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僕は乱に身を立てる  作者: らる鳥
二章 戦争と大男

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 闘技場を訪ねると、最も近くに闘技会が開かれるのは他国だったので、僕は次に軍の施設を訪れる。

 最初は、他国の出身者が軍の施設を訪れてきた事に、幾らかの警戒心を抱かれたが、ロンダの町で得たメダルを出し、僕の経歴やラドーラの町で傭兵として賊退治に参加した話をすれば、その態度は軟化した。


「すまんな。今はちょっと、そう、お前さんも参加したラドーラの町の件があってからな、軍も他国人には少し神経質になってるんだよ。だがメダル持ちがうちの国の為に戦いたいってんなら、そりゃあ歓迎するよ」

 応対をしてくれた他よりも少しばかり身形の良い兵、恐らくはここの小隊長が、僕に向かって笑って言う。

 最初の、警戒してた時と比べると、メダルを出した後の態度の落差にちょっと驚く。

 警戒する事自体は、戦争が近ければ他国のスパイも警戒するだろうし、仕方のない話ではあるのだが、それにしてもメダルの効果が高すぎる。


 準優勝でもこの扱いか。

 今更ながらに、優勝を逃した事を惜しく感じてしまう。

 でもゲアルドには勝てなかったしなぁ……。

 まぁ、仕方ない。


「どうせ手柄を立てるなら、少しでも縁のある、世話になった国が良かったので。武で身を立てる旅の最中なので、長居できるかはわかりませんが……」

 僕がそう口にすると、小隊長の笑みは深くなる。

 戦の間だけでも兵士に加われば、それで十分なんだろう。

 以前に剣術等を教わった教師が言っていたが、腕のいい戦士が陣に加われば、その当人の強さ以上に、周囲の力が増すそうだ。

 戦場では、武器を使う技術や腕力以上に、他と足並みを揃えて的確に動き、崩れぬ事が求められた。

 強い戦士が陣に加われば、その動きを参考にして周囲が的確に動き、強い戦士を心の支えとして粘り強く戦う。

 果たして僕が、そんな風に周囲に影響を及ぼせる程の戦士なのかはさておいて、メダル持ちの参加をこんなにも歓迎するというのは、そうした期待が掛けられているのかもしれない。


「ドレアム人は義理堅いな。あぁ、急に前線で離脱されたりすると少し困るが、キリのいいところまで居てくれたら問題はないさ。どうせそういう奴はこの先増えるんだ」

 小隊長はもう近く募兵が始まる事、つまり戦争が近いと隠す様子もなく、僕に対してそう言った。



 僕はそれから、おおよそ二ヵ月をソルダニルの兵舎で訓練を受けながら過ごす。

 訓練の内容は決して軽いものではなかったが、僕もこの手の訓練には慣れがあったから、どうにか周囲に舐められるような醜態を晒す事なく、逆に一目置かれながら切り抜けられた。

 ちなみに戦争の為の兵士募集、募兵の高札は、僕が兵舎で過ごし始めた一週間後に、王都の広場に立てられたらしい。

 そして数日遅れで王都周辺の村々や、他の町にも募兵官が向かったそうだ。


 つまり今回はルパンダが攻め手側で、じっくりと戦力を揃えてから、シグジアに対して攻め込む心算なんだろう。

 最初の一ヵ月で多くの兵が集まった様子だったが、国軍は更に一ヵ月を新兵の訓練に使い、彼らに隊列を組み、行軍ができるように叩き込む。


 軍は、維持すれば維持するだけ、多くの金と食料を消費する。

 また周辺の村々や町から人手を集めている為、生産力の低下も無視できない。

 それでも訓練に時間と労力、物資を注ぎ込むあたり、……今回の戦に対するルパンダの本気が伺えた。


 二カ月後、王都を出発した国軍の数は四千。

 およそ千は常日頃から国に仕えてる兵で、次に二千五百は臨時雇いの、いわば雑兵だ。

 本来ならば僕も後者、雑兵に入るのだろうけれど、いち早く軍に参加していたからか、半ば前者のような扱いを受けている。


 最後に、王都から戦場となるシグジアまでの兵站を輸送し、或いは物資の調達を行う兵が、これも元より王国に仕えていた五百。

 これはルパンダという国の規模からすると、かなりの大軍になる筈だ。

 流石に王都や他の守りを空にはしていないだろうが、……これだけの兵力を注ぐ以上、シグジアとの戦いも、軽く攻めて終わりにする心算はないんだろう。

 ルパンダが何故、そこまでシグジア攻めに力を入れるのかはわからないが、或いは、僕は今回、国の滅亡をこの目にする事になるのかもしれない。

 少なくとも、味方する側として、ルパンダを選んだ僕の目は、まだ確実な正解が出た訳じゃないけれど、おおよそ正しかったのだと思える。

 もしも、シグジアに味方していたら、この大軍を相手にしなきゃいけなかったのだ。

 考えるだけでもゾッとした。


 本来なら、ラドーラ領の一件は、これまでにもよくあった小競り合いに過ぎなかった筈。

 少しばかり小競り合いの規模は大きめだったけれど、ルパンダがここまで準備を整えて攻め込む程の話じゃなかった。


 では何故、ルパンダはこんなにも本気で攻め込もうとしているのか。

 恐らくそれは今の西方国家群が、どこであっても抱えてる問題、セル大帝国の残した爪痕と無関係ではあるまい。

 大規模ではあったが防衛戦であるが故に、十分な恩賞が与えられなかった事による不満や、逆に国が恩賞を与える為に無理をして、経済的に傾いたり、そうした事があちらこちらで積み重なっていれば、民衆も目に見えぬ不安を抱く。

 急速に、西方国家群の情勢は不安定になりつつあって、ルパンダは経済を立て直す為、或いは国内の不安の目を外に向ける為、シグジアを本気で攻めると決めたんじゃないだろうか。


 いずれにしてもこの戦いは、僕にとって学びの多いものとなる筈だ。

 もちろんそれも、生き残れればの話だけれども。

 



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