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DAY 0 2025/3上旬 全ての始まり

Azureは妻のW子と一緒に、茨城県つくば市中心部からやや離れた所の一戸建て住宅に住んでいる

AISTの常勤研究員に成れなかった彼は現在、フルーリモートのITフリーランスエンジニアとして働いている

彼はコロナ禍中期の2021頃にフリーランスに転身し、2025年まで何だかんだ3年半のフリーランス歴を積んできた

社会的な名声も肩書もない仕事ですが、給料だけがポスドク研究員時代よりは恵まれた

年収400万のポスドク研究員と比べて、ITフリーランスは税金体制は違うものの軽く800万を超えていた

さらにフルーリモートや週4勤務で、体力的にも精神的にもAzureはフリーランスの仕事を通して段々余裕が出来て、趣味や自分がやりたいことに使う金も時間も手に入れた


そんな中、2022年でロシアによるウクライナ侵攻が始まった

Azureは最初からウクライナを支持し、しかし一介のエンジニアは出来ることは少々の金額の寄付しかできなかった

彼は日々戦況のニュースやまとめを欠かさずにチェックしても、内心は何もできなかった自分に苛立ち、そして「出来る事何て有るはずもない」を悟り、静かに「現実」を受け入れた

2025年の時点で、ロシア・ウクライナ戦争による軍人、一般民衆の死傷者は軽く100万人を超え、今でも一日1500人程度で増え続けた


そして、このような日常の中に、一つのタブレット端末が彼の目の前に「出現」した

「出現」というのは文字通りに何も無い所から表すを表現する言葉、タブレット端末はいきなり郵便受けに置かれた訳でもなく、誰かが彼のテーブルにそっと置いた訳でもなく

何もない仕事部屋の空中に「出現」した

「出現」したタブレット端末は重力で落ちる訳もなくそのまま絶妙にバランスを取った風船のように空中に浮いている

タブレットPCを呼ばないのはタブレットには黒い液晶が見えないけど、何かしらの装置に見えたから「端末」と呼んでいる


Azure:

「まさか反重力!?」


彼は最初自分が夢や幻覚を見てるかを疑ったが、やがて「夢なら明晰夢として楽しめなきゃ」と思い端末を手に取った

端末はグレーで3mm位厚みのある金属板で画面やボタン類は一切見られない、軽さも感じなくまるで空中にあるゲーム世界のオブジェクトを「移動」するような感触

彼がタブレットの中心部分を触ると、金属板からホログラムの様な立体表示が飛び上がり、何もない室内の空気中に横長約50インチが画面が立ち上がった


Azure:

「立体ディスプレイ…?煙に投影するのか?レーザーで空気中をプラズマ化して発光しているか?」


Azureは職業柄立体ディスプレイ技術に詳しい、実際にT大学大学院在籍中にも回転するLCDで再現しようとした

2025年現在では疑似的な立体ディスプレイ技術はいくつも存在するが、どれも本当の意味の立体ディスプレイと言い難く、詳しい説明をここで説明するのは割愛させていただく、興味がある人はぐーぐればそれなりの情報が得られるでしょう


問題は「何もない空気中」にスポット光源や、マトリックス化した面光源や、テクスチャだけを発光する可変形状の立体光源を作るのはほぼほぼ不可能の事

某大物のSF映画のライトセーバーも、製品の玩具としては本当の意味の「光だけのブレイド」を作れないのも同様、青い炎を噴射するのは論外だが


しかし彼の前に出た立体ディスプレイは本物だ、手を触っても煙に投影するの気配もなく、手で押さえられた背後にもちゃんと表示される

そして、画面には古い緑色のCGAディスプレイを思わせるUIがあって、ドローンかUFOをアイコンとして沢山表示されて、地球の世界地図的な物もあって、UIには英語だがそこに沢山の未知なる情報が表示されていた


Azure:

「これは何なのか?何のユーザーインタフェース(UI)?」


謎の声(日本語):

