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地球の管理者:異星文明に選ばれた元研究者  作者: azureimf
恒星間航行級フリゲート艦「ネイビーゲーザー」 準司令 篇
58/120

D-DAY+47 2027/2上旬 サイドストーリー:ポルポ・カラマリの宴

読まなくても本編の進行への理解には支障出ないので、興味ない人はパスしてOKです

ポルポ・カラマリ艦隊へ海産物の提供を決めたp.adminは

彼らの食生活の質を即刻改善させる為、提供を合意した当日の朝から早速S子と共に動いた


楽園島周辺に水揚げられる海産物の種類は限られるため、

S子は早速いつも取引していた日本の漁業協同組合に連絡して、いろんな海産物のを用意してもらった

おもてなしする意味合いもあったが

最初は地球のいろんな種類の海鮮を食べていただかないと、どれか好きどれか嫌いも分からないからだ


S子は明言しなかったが、「尊い客様達約2万人に日本の質の良い海産物を直ぐに提供したい」と言った

組合長も最初は、「楽園島の人口は1万程度と聞いて今まではそこまで日本の海産物を仕入れなくて」とちょっと驚いたが

直ぐp.adminの裏にある「勢力」を思い出し、大急ぎで関係各所に連絡して在庫ある良い海鮮を仕入れに奔走した

そして儲け度外視で仕入れ価格で楽園島に提供した


そしてS子の指示で、出荷する海鮮は作業者が手に取って選別することで、小さなタコやイカの混入を徹底的排除した

日本から仕入れたのは、伊勢海老、タラバガニ、ズワイガニ、毛ガニ、車海老、甘エビ、ホタテ、カキ、ハマグリと諸々の貝類

魚類は鯛、タラ、マグロ(切り身)、カツオ(切り身)、ウナギ(蒲焼の真空パック)、アナゴ(白焼)…等々日本人目線からやや質が良い食べやすい魚を用意した

一気に全種類を食べさせるのは不可能とS子も承知していて、最初は王道コースで行こうと決めた

組合長は大急ぎで走り回る中、噂を聞いた農林水産省も飛んできて、大臣こそは来てないが次官がS子に今回の買い付けについて色々聞いてきた


S子:

「だから日本の魚を食べたことない尊い客2万人よ、これ以上は言うことないよ、ちゃんと適正価格で買うつもりなので不当廉売はしないでね」


農林水産省次官:

「承知しました、もし日本政府が力になれるところがあれば是非手伝わせてください!」


S子が買い付けた海産物は異星ドローンのワープ転送ですぐ楽園島より北の12時方向の海上プラットフォームまで転送された

海鮮は鮮度が命のため、海上プラットフォームで出現した海鮮を積む箱は、間を置かずに「ネイビーゲーザー」のシグマ副艦長によって艦内に転送した上で数量を確認し、さらに別のポルポ・カラマリの宇宙船に転送した


「ご馳走は平等が大事」と思ったS子は、少なくとも全種類の海鮮は一人一匹以上は食べてほしい、伊勢海老もカニも同様です

ホタテ、カキなどの貝類は一人3個で魚はサイズや量から見て、少なくともステーキサイスの一切れが食べれる量を用意した


そして大量の海産物とともに、日本の海鮮料理に使われる調味料もたくさんつけてくれた

大量のバター、岩塩、昆布だしの素、醬油(少量)、ポン酢、ネギや大根おろし、わさびなど諸々

料理器具にも七輪、無煙炭、金網、鍋、取り皿、フォーク…などを2万セットくらい提供した

S子からはさすがにここまでサービスでついてくるのはおかしいと思い、調味料も調理器具も適正価格で買い付けた


さらに、農林水産省次官が「日本政府からのお土産」と言い、大量の大吟醸やビール、焼酎を提供した

S子は「お酒はポルポ・カラマリから見れば毒なのでは?」と心配したが、とりあえず受け入れた


***


S子の買い付けからおおよそ数時間後、大量の海鮮はポルポ・カラマリ艦隊の各船に積み始めた


ポルポ・カラマリ艦隊の二番艦艦長を務めるシータは、アルファ提督に疑念を申し上げた


シータ艦長:

「提督、これはもう人類文明からの賄賂と見て断るべきではないか?」


アルファ提督:

「私はp.adminという人類を3年※近く見てきたから、彼に限っては決して賄賂する人間ではないと信じよう」

「彼は今まで自分と幹部の生活の質を求めたように、我々の生活の質も配慮してくれたであろう」

「今は彼の純粋な善意を享受すべきではないか?今は宴だ!」


※Azureがp.adminになる約1年前から、ポルポ・カラマリ文明から候補者リストに選ばれた


シータ艦長:

