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D-DAY+156 2027年5月末 助けを求める人々 その2

おまたせしました、本話はイギリス医療編のクライマックスだと思います

* UTC PM 14:30


カミラ皇后陛下の治療が完了した直後、バッキンガム宮殿前には、楽園島の医療を求める市民、およそ1000人が集まっていました


大典侍の説明は、p.adminの懸念を裏付けるものでした。国民保健サービス(NHS)の限界、特に癌治療で半年以上待たされる現実、裕福層が高価な自費医療を海外で受ける一方で、一般市民が救済の道を持たないという、イギリス社会の根深い医療格差が背景にありました


市民の陳情書は、楽園島に責任がないことを認めつつも、「地球を遥かに凌駕するテクノロジー」を持つ楽園島に「皆一人一人が生き続けるためにお願いするしかない」と、絶望的な状況を訴えていました


大典侍からは「事態解決の為、即刻政府側の対応を求める」と述べたが、p.adminは憂慮していた

現在、楽園島や月面基地の医療ベイを合わせると、月面基地に500台、楽園島に500台で合わせて1000台があります

ボランティア達によってp.adminが希望していた善人の救助が続いている今、

一部の医療ベイは利用されている状態でしたが残りの医療ベイの数でも目の前の市民らを助ける余裕がある


p.adminはすべての人は救えないと理解しても、目の前に要救助の人を見殺す事もできない

しかし殺到した人だけを治療すると、ここに来られない人たちには明らかに不公平と感じた


目の前の市民を救えるだけの医療ベイのキャパシティはありましたが、p.adminは深く憂慮しました


p.admin:

「公平の為に見殺すか、公平を犠牲して救うか…自分はウクライナで『正義の前には公平が先』と言ったのに、自ら破るのか…」


p.adminが長年貫いてきた「公平性」とは、感情に流されず、客観的な基準(善人かどうか、病気の緊急度合い)で救助の優先順位をつけ、効率的に最大の善を生み出すことでした。目の前の群衆を感情的に救うことは、その原則、ひいては自身が築き上げた「公平性の檻」を壊すことに他なりませんでした


思い詰めるp.adminを見て、S子は感情的な視点から彼を宥めました


S子さや:

「旦那様が公平性を重視するのはすごくよく解るから……助ける、助けないの決定に関しては私はあなたの判断に従うわ」


「しかし、旦那様は神ではなく人です。もし道端で弱っている仔猫を見つけたら、それを救うことは決して不公平ではないと、私が思います」


p.admin:

「しかし、戦乱時のウクライナならともかく、イギリスは先進国だ。医療保障システムは課題はあるが機能している……彼らは道端の仔猫と訳が違う。今回救ってしまえば、もっと多くの国から助けを求める人々が殺到し、結局そのほとんどが救えない」


S子さや:

「確かにそうね…しかし、ここで私たちが何とかしないと、旦那様の評判、ひいてはイギリス王室の評判には結構悪影響を及ぼすよね…国王陛下だから治療を受けられた、ただの一般市民だから見捨てられた…みんなは理屈は分かるけど、感情的には実益主義には冷血と思われる方が世の常だよ」


S子の指摘は核心を突いていました。「価値ある人間だけ救う」という実益主義的な行動が、結局は「全体主義」や「冷酷さ」と見なされ、長期的協力関係の土台を崩しかねないという、外交的なリスクを意味していました


もし「そうじゃない!」と主張したければ、きちんと救助の基準を設けて、透明性や正当性を示すほかありません

p.adminは自分の原則と、現実の感情論の板挟みになり、苦しんでいました


* チャールズ国王陛下の懇願


その時、正装に着替えを終えたチャールズ国王陛下が応接室に入室しました。その表情は毅然としていましたが、深い悲哀を湛えていました


チャールズ国王陛下:

「朱雀陛下、さや妃殿下、外の状況を先ほど大典侍から聞き及んでいました。わたくしへの治療が発端でこのような騒ぎに発展することは、正直に申し上げると心が痛みます」


(Chief Executive Suzaku, Princess Saya, I have been informed of the situation outside. I must be honest, it grieves me deeply that the treatment I received has sparked such a commotion.)


国王陛下の言葉には、自らの健康回復と国民の窮状のコントラストに対する、強い皮肉と責任感が滲んでいました


チャールズ国王陛下:

「わたくしと妻、そして義理の娘だけが地球上最先端の治療を受けて、外で正規の治療ですら受けられていないわが国民…なんという皮肉な事だ」


(That my wife, my daughter-in-law, and I alone receive the most advanced treatment on Earth, while my people outside are denied even regular care... what a bitter irony.)


チャールズ国王陛下:

「私は王に即位した以来、国王らしい仕事はさほどできていない。朱雀陛下、どうかお願いします。外にある我が国の民を、貴国の力で救ってもらえないでしょうか?」


(Since ascending the throne, I have not been able to do much that I would call a King's work. Chief Executive Suzaku, I implore you. Would you use the power of your nation to save the citizens of my country who are out there?)


チャールズ国王陛下:

「イギリスは民主主義の国で、私が口出しできるのはこのバッキンガム宮殿くらいだ!ここの中庭に貴国の医療ベイをたくさん設置していただければ、より多くの国民を救えるはずだ」


(The UK is a democracy, and the only place I can truly command is here, in Buckingham Palace! If you would place numbers of your medical bays in this courtyard, we could save many more of my people.)


毅然とした態度で一気に話し終えたチャールズ国王陛下と、傍に寄り添い静かに見つめるカミラ皇后陛下。p.adminは、この王の人道主義的な決断と、その裏にある「王としての責任」を前に、自身の「公平性の檻」を突き破る苦渋の決断を下しました


p.admin:

「チャールズ国王陛下、ご心境お察しします。わかりました、方法はどうであれ、目の前の要救助患者を治療しましょう」

(Your Majesty, I understand your feelings. Regardless of the method, we shall treat the patients in need before us.)


#### UTC 15:00 救助行動開始


集まった市民の重症患者たちの救助を決まれば、まずは状況を把握しなければ話にならない

チャールズ国王陛下の同意を得て、バッキンガム宮殿の使用人が集まった市民の代表数名を別応接室へと案内しました

p.adminとS子は、大典侍と衛兵二名の同行のもと、その応接室に入室しました


p.adminは厳しくも、迅速に対応する姿勢で市民代表に問いかけた


p.admin(朱雀 椿):

「時間がありません。そちらの状況を迅速に把握したい。集まった1000名の方々の構成と、必要な治療について、明確に説明していただきたい」


市民代表(NPO法人代表)は疲弊した表情で回答した


市民代表(NPO法人代表):

「ありがとうございます、朱雀陛下。集まった1000名のうち、600人強がNHSの正規医療を受けられなかった患者で、400人弱がそのご家族です」


p.admin(朱雀 椿):

「我々の医療のキャパシティは有限です。緊急な治療を要しない軽症患者は、我々は対応しないことを明確に申し上げておく」


市民代表:

「承知しております。この場にいるのは、癌や重篤な心臓病など、深刻な状況で即時の治療を望む患者のみです。軽症者は我々の団体が事前に除外いたしました」


S子はホログラムを展開し、外の人達の状況を確認しながら口を開いた


S子さや:

「具体的な疾患の内訳は?多い順に教えてください」


市民代表:

「はい。患者の多くは癌(ステージIからIVまで)です。次いで多いのが心臓の病気、腎臓の病気、重度な糖尿病、そして最後に先天性疾患や難病が続きます」


市民代表は続けて、現場の状況の深刻さを訴えました


市民代表:

「特に年配の患者も多く、バッキンガム宮殿の石畳の前に立ち続けることすら、今は大変辛い状況です」


この言葉を聞いたp.adminは、ついに抑えていた感情を爆発させました


p.admin(朱雀 椿):

「それが分かっているのなら、なぜ無謀な行動に出た!? 治療が必要な重症患者を集めて、宮殿前に殺到させるなど、この場で事故を生むリスクを全く考慮していない!」


p.admin(朱雀 椿):

「今回はチャールズ国王陛下の願いがあるこそ、我々は救助を決めた。もしそうじゃなければどうやって事態を収拾するつもりだった!?それは反省しなさい!」


p.adminの怒りは、市民を救いたいという衝動と、彼らの無秩序な行動がもたらす「公平性」と「外交」へのリスクに対する苛立ちから来ていました

怒りを収めたp.adminは、すぐに人命優先の指示に切り替えました


p.admin(朱雀 椿):

「大典侍、時間がない。まず椅子や折り畳み式の簡易ベッドを用意し、年寄りで体が弱い人をバッキンガム宮殿の室内に一旦収容するよう、手配をお願いします。患者の生命維持が最優先だ」


大典侍は直ちにp.admin一礼し、回答した


大典侍:

「直ちに手配いたします、朱雀陛下!」


大典侍は即座に応接室を後にし、宮殿の職員を動員しました

市民代表は、p.adminの叱責と、その直後の迅速かつ人道的な対応に、圧倒された表情を浮かべたのでした


#### UTC 15:30 医療チームによる緊急トリアージ


p.adminの要請に基づき、バッキンガム宮殿に待機していた5名の王室医療チームの医師のうち、緊急対応に残った1名を除く4名が、日本から来た侍医と共にトリアージを実施することになりました

宮殿の広いエントランスホールが臨時の救護所となり、市民代表によって持ち込まれた病歴のコピーや診断書が、医師たちが患者の深刻度を判断する助けとなりました


S子はポルポ・カラマリの高度医療技術を理解していましたが、救急外来的なトリアージの実務経験は乏しく、本職の医師たちに任せるのが最善と判断しました


その間、p.adminとS子は今後の行動方針を詰めていました


p.admin:

「緊急度合いが高く、直ちに治療が必要な人たちは、ここで医療ベイを追加設置するよりも、直ちに楽園島か月面基地へ転送しましょう。治療内容は人命救助最優先でAI自動選択を採用する。今までの善人救助と同じ方法で対応してもらう」


月面基地には、常に数百人の要救助善人が治療を受けている状態、治療の頻度により現時点で長時間利用可能な医療ベイの数は、ざっと400台と見積もる

楽園島はには、現在治療を受けている人は少なく、医療ベイ500台がフル稼働できる

職員達(元ボランティア)も全世界からの患者への対応を慣れているおかげで、ワープで転送したら直ぐ対応してもらえるでしょう


p.admin:

「ステージIとステージIIのガン患者については、免疫ターゲティング治療を実施しただけで治る気がしますが、どうしましょうか?」


S子さや:

「ステージIであればそうかもしれませんが、あくまで希望的観測だ。ステージII以降はチャールズ国王陛下のようなナノマシンによる物理除去が必要だと思われます」


p.admin:

「治療中の寝泊まりの世話も考えると、やはり全員楽園島か月面基地に送る方が妥当ですね」


S子さや:

「そうね。楽園島なら、ボランティアや職員の力を借りて寝泊まりの世話をしてもらえ、私たちの負担が少なくて済む」


* 楽園島 AM 4:30


p.adminは直ちに左手薬指の「家族指輪」を使い、楽園島にいるR子にホログラム通信で連絡しました

UTC PM 15:30現在、楽園島は真夜中のAM 4:30でした

ほとんどの幹部はもう寝ているでしょうけど、緊急事態なので対応してもらうしかなかった


ホログラム通信は、暫くしたら応答されました

R子はホログラム通信で。眠そうな様子ではあるが、すぐに集中するようになった


R子(リコ ホログラム通信で):

「旦那様…?こんな朝早く…どうしたの?」


p.adminは状況を簡潔に説明した


p.admin:

「R子……ごめん。今バッキンガム宮殿前にたくさんの重症患者が殺到した。我々は治療を決めたので、患者600人を楽園島に収容したい。今はイギリスの医者によるトリアージが行われていて、最初の転送はおそらく1時間後に行われる予定だ」


p.admin:

「急すぎることは知っているが、何とかボランティアや職員たちに助けを求めてくれ」


R子(リコ ホログラム通信で):

「分かった……W子も起こしていきます。職員はお休み中と思われますので……ワープの目標地点を医療室の前に指定していただければ、私とW子、それといる職員だけでまずは対応してみせます」


R子は、休んでいる職員を無理に呼び出すことなく、自分たちの力で事態に対処しようとしました


p.admin:

「ありがとう、R子。とりあえずそっちは頼んだ。何かあったら追って連絡する」


ホログラム通信を終えたp.adminは、傍で待機している大典侍に「緊急順で患者を楽園島に転送する」と告げた

その後、患者を楽園島に転送すると知ったイギリス大使は、J首相及び関係部署に出入国管理官をバッキンガム宮殿前に派遣する事を要請してくれた


また、パスポートを携帯してない患者や家族については、ロンドン済の人には急いで家に戻りパスポートを取りに行かせた

遠方に住んでいる人には、手持ちの身分証明書を使って出国するのをイギリスの行政部門に交渉するしかない


#### 患者の転送開始


* UTC 16:30 楽園島 AM 5:30


午後4時30分。五月末のロンドンの空は既に夕焼けに染まり、肌寒くなっていました


トリアージの結果、最優先で治療が必要な患者として約50人が選定され、体力の弱い患者と共に宮殿内のエントランスホールに収容されました


ほぼ同時刻、イギリス政府から派遣された5名の出入国管理官がバッキンガム宮殿前に到着

彼らは最優先患者50人とその家族50人のパスポートに出国印を押印する作業を迅速に進めました

パスポートを携帯していない遠方からの患者については、

イギリス行政部門との緊急交渉により、手持ちの身分証明書で出国が許可されました


すべての審査を終えた最初のグループが中庭に案内されました

S子は中庭に待機し、ワープゲートを展開。10人ずつを楽園島の医療室前に転送し始めました


S子は、転送直後にR子にホログラム通信を入れました


S子さや:

「R子、さっき10人を医療室の前に転送したよ。治療は全自動でいいから、とりあえず医療ベイにぶち込んで頂戴!」


S子は焦燥感をにじませてR子に告げた


R子(リコ ホログラム通信で):

「わかった。かおり(W子)と2名の職員もいたので、一応10分置きで転送なら対応できると見積もったんだけど……」


S子さや:

「それは間に合わないのよ、これからどんどん送るので歩ける人には自力で医療ベイまで入るように指示してあげて!」


R子(リコ ホログラム通信で):

「うん、わかった…とりあえず先ほど到着した10人を案内します」


S子の切迫した指示と、現地でのR子の迅速な対応により、転送スピードは向上しました

最低限の出国審査の遅延もありましたが、トリアージで選ばれた最優先要治療患者50人と、その家族50人(計100人)は、30分かかってようやく楽園島までワープ転送できた


* UTC PM 18:00 楽園島 AM 7:00


バッキンガム宮殿から5分間に10人というハイペースで、約400人の患者と家族が楽園島の医療室前に転送されました

楽園島は早朝の午前7時、医療室前は騒ぎではないものの、人々の話し声や、質問を求める患者・家族の声で満たされていました


医療室は行政ビル並みの規模があり、1階には500台の医療ベイが設置された大ホールがあります。しかし、対応できる人員は限られていました

R子は早朝の慌ただしさの中、汗を拭いながら指示を出している


R子リコ:

「そちらの方は、医療ベイに自力で入ってください! N君、このグループは心臓病よ、治療は全自動だけど、不安がるから『治療は安全で1時間で終わる』と伝えて!」


総責任者のR子は、次から次へと医療ベイへの案内と指示で忙殺されていました

W子も異星医療の知識はありましたが、人見知りの性格から、不安な患者家族への説明はR子に集中しました


患者家族:

「あの、本当にこれで治るんでしょうか?医者ではない方が対応しているようですが……治療の説明をしてください!」


R子は案内を続けながら、簡潔に異星医療の信頼性を伝え、家族たちを医療室2階の病室(待機スペース)へ誘導しました

早起きしたN君やH先生、Lee先生を含む5名の職員が、不安な家族を宥め、異星医療を信頼するように説得する役割を担っていました


* バッキンガム宮殿


ロンドンでは、夕食の時間帯を迎え、バッキンガム宮殿の使用人たちが炊き出しを行い、宮殿内外の待機者に温かいスープと食べ物を配っていました


この状況を見たK子様は、日本の皇室の立場を超えて、S子に協力を申し出ました


K子様:

「さや姉様。わたくしにも何かお手伝いできることはございませんか?炊き出しのお食事を配りながら、待機されている方々の不安を和らげることは、わたくしにも可能かと思います」


K子様は、炊き出しの食事を配りながら、穏やかな口調で待機している患者と家族へ異星医療の信憑性を丁寧に説明しました

彼女の落ち着いた態度は、間接的に楽園島で多忙を極めるR子の負担を減らすことに貢献しました


この時点で、患者600人のトリアージは概ね完了し、現場には約600人(患者300人、家族300人)がワープ転送の順番を待っている状態でした


#### K子様と侍医殿の決意


炊き出しが一区切りついたところで、K子様は侍医殿を連れてp.adminの元を訪れました


K子様:

「朱雀陛下。わたくし、楽園島へ参り、現地で治療の補助をしたいと決意いたしました」


侍医殿もp.adminに向けて深く一礼して、発言した


侍医:

「陛下。私も医者として、患者の皆様に安心していただけるよう説得し、楽園島側の負担を軽減したいと志願いたします。このテクノロジーの恩恵を、彼らにも理解させることが私の務めです」


K子様:

「わたくしは、治療の首尾をこの目でしっかりと見届け、雑用でも何でも行う覚悟がございます。楽園島にいるリコ(R子)姉様の負担を少しでも減らしたいのです」


p.adminは、K子様の皇室という「檻」を超えようとする強い決意を感じ、同意しました


p.admin(朱雀 椿):

「K子様、侍医殿。わかりました。そのご決意、ありがたく受け取ります。楽園島でのリコ(R子)の負担は限界に近いはずだ。お二人の存在は心強い」


K子様は、チャールズ国王陛下とカミラ皇后陛下に別れを告げた後、侍医殿と共にバッキンガム宮殿の中庭から、早朝の楽園島へとワープしていきました


#### 帰還


* UTC PM 20:00 楽園島 AM 9:00


午後8時。ロンドンでは、バッキンガム宮殿から集まった患者600人とその家族400人、合わせて1000人全員の楽園島へのワープ転送が完了しました。


楽園島では、K子様と侍医殿が到着し、専門的な知識と冷静さで指示や説明側に回ったことで、現場の混乱は急速に収まり始めていました

午前9時近くになり、出勤した職員やボランティアも加わり、医療室の状況は安定期に入りつつありました


p.adminとS子は、この状況をR子やN君からのホログラム通信で確認した後、チャールズ国王陛下とカミラ皇后陛下に別れを告げるため、客室で荷物を片付け、応接室へと向かいました


p.adminとS子が応接室に入ると、チャールズ国王陛下とカミラ皇后陛下が二人を待っていました


p.admin(朱雀 椿):

「国王陛下、皇后陛下。患者とそのご家族の転送が完了いたしました。楽園島側はまだ人員が不足しており、現場での患者の世話や指揮のため、わたくしとS子は直ちに楽園島へ戻る予定でございます」


(Your Majesties, the transfer of the patients and their families is complete. As the Isle of Paradise still requires person help, my wife Saya and I intend to return immediately to oversee the care and command the operation there.)


チャールズ国王陛下は深く頷き、感謝の意を述べました


チャールズ国王陛下:

「朱雀陛下、わが国民の治療を自ら監督するという貴殿の決断は、深い慈悲の行為です。貴殿の献身、そしてさや妃殿下の多大な貢献に、心より感謝を申し上げます」


(Chief Executive Suzaku, your decision to personally oversee my people's care is a profound act of compassion. I thank you for your commitment, and Princess Saya for her invaluable contribution throughout our time together.)


チャールズ国王陛下:

「もし貴国で医師や人手が不足するようであれば、わが王室医療チームの医師を直ちに楽園島へ派遣することも可能です。遠慮なく申し出ていただきたい」

(Should you find yourselves short of doctors or personnel, I can dispatch physicians from our Royal Medical Team to the Isle of Paradise immediately. Please do not hesitate to ask.)


S子は国王陛下の提案に丁重に辞退する


S子さや:

「国王陛下、ご厚意、感謝申し上げます。しかし、楽園島では治療は既に落ち着き始め、間もなく全員が医療ベイにて治療を受けるようになります。現地には日本の皇室から侍医殿も到着し、安心感を与えてくださっています。今回は、このまま我々で対応できると存じます」

(Your Majesty, we appreciate your generosity. However, the situation on the Isle of Paradise is already calming, and all patients will soon be receiving treatment in the medical bays. The Court Doctor from the Japanese Imperial Family has also arrived to reassure them. We believe we can handle the situation ourselves for now.)


* カミラ皇后陛下からの称賛


S子の落ち着いた報告に、カミラ皇后陛下も賞賛の言葉をかけました


カミラ皇后陛下:

「さや妃殿下、今日一日のあなた方の尽力と迅速な対応は、実に感動的でした。外交的な危機と人道的緊急事態を同時に収束させたのですから」

(Princess Saya, your tireless efforts and rapid response today have been nothing short of inspiring. You managed a diplomatic crisis and a humanitarian emergency simultaneously.)


カミラ皇后陛下:

「あなたの国民と我々の国民への献身的な姿勢を見て……わたくしは亡き義母のエリザベスを思い出しました。王室というものは、そうでなくちゃ」

(I must say, watching your dedication to the well-being of your people and ours... it reminds me of my late mother-in-law, Elizabeth. The monarchy...this is exactly what the Royal Family ought to be.)


S子はその言葉に、深く一礼で応えました


S子さや:

「恐縮です、皇后陛下」

(The compliment is overwhelming, Your Majesty.)


二人は国王夫妻に深く別れを告げました


p.admin:

「国王陛下、皇后陛下。それでは、失礼いたします。次週、治療のため、再び参上いたします」

(Your Majesties, please excuse us. We shall return next week for the next round of treatments.)


p.adminとS子は、大典侍と衛兵の同伴でバッキンガム宮殿の中庭に到着。そこでワープ転送を行い、喧騒の続く楽園島の早朝へと戻っていきました


#### イギリスの報道:K子様の献身


(バッキンガム宮殿前での炊き出しと説明の様子が、イギリス国内のメディアで大々的に報じられる)


EBCニュース速報(画面テロップ):【王室の慈悲】 日本の皇室のK子様、バッキンガム宮殿外での救済活動に参加。楽園島の医療を求める人々に自ら寄り添い、不安を和らげる

(Royal Compassion: Japanese Imperial Princess K joins relief efforts outside Buckingham Palace, personally comforting those seeking aid from the Isle of Paradise.)


(ニュース番組のスタジオにて、コメンテーターが議論している)


イギリス人コメンテーターA:

「これは本当に素晴らしいジェスチャーです。政府が集まった群衆への対応に手間取っている中、日本の皇室の代表であるK子様は、信じられないほど人間的な対応を見せました。彼女の存在は、侍医と共に、状況に即座に落ち着きと信頼性をもたらした。これは見事なソフトパワーの発揮です」


(This is a truly magnificent gesture. While the government fumbled the response to the crowd, Princess K, a representative of the Japanese Imperial Family, showed incredible humanity. Her presence, alongside her nation's doctor, brought instant calm and credibility to the situation. It’s a remarkable display of soft power. )


* 日本国内の熱狂と憶測


(翌朝の日本のワイドショー番組「モーニング・スカイ」)


スタジオ司会者:

「さあ、皆さん!昨夜から飛び込んできたビッグニュースです!イギリスのチャールズ国王陛下への治療で滞在されていたK子様と侍医殿が、バッキンガム宮殿前で、なんと炊き出しをされたというんです!」


女性コメンテーターB:

「あの格式高いバッキンガム宮殿の前で、日本のK子様が、困っている一般市民に温かいスープを配ってくださった。SNSでも『さすが日本の皇室だ』『優しさが世界に届いた』と、感動の声が殺到しています!イギリス王室の親族だけが治療を受ける中、市民に寄り添う姿勢は、本当に誇らしいですね」


政治ジャーナリストC:

「これは外交的にも非常に大きい。楽園島の医療が一般市民にも提供されるきっかけを作ったのは、チャールズ国王陛下ですが、現場でその不安を和らげたのはK子様です。日英の友好促進という面でも、これ以上の貢献はありません」


* K子様と侍医殿の「失踪」報道と深まる憶測


(数時間後、イギリスメディアから、患者転送後の「K子様と侍医の不在」が報じられる)


ナレーター(日本のニュース番組):

「しかし、ここで新たな情報が入ってきました。イギリスの各メディアは、患者1000名がワープ転送された後、K子様と侍医の姿がバッキンガム宮殿で確認できていないと報じています」


スタジオ司会者:

「ええっ?どういうことでしょうか?まさか、患者さんと一緒に……?」


政治ジャーナリストC:

「これは憶測ですが、あの献身ぶりを見るに、K子様と侍医殿は、楽園島へ同行されたと考えるのが自然でしょう。治療の混乱が続く楽園島側に、専門家と皇室の代表者が加わることで、日本の責任を果たそうとされた可能性があります」


* 宮内庁とバッキンガム宮殿の対応


(日本の記者が宮内庁とバッキンガム宮殿に取材を試みる)


日本メディア記者(宮内庁前):

「K子様が楽園島へ向かわれたという報道について、事実関係はいかがでしょうか?」


宮内庁職員:

「K子様は、現在、イギリスにおいて両国のよしみを促進する為にバッキンガム宮殿に一時滞在されております。これ以上の情報については、お答えを差し控えます」


日本メディア記者(バッキンガム宮殿に電話取材):

「【英語での質問】 Can you confirm if Princess K and the Court Doctor accompanied the transferred patients to the Isle of Paradise?」


暫くしたら日本のイギリス大使館経由で回答が届きました


イギリス大使館:

「個人の移動に関する情報につきましては、プライバシーに関わるため、一切の発言を控えます」


ナレーター: 「宮内庁もバッキンガム宮殿も、K子様の現状について口を閉ざしたままです。しかし、患者のワープ転送は完了し、朱雀執行官夫妻も楽園島へ戻られた今、K子様と侍医殿もまた、人類史上初の異星医療の現場に向かわれたという憶測が、日本国内で渦巻いています」

今回も2話相当分なので、イギリス全編においては一番大事なシナリオなので時間をかけて仕上がりました

とくに、p.adminにとって「公平」や「全体的な利益」への葛藤は、一番描きたかったシーンかもしれない


一応1000人共にp.adminとS子