D-DAY+162 2027年6月上旬 国交締結への準備
客室のドアの外に控えていた使用人が、p.adminとS子に声をかけました
使用人:
「朱雀陛下、さや妃殿下、食事会の準備は済んでおります。チャールズ国王陛下からは、服装は気にしなくてください、との伝言を控えております」
p.adminはそれを聞いて、直ぐに返事した
p.admin:
「では、2分ほど頂きたい」
p.adminは使用人に返事をしてドアを閉めると、すぐさまスーツコートを脱ぎ、ネクタイを引き抜き、パンツも持参していたカジュアルなものに着替え始めました
S子は子の様子を見て、信じられないような表情で口を開いた
S子:
「あんたはそんなにスーツ嫌いなの? 国王陛下からの伝言があったとはいえ、こんなに急に脱ぎ出すなんて……」
p.adminは素早く着替えを終え、使用人に案内されてアットホームな雰囲気のダイニングルームに入りました
p.adminとS子以外の全員(国王陛下ご夫妻、皇太子ご夫妻、大典侍、外務大臣)は既に笑顔で着席していました
p.adminとS子はチャールズ国王陛下ご夫妻の対面の席に座りました
チャールズ国王陛下:
「朱雀殿、ようこそ。席についてください」
p.admin:
「国王陛下、遅れてしまい、大変失礼しました」
チャールズ国王陛下もまた、カジュアルなシャツを着用しており、堅苦しい雰囲気はありませんでした
前菜が運ばれた後、国王陛下がp.adminに話しかけました
チャールズ国王陛下:
「朱雀殿のスーツ嫌いな気持ちは、最近分かってきた気がする……私も最近はポロシャツを着用する場面が増え、確かに動きやすいし、肌触りも良い」
チャールズ国王陛下の言葉に対して、p.adminはあえてやや軽めの口調で返事した
p.admin: 「恐縮です。私は体が大きいので、伸びる服じゃないと窮屈に感じてしまいますから……かつては日本の商社勤めの時はスーツの着用は必須で、正直毎日は苦痛でした。『いつかは自分の意志で服を選べる仕事なら』と、その時から強く思った……しかし、今になってもそうならなかった時もある……ハハハ」
p.adminの冗談めかした自己評価を聞き、王太子殿下が敬意を込めて口を開きました
王太子殿下:
「朱雀陛下は舎弟の性格と少しだけ似ているかもしれないですね。ただ、陛下は体制を尊重しながらも、自ら敢えて困難な目標に挑んで達成される所は、とても輝くように見えます」
p.admin:
「王太子殿下、私はそこまでの功績はなく、単なるエンジニア上がりのおっさんですよ」
p.adminの軽めの返事に対して、S子はマナーを考慮しつつ感謝の意を述べた
S子:
「王太子殿下、お褒めいただきありがとうございます。主人はそのように見ていただけると、大変光栄に思います」
* 台湾風ちまきと皇后陛下の配慮
和やかな談笑が続く中、メインディッシュが運ばれてきました
皿の上には、イギリスの伝統料理であるフィッシュパイのようなものと、意外にも中華風のちまきが載せられています
使用人はp.adminとS子の前で、料理について説明した
使用人:
「こちらは台湾風の卵黄入り豚肉ちまきとなっております。ロンドンの老舗中華料理レストランから仕入れました」
イギリスの方々にはナイフとフォークが用意されていましたが、p.adminとS子の前には箸が置かれていました
p.adminは箸でちまきをほどき、一口を食べました
p.admin:
「美味しい」
この素直な感想を聞いたカミラ皇后陛下は、にこやかに勧めました
カミラ皇后陛下:
「ここバッキンガム宮殿にも、中華料理に詳しい料理人を一人雇い入れましたので、もし夜食などでお召し上がりになりたい料理がございましたら、遠慮なく使用人に知らせてください」
p.adminにとってこれは嬉しい情報でしたが、その反面、皇后陛下が「今日は泊まってください」と遠まわしに言ってきたことに他なりません
p.adminはR子との「明日の朝までには戻る」という約束を思い出し、複雑な気持ちになりました
* 国交締結日程の提案