「しかしこの『大吟醸』という人類の飲み物は、医療室の簡単な分析では自然発酵によるアルコール成分が含まれる、私も地球の飲酒文化は知っていますが流石に我々は…」


アルファ提督:

「なに、このくらいのアルコール濃度は毒とも言うのか?地球の日本文化では『郷に入れば郷に従え』という言い方がある、これはカルチャーショックと思って体験せよ!」


シータ艦長:

「承知しました…」


ポルポカラマリ艦隊には料理番の人はいないが、故郷で料理した事ある乗組員は日本側が提供した説明のイメージ図に従い、調理器具といろんな調味料も使ってくれた、

2万人が腹ペコで待っていたので、各船の料理担当の人はやや雑な日本海鮮料理モドキを大量に作った

最初は簡単に塩焼き、バター焼きと茹で

次に昆布だしを使った鍋もつくった、醬油にも少量に入れて、ポン酢やネギやおろし大根を入れてソースも作った

つくり方は日本人からみれば雑ですが、ポルポ・カラマリ人は律儀的に「日本式の調理方法」で海鮮を食べた


アルファ提督:

「地球のカニはこれほどとは!実に美味だ!」

「この大きい『伊勢海老』バター焼きは実に口ごたえが良い、濃厚で香ばしい!わが星では存在しない味だ!」

「醬油という豆発酵由来の調味料は不思議な味だが、不味くはない、貝類に似合うと説明されたから引き続き味の反応を検証せよ」


シグマ:

「この『昆布だし』のスープは海の甘味を見事に濃縮してくれた、我々主食の海藻と似たような植物ですが味はまるで違う、実に美味しい」


シータ艦長:

「この大吟醸という人類のアルコール飲料は、我々ポルポカラマリ人の中枢神経の伝達を阻害し、反応速度や確かさは著しく低下する」


アルファ提督:

「それこそがアースカルチャーだ、飲みすぎないように自制せよ、我々の神経システムは人類より敏感から故」


シータ艦長:

「承知しました…ではこの『ビール』をもう一本くらいで…」


シータ艦長はお酒について反対しながらも、自分が一杯から一杯飲み続けてた風景は滑稽だった


シグマ:

「ところで、お二方はすでにアルコールの影響により酩酊状態と見受けられる、海鮮は良いですがお酒はほどほどに…」


4人が談笑している中、アルファ提督は何かを思いついたように、急に手を止まった


アルファ提督:

「わかったぞ!なぜ地球に星の海を渡る程度の技術まで発展しなかった原因を」


シグマ:

「それはなぜでしょうか?提督殿」


アルファ提督:

「地球人は『個』の幸福や生活の質を追求するあまりに、リソースが分散しすぎたからだ!」


シグマ:

「これはまだどういう…」


アルファ提督:

「例えば地球の食べ物文化は今回の宴で思知らせた、カルチャーショックを除いても地球人が調味料への拘りはは我々より強いのは明らかだ!」

「p.admin殿の『ゲーム』の話もまだ、彼らは人類の繁栄の為ではなく、『娯楽』を求める執念がコンピューターの発展に繋がった」

「だから個人個人が自分がやりたい方向に時間とリソースを費やした結果、物理学や材料科学といった、本当の『力』につながる科学はそこまで発展しないんだ!」


シグマ:

「言われてみたらそうなりますね、人類は興味深い種族だ!私から見てp.admin殿は人類と我々の間くらいの理解者と認識している」


アルファ提督:

「そうだ!p.adminは個の幸福も追求し、本当に大事な人類の利益も重視する、そしてルールを守り手続き的正当性も拘る、珍しい人類個体だ!」


シータ艦長:

「しかし彼は準司令になった今、ルール上ではもう『人類』ではなくなるはず…」


アルファ提督:

「シータ君、あまり表面的なルールに縛られるな、本当に大事なものは見えなくなるぞ!あの『T先生』が言った『木を見て森を見ず』のようにな」


p.adminとT先生の最初の会話は、ポルポ・カラマリ艦隊によってすべて記録されていた


シータ艦長:

「承知しました…反省します」


この日に、ポルポカラマリ艦隊の全乗り組み員2万人が、星の旅に出た10年弱以来、一番のご馳走を堪能した



補足:


p.adminも著者本人も決して全体主義論者ではありません

むしろ「究極な個人主義」である「平和的な反政府主義」を支持しています

物語中のp.adminは人類全体の為に動きますが、これはあくまで「個人の自由」が完全に保障される前提に限る

個人を犠牲して全体の利益につながるような介入は決してしない


例えば文系の学部生全員を無理やりに理系に移籍させる方が「国益」になるかもしれないが

ある国がこれを強行しようとしたら、p.adminは逆に阻止してくるだろう

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