「解!この端末はポルポカラマリ文明の情報通信タブレット、こちらのUIはあなたの管理下にあるドローンの運行状況や現在位置が表示されている」


次の瞬間、立体ディスプレイのUIも日本語に切り替えた

Azureはびっくりした、音の出所を慌てて探している…しかしタブレットから音が出た訳でもなく、空気中音が発生したように聞こえた

ただし立体音響技術は立体ディスプレイより実現しやすく、これくらいは驚く程でもないと思った


Azure:

「音の出所を教えてくれ、そして何の目的で俺に声を掛ける事も説明してくれ」


謎の声:

「解!音の出所は情報通信タブレットによる自動音声応答です、Azureをprovisional admin(仮の管理者)の権限を説明するためにアクティブに自律動作し、機能を説明した」


信憑性はともかく、音声説明をざっくりまとめると、Azureが仮の管理者(provisional admin、略してp.admin)の権限を得て、異星文明ドローンを最大100万機の操作権限が得られた

おとぎ話のような事だが、試しに「ドローンを見せろ」と言ったら「所在場所にドローンが侵入するのは建築物への損傷と伴う、実行しますか? YES/NO」とUIに日本語のメッセージが出てた


代わりに自宅の庭に行って同じ命令を出すと、庭の2M高さの空中にいきなり直径1Mの円盤型のドローンが光学ステルスを解除し出現した

メタリックな表面で噴気孔やジェットエンジンらしき物は見当たらない


Azureはドローンをじっくり観察し始め、スマホでドローンを周辺を回りながら録画したが、直ぐ彼は事の重大さを気付いた


「アメリカや世界中の衛星が見てるかも知れない!」


Azureは「ドローンをステルスに戻して!」叫んだ直後、円盤状のドローンがまた形跡もなく消えてなくなった

彼は元々ドローンがいた場所に手を伸ばして触ると、何もない空中に金属表面に当たって、さらに触ると円盤の縁にも触感で確認を取れた


Azure:

「本物の、光学ステルス…!?」


2025年現在、電波反射的な意味のステルスはある程度達成できるが、SF映画意味の光学ステルスは実現されていない

かつて2chに「光学迷彩」的な学術研究もあったが、カメラ視点または一方向視点しかカバーできない疑似的カモフラージュに過ぎない

光の方向を変える事自体は古くから応用されており、例えば一眼レフカメラの光学フィルターは反射ミラーやペンタプリズムを利用したことで、レンズから取った結像を光学ファインダーに表示させている


しかし、光と結像の特性上、完全ステルスを達成するには、あらゆる方向から来た光を本体をバイパスして本来正しい方向に反射させる必要がある

それはミラーを用いた設計上ではほぼほぼ不可能、ただ一つの例外を除いて、重力


* 『重力場操作』


詳細の原理を省くか、ブラックホールみたいに光さえも曲がれるほどの重力場で光を曲がり、次にホワイトホールのように本来の方向に放つ事ができれば、理論上観察者の目には完全ステルスに見える

ただし、これほど強い重力場ではAzureは手を伸ばして触ると無事に居られるはずもない、謎だ!

確認できるのは、タブレット端末やドローンの持ち主は、人類文明のテクノロジーよりはるかに進歩した異星文明に違いない


彼は急いで部屋に戻り、窓から近所の動きを観察し始めた

思えば偶々衛星に映られても、視点から見れば地表近くにある1Mサイスの金属円盤が脅威に判定される可能性が皆無

衛星も軌道特性上写真の繋ぎ合わせでずっと一ヶ所に対して録画している訳ではないので、Azureはようやく安心できた


そこから、ドローンを命令して部屋内でできる事を確認した

・重力場操作で物体の浮遊

・重力場操作で金属の切断

・立体ホログラムの表示、そしてタッチによる空中操作

・ホログラムを用いたパノラマディスプレイで空中待機中のドローンの周辺風景を写す

・ドローンを部屋内に入れ、リビングの床を起点にで半径50cmの極小シールドを展開させ、懐中電灯、レーザーやナイフなどで試す


ここまで来て、Azureが手に入れた物は「本物」と確認できた

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