メインディッシュが終わりかと思いきや、さらにステーキが乗った皿とふかふかのバゲット(パン)が運ばれてきました
いつもの食事会より量が多いと感じたp.adminは、ここにいる国王陛下ご夫妻や王太子妃殿下が若返り治療を受けており、より多くカロリーを摂取して体組織の再生を促進すべきことを思い出しました
二つのメインディッシュが終わり、デザートのケーキと紅茶が運ばれてきたところで、外務大臣が真剣な顔で切り出しました
英外務大臣:
「朱雀陛下、イギリスと楽園島との国交締結式典は、一週間後に設定する方がいかがでしょうか?」
p.adminはやや急な話だと感じましたが、自身としても早く国交締結を済ませたかったため、S子と一瞬アイコンタクトした後、返答しました
p.admin:
「こっちにも色々とスケジュール調整が必要だ。一週間後からの三日間のいずれの日であれば可能と思います。ただ、事務方と外交方の幹部にも連絡が必要ですので、対応可能な候補日は後ほどお伝えします」
英外務大臣はp.adminの回答を聞いて大喜びし、すぐに提案に同意しました
やがて食事後のティータイムも終わり、S子が午後の治療について確認を取りました
S子: 「王太子妃殿下、午後の治療は15時から始めてはいかがでしょうか?」
王太子妃もそれを同意し、UTC 13:30をもって、昼の食事会は開きとなりました
#### 「国益」より「正義」
昼食会を終えて客室に戻ったp.adminは、外務大臣から打診された国交締結の日程について、外交事務を取り扱うN君へ連絡を入れることにしました。しかし、現在の楽園島は深夜3時前
p.adminは異星タブレットを操作し、EメールやSMSではなく、ポルポ・カラマリの量子通信を用いたホログラム・ビデオメッセージを作成することにしました。傍受のリスクを排除しつつ、相手の睡眠を妨げないための選択です
p.admin:
「システム命令:これから作成したメッセージはUTC+13(楽園島時間)AM 9:00にて受信者に通知」
p.admin(N君へのホログラムビデオメッセージ):
「N君、イギリス側からの打診で、一週間から10日後の間に国交締結式典を行うことに条件付きで同意した。幹部たちのスケジュールを調整し、問題ないか知らせてほしい。以上だ」
p.adminがリアルタイムのホログラム通信ではなく、あえて通知の時刻の指定してビデオメッセージを送る事にした
録画を終えたp.adminを見て、S子は少し意外そうな、それでいて感心したような表情を浮かべました
S子:
「あなたは本当に自分のルールを徹底しているわね。普通、政府の長や大使クラスなら『国益優先』で24時間待機が基本なのに。まるで定時定刻のサラリーマンのように部下を扱うのね」
p.admin:
「仲間に無理を強いるのは、人命救助や重大な災難の時だけでいい。元首になった今でも、全体主義を嫌う考えは変わっていないよ」
* 「国益」よりも「個の生存」
p.adminは窓の外のロンドンの街並みを眺めながら、自身の信条を言葉にしました。
p.admin:
「今回と全く関係ない例だけど、例えば『国益』を持ち出されたら、私は間違いなく個の利益を勧める。特に自分や家族の生存のためなら、なおさら正当性は強い。国のために犠牲になれと言うより、『逃げて生き延びろ』と言いたいんだ。私は幹部に忠誠なんて求めていない。求めているのは『善良と正義』だけだ」
S子:
「理想論が過ぎる気もするけど……それがあなたの本質で、ポルポ・カラマリに選ばれた理由でもあるのでしょうね。納得できるわ」
* 医療リソースの限界と「責任」の所在
話題は、今後の医療ベイの運用という現実的な問題へと移りました
p.admin:
「イギリス、日本、そして今後はフランスからも設置要請が来るだろう。君にばかり負担を強いて申し訳ないと思っている。私達家族だけでずっと回せる規模じゃない」
p.admin:
「医療ベイの操作権限は、いずれ信頼できる人たちに任せるしかない。S子も一緒にその候補を考えてくれ」
S子は苦笑いして答えた
S子:
「やってみるけど……貴方の人選びの基準をクリアできる人なんて、元々少ないわよ。もしかしたら、私だって失格かも?」
p.admin:
「そうですね、ポジティブすぎて野心が見えすぎるからNGだもんね(笑)…あなたに連れられて楽園島が変な方向に進まないようには常に気を使っているよ」
S子は少し声を荒らげて
S子:
「あんた、よく言うわね! 私は私のやり方で貴方を助けるために頑張っているのを忘れなさいよ! もしかして私と結婚したこと、後悔してる?」
p.admin:
「後悔なんてしてないよ。君の本心が『善良』であることは知っている。君がいなければ楽園島はここまで来られなかった。感謝しているよ」
S子はふんと鼻を鳴らしましたが、表情は少し和らぎました
S子:
「……分かればいいのよ。でもね、貴方が選ぶ『善良で大人しい人』は事務方には適任だけど、国の運営には向かないわ。そこはある程度妥協しなさい。今回のSADAさんの件もそうだけど、間違った人を選べば、結局私たちが尻拭いをする羽目になる。仕事は先生たちに任せても、貴方が最終的な『責任』を取らなきゃいけないのよ」
p.admin:
「……それは覚悟している。『善良さ』だけが取り柄の人を選ぶと、彼らは目の前の患者を救うことに必死になりすぎてしまう。それは悪いことではないが、結果として楽園島が世界規模で見れば一握りの人しか救えない『ただの駆けつけ医療チーム』で終わってしまうんだ。これでは何も変わらない」
S子:
「私が言いたいのはまさにそれよ。貴方が世界にもたらしているのは、ほんの少しの救済と、実効果とは比例しないほど大きな『幻の希望』よ……残酷な話だけどね」
二人が楽園島の今後に関する深い話し合いを終える頃、時計の針は午後3時を指そうとしていました。王太子妃殿下の治療の時間が近づいています
#### 王太子妃殿下の治療と配慮
午後3時、p.adminとS子は再び医療ベイが設置された応接室に入りました
そこには、すでに病院着に着替えた王太子妃殿下と、寄り添う王太子殿下が待機していました
医師C(王室医療チーム):
「朱雀陛下、さや妃殿下。王太子妃殿下の状態ですが、国王陛下と同様に血管の状態や末梢神経の反応に劇的な改善が見られます。前回の処置が極めて有効に作用しています」
医師Cは詳細なデータを説明した後、少し言いづらそうにp.adminへ視線を向けました
医師C:
「……それで、これから医療ベイのスキャン機能を用いて、妃殿下の全身の血管状態を詳細に確認したいと考えております。精査のため、誠に恐縮ながら男性である朱雀陛下には、一時退室するようにをお願いしたいのですが……」
p.admin(朱雀 椿):
「ああ、もちろんです。デリケートな検査ですから、配慮が欠けていました。失礼します」
王太子妃殿下:
「さや妃殿下、お世話になります。よろしくお願いいたします」
p.adminはS子に後を任せ、使用人の案内で隣の別室へと移動しました
* 外務大臣との極秘交渉:真の「報酬」
別室には、英外務大臣と、昼とはまた別の外交官が待機していました
重厚な革張りのソファに座ると、外務大臣が静かに切り出しました
英外務大臣:
「朱雀陛下。ロイヤルファミリーの治療に対する『報酬』について、お伺いしたいと存じます。陛下は、どのようなものをご所望でしょうか?」
p.admin:
「金銭に絡む報酬は、妻のさやの担当分野でして。彼女に相談しないまま私が決めると、後で凄く怒られるんですよ(苦笑)」
英外務大臣はp.adminの回答を聞いて穏やかに補足した
英外務大臣:
「朱雀陛下にそのような失礼な金銭の話を持ち出すつもりはございません。あくまで、『陛下個人』としてのご要望をお伺いしたいのです」
p.adminは少しの間、沈黙しました。先ほどS子と話していた「個の利益」という考えが頭をよぎります
p.admin:
「……報酬のために治療したわけではありませんが、強いて言えば。万が一の事態が起きた際、私と私の家族がイギリスの保護を受け、避難生活を過ごせる場所が欲しい」
この提案の重大さに、外務大臣の顔色が一変しました
英外務大臣:
「それは……もし貴国、あるいは陛下が力を失った場合に、我が国が敵対国や勢力から陛下や妃殿下などのご家族を保護する……つまり、『永久的な政治亡命と安全保障』を約束せよ、という意味でしょうか?」
お願いの本質を直ぐ理解した英外務大臣に対して、p.adminは静かに頷いた
p.admin:
「そうです。今の楽園島は力を持っていますが、永遠ではありません。私が求めているのは、金銭でも名誉でもなく、万が一があったときに家族の『将来』を過ごせる場所です」
外務大臣は深く息を吐き、姿勢を正しました
英外務大臣:
「朱雀陛下のご要望は、私一人の一存で決められる規模のものではございません。しかし、チャールズ国王陛下、カミラ皇后陛下を救った大恩人に対し、我々は精一杯の誠意を示さなければならない。政府内で、陛下の望みを叶えるべく、速やかに極秘で検討に取り掛かります」
* 治療の完了と合流
一時間が経過した頃、王太子妃殿下の治療が終わるタイミングで、p.adminと外務大臣は元の応接室に戻りました
S子:
「あ、お帰りなさい。王太子妃殿下の治療も無事に終わりましたよ。全身の血管、神経共に回復するように促進しました」
王太子妃殿下:
「素晴らしい体験でした。さや妃殿下、本当にありがとうございます。体が驚くほど軽くなりました」
王太子殿下も安堵した表情で妻の手を取り、p.adminとS子に深い謝意を述べました
p.adminは、S子がまだ知らない「イギリスへの亡命権」という重い外交カードを胸に秘めたまま、治療の成功を共に祝いました
#### 密室の契約と、語られなかった「保険」
全ての治療を終え、p.adminとS子は再びクラシックな客室へと戻りました。窓の外のロンドンは夕暮れに染まり始めています
S子は医療ベイのログを確認し、安堵の息をつきました
S子:
「お疲れ様。これでロイヤルファミリー主要メンバーの治療は完璧ね。さあ、あとは報酬の交渉だけど……さっき別室で外務大臣と何を話してたの? 私を外したんだから、よっぽど大事な話なんでしょ?」
S子は鋭い視線をp.adminに向けました。彼女の中では、数百億単位の報酬、あるいは貴重な利権の計算が始まっているようです
* 「金」より重い「聖域」
p.adminはベッドの端に腰を下ろし、静かに口を開きました
p.admin(朱雀 椿):
「報酬のことだが……ごめん、私が勝手に決めてきた。君が一番嫌がるだろうけど」
S子は眉をひそめてp.adminに質問した
S子:
「……まさか、タダでいいなんて言ったんじゃないでしょうね?」
p.admin:
「いや。金銭的な報酬は、君が今後イギリス政府と煮詰めればいい。だが、私が求めたのは別のものだ。『我々家族のイギリスへの永久的な亡命権と、イギリスという国家による完全な保護』だ」
S子の動きが止まりました。手に持っていたタブレットをゆっくりと膝に置きます
S子は沈黙の後、低い声で口を開いた
S子:
「……聖域、ということね。私たちが楽園島の力を失い、世界中から追われる身になった時のための」
p.admin:
「そうだ。今は楽園島は強すぎる。いつかこの力が失われた時、あるいは内部から崩壊した時、真っ先に狙われるのは私と君、そしてR子とW子だ。アメリカも中国も、我々の知識を求めて牙を剥くかもしれない。その時、イギリスという歴史と伝統、そして最強の諜報網を持つ国に、我々を『全力で守り抜く』と約束させる事にした」
* 賢明な「ワーストケース」の想定
S子はしばらくの間、テレビの真っ暗な画面を見つめていました。やがて、小さくため息をつきました
S子:
「……あんた、意外と執念深いのね。私は今の権力をどう維持するかばかり考えていたけど、あんたは既に『負けた後』のことまで計算に入れていたわけだ」
p.admin: 「君が言う通り、私は臆病なおっさんだからね。お台場のホテルで君と一緒に居た時に考えたんだ。この祭りはいつか終わる、任期の200年後なら安泰だろうけど、もし、数年後、もしくは10年20後なら保険は必要。その時、せめて君達を安全な場所へ連れて行けるようにしておきたかった」
S子は少し複雑な気持ち、でも穏やかな笑みを浮かべて口を開いた
S子:
「……バカね。それ、何千億円積んでも買えない最高級の保険じゃない。私への相談なしに決めたことは許さないけど、その『報酬』の内容については……合格点をあげてもいいわ」
S子はp.adminの隣に座り、その肩に頭を預けました
S子:
「外務大臣、顔を青くしてたんじゃない? アメリカを敵に回す可能性すらある約束だもの」
p.admin:
「ああ、かなり困惑していた。だが、国王夫妻と王太子妃の治療の代償だ。イギリスの誇りにかけて断れないはずだ。彼らはそういう義理堅さを重んじる連中だからね」
S子:
「ふふ、そうね。……さあ、少しだけ休んだら、今夜中に楽園島へ帰りましょう。W子とR子が待っているんでしょう? 彼女にも、あんたが『家族の安全』を一番に考えてるって伝えてあげなさいよ」
p.adminは頷き、ロンドンの街に明かりが灯るのを二人で眺めました
最強の力を持ちながら、最弱の時を想定した秘密の契約。それは、楽園島の元首としてではなく、一人の夫としてのp.adminの決断でした
#### 緊急事態と命の優先権
客室で休憩していたp.adminとS子の元に、急ぎ足のノックが響きました。ドアを開けると、そこには緊張した面持ちの使用人が立っていました
使用人:
「朱雀陛下、さや妃殿下。急ぎカミラ皇后陛下とL医師がお話をしたいと……今夜予定されていた晩餐会は、諸対応のため中止となりました。至急、応接室へお越しください」
二人が応接室へ向かうと、そこは昼間の和やかな雰囲気とは一変し、野戦病院のような緊張感に包まれていました
部屋の中央には移動式の病床があり、そこには静脈カテーテルや無数のセンサーに繋がれた、ひどく衰弱した男の子が横たわっていました
傍らでは、40代とおぼしき母親が必死に子供の手を握りしめています
L医師(王室医療チームリーダー): 「朱雀陛下、例の難病児救済の件、今すぐ始めていただくわけにはいかないでしょうか。この子は単心室型先天性心疾患……近日中に心臓移植を受けなければ、もう数日も持ちません。そして今、容態が急変しましたようです!」
カミラ皇后陛下も懇願するように発言した
カミラ皇后陛下:
「朱雀陛下、行きなりのお願いで失礼なのは承知しております。ですが、目の前で消えそうなこの命を見過ごすことはできません。どうか、今すぐに……」
p.adminとS子は顔を見合わせ、即座に頷きました
p.admin(朱雀 椿):
「わかりました。始めましょう。医療チーム全員を招集してください!」
医師たちの協力で子供が医療ベイに移されると、カバーが閉まるより早く、医療ベイ内蔵のチューブが子供の静脈カテーテルに自動接続されました
さらに、ベッドの下から重力制御によって浮上した未知の精密機器が、子供の胸の真上で空中に固定されました
5分後、招集された5名の医療チームが到着。p.adminは厳かな声でシステムに命令を下しました
p.admin: 「システム命令:この場にいる王室医療チーム医師5名に、若返り治療を除く医療ベイの操作権限を一時的に与える。病名診断後、英語で治療概要を提示し。権限保持者は内容を確認の上、治療の可否(YES/NO)を決定するように設定する!」
やがて、医療ベイから詳細な診断結果が英語のホログラムで投影されました
「Diagnosis: Congenital Heart Disease (Single Ventricle) Treatment Plan: > - DNA Modification & Rapid Cardiomyocyte Proliferation (72HR = 1 Year Growth).
Temporary Septum Formation using Biocompatible Nano-mesh via Gravity Manipulation. Estimated Treatment Time: 72 Hours.
Proceed?(YES/NO)」
L医師は他のメンバーと短く協議し、震える手でホログラムの「YES」をタッチしました。
治療が始まると、医療ベイは静かに稼働を始めました。今回の治療はこれまでとは比較にならないほど複雑です
S子は画面を注視しながら口を開いた
S子:
「……凄い。DNAを部分的に書き換えながら、1年分の成長をわずか3日間で促しているわ。同時にナノマシンを心臓内に送り込んで、網を織るように一時的な『壁』を作っている。これで単心室を強引に二つに分けて、左右の心室として機能させるつもりね。」
この処置は一度では終わらず、今後半年かけて10回ほどの治療が必要となる計算でした
L医師も母親の肩を抱きながら彼女宥めた
L医師:
「……奥さん、信じましょう。朱雀陛下と妃殿下のご尽力により、この子は今、人類史上最も高度な技術に守られています」
時計の針は午後7時(UTC 19:00)を回っていました。カミラ皇后陛下がp.adminたちの元へ歩み寄ります
カミラ皇后陛下:
「朱雀陛下、さや妃殿下。今夜はこのような事態になり、晩餐会を中止せざるを得なかったこと、心よりお詫び申し上げます。ですが……どうか、明日の朝まで滞在していただけないでしょうか。外務大臣から報告を聞いたチャールズ国王陛下が、どうしても貴方とお話ししたい大事なことがあると仰っております」
p.adminは一瞬、R子との「明日の朝には戻る」という約束を思い出し、複雑な表情を浮かべました
しかし、国王からの直々の要請を断ることはできません
p.admin:
「……承知いたしました。明日の朝まで滞在します」
部屋に戻った二人は、それぞれ夕食を注文しました
p.admin:
「子供があんなに頑張っている時に、贅沢なフルコースを食べる気にはなれないな……使用人さん、カツ丼を頼めるかな? 日本の、卵閉じかつの味が恋しいんだ」
S子は苦笑いして
S子:
「私は手軽にBLTサンドウィッチでいいわ……それにしても、あんた。あの『亡命権』の話、国王にまで伝わったみたいね。明日の話は、きっとそれに関係してるわよ」
p.admin:
「ああ。覚悟を決めて聞くしかないな」
バッキンガム宮殿の長い夜が始まろうとしていました。医療ベイの中では、小さな命が異星の技術と共に、懸命に新しい「壁」を作り上げています
#### ダウニング街10番地の秘密会議
p.adminの「亡命権」の提案を受けた外務大臣は、直ちにJ首相および内閣の上層部、そしてMI6(秘密情報部)の分析官を交えた極秘会議を招集しました
内閣府特命担当怪訝そうに発言した
内閣府特命担当:
「楽園島の元首たる朱雀陛下が、なぜ今このような願いを? 彼は今、地球上で最も強力な力を手にしている。まさか、近いうちにその力を失う前兆ではないのか?」
MI6分析官は冷静に資料を提示しながら否定した
MI6分析官:
「いえ。現時点で朱雀陛下がポルポ・カラマリ文明からの信頼を失っている、あるいは技術的な劣化が起きているという兆候は一切ありません。むしろ、彼の『善意に基づく統治』は、異星文明の高度な倫理基準と完全に一致していると報告されています」
J首相は腕を組み、深く考え込む
J首相:
「では、なぜだ? なぜ、神に近い力を持ちながら、一国家の保護という『泥臭い保険』を求める?」
MI6分析官:
「彼の過去のSNS発言を遡ったところ、興味深い日本語のキーワードが浮上しました。『白昼灯篭』……昼間に灯す灯篭、つまり、明るい時には無用に見えるが、日が暮れれば命を繋ぐ光になる、という考え方です」
J首相:
「備えあれば憂いなし、か。しかし、彼が恐れているのは自分自身の身の上だけではないのだろう?」
MI6分析官:
「恐らく。MI6の推測では、彼は自分が暗殺された後、あるいはポルポ・カラマリが地球を去った後の『残された家族』……かおり(W子)皇后陛下、リコ(R子)妃、そしてさや(S子)妃の安全を最も危惧しています。彼女たちが報復や技術略奪の標的になることを、彼は何よりも恐れているのです」
J首相が決断し、外務大臣を見て指示した
J首相:
「一政権に過ぎない我々が口頭で保証しても、数十年後の安定は約束できない。だが、イギリス王室の『誓い』であれば話は別だ。外務大臣、本件はチャールズ国王陛下、カミラ皇后陛下にも共有してくれ。政府として、王室がこの『聖域』を保証することを全面的に支援する」
お待たせしまい申し訳ありません。今回も2話相当分です
会話の英語を入れると長すぎるなので、今後は重要な場面を除いて省略します




