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僕は乱に身を立てる  作者: らる鳥
三章 北西部の雄

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 冬が去り、春が訪れて雪解けが始まってすぐ、驚くべき報せが南、より雪解けの早い地域より届いた。

 ルパンダの北西にある小国、カシューシアの周囲にはルパンダを含めて四つの国があるんだけれど、そのうちの一つ、マモラスが雪解けが始まるや否やカシューシアに攻め込んだという。


 雪解けが始まったとはいえ、雪もまだ残っているし、雪解け水でぬかるんだ地面は進軍に向くとは決して言い難い。

 冬越えで蓄えた食料も減っているだろうし、冬の間に動けなかった兵の身体も鈍ってる。

 それでもこのタイミングで侵攻を始めたという事は、マモラスは冬が始まるよりずっと前、恐らくはルパンダがシグジアと戦争をしてる頃から、カシューシアへの侵攻を計画して密かに準備を進めていたんだろう。


 カシューシアに攻め込んだマモラスの軍は瞬く間に国土を占領していき、応援要請を受けたルパンダが兵を送った頃には、既にカシューシアの七割がマモラスの手に落ちていた。

 こうなるとルパンダが応援の兵を送っても、残る国土を守るのが精一杯で、既に占領されてしまった場所からマモラス軍をすぐに追い出す事は難しい。

 単純な国力を比較するなら、ルパンダはマモラスに勝る。

 だからこそルパンダはこれまでカシューシアに頼りにされていたのだけれど、今回は準備の量が違ってた。


 ルパンダが追加の兵を送るために募兵を行い、食糧等を集めたりして、戦争の準備をしっかりと整えたなら話は変わるが、それには幾らかの時間が掛かる。

 カシューシアの七割を占領したマモラスが、またカシューシアを囲む他の二国が、それを黙って待つ訳がない。


 実際、この報せを受けたバーバラント王国は、即座に兵を集め始めたという。

 兵力を背景にマモラスと交渉するのか、それともカシューシアの地に攻め込み、それを我が物としてしまう心算なのか、そこまではわからないけれど、この戦いに干渉しようとしているのは間違いがなかった。

 つまりカシューシアの地は、ますます混乱する筈。


 しかしそうなると、北西部の他の国々も黙っている訳にはいかなくなる。

 他国の戦争中は、その背を狙う格好の隙だというのもそうなんだけれど、当事者であるカシューシアや、それに関わるルパンダ、バーバラント王国という国々が、リャーグへの道を抱える国だというのが、大きな問題なのだ。

 カシューシア、ルパンダ、バーバラント王国の地で戦争が起きれば、リャーグへ続く街道の使用が難しくなり、人や物の移動が著しく減ってしまう。

 そうなると人の出入りによる税の収入や、運ばれてくる食料が減ったリャーグが、その穴を埋める為に略奪活動を始める恐れがある。

 去年のリャーグは不気味な程に動きがなかったらしいけれど、街道からの収入が減れば黙っている筈がないというのが、この報せを受けたダストリアの人々の反応だった。


 うーん……、流石にこれに関わるのはナシだ。

 あまりに状況が複雑すぎて、どうなるのかが全く読めない。

 今から動いてどこかの軍に参加をしても、話し合いだけでスパッと争いが終わる可能性もある。

 恐らくマモラスの狙いはそれだろう。


 戦いが長引けば、その発端であるマモラスは北西部の国々の反感を買うから、得られる物を得れば、この戦いは早急に終わらせたい筈。

 バーバラント王国も、口を挟む事でカシューシアの地の一部を管理する権利を得たがると思われた。

 けれども急に国土を占領されたカシューシアがそれで納得できる訳もなく、……そうなればルパンダがどこまで本気で戦う気があるか次第か。

 ルパンダがやる気であれば、マモラスやバーバラント王国の思惑は外れ、戦いは大きく長引くかもしれない。


 緩衝地帯を守りたいだけのルパンダに、カシューシアの全土を取り返すメリットはあまりなさそうだが、……ルパンダはシグジアとの戦いに、力を温存しながら勝利してる。

 勝利の味を知り、その余韻も残る今なら、ルパンダの民意は次なる勝利を求める可能性が大いにあった。


 だから、本当にこのカシューシアを巡る戦いは、どうなるかが読めない。

 首を突っ込むには、あまりにリスクが高いだろう。

 仮に参加するにしても、また来た道を戻らないといけないし。


 また道の問題もある。

 どうせ軍に参加をするなら、ルパンダで軍に参加をするのが最も良いが、ここからルパンダは、まぁまぁ遠い。

 しかも道は、カシューシアを占領したマモラスに塞がれてしまっていた。

 そうなるとルパンダには、カシューシアを迂回しなきゃいけないけれど……、面倒臭いにも程がある。

 故に今回の戦いには、首を突っ込まないのが正解だ。


 だけど、いよいよ、北西部の混乱も大きくなってきた。

 この戦いの影響は、カシューシアの近辺に収まらないだろう。

 僕らが北西へ向かって進めば、リャーグにより近づく。

 リャーグに近い国々は、今回の件で動くかもしれないリャーグを警戒し、少しでも戦力を集めようとする筈だ。


 多分、仕事は幾らでもある。

 それはつまり、リャーグを相手にするって意味ではあるんだけれど、避けて通れる相手じゃない。

 攻められる側の国々だって、長くリャーグの相手をしてきてるんだから、何らかの対処法は持ってるだろうし、場合によってはそれを学ぶ事もできる筈。


 もちろん平和にリャーグまで辿り着けるなら、それはそれで構いやしないのだけれども。



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