出すのだろうし。


 尤もその村の次男や三男が、継続して雇えるだけの護衛に育つかどうかは、彼らを指導する役割を任されそうな僕に掛かってるんだけれど……。

 正直、とても面倒臭い。

 だって商人が望む護衛として育てるのって、単に戦士として鍛えるのとは、多少は勝手も違いそうだし。

 まずはどんな護衛に育てて欲しいのか、その確認をしなきゃならなかった。


 当然ながらその分は、僕への、それから僕を補佐するダラッドへの報酬も、大きく増額して貰う必要がある。

 ……まぁ、いずれ僕が兵を率いる時には、同じように村から人を集めるだろうし、その練習だと思おうか。



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― 新着の感想 ―
あぁ、子供の成長確立と数は関係性があったんですね! 大変だよー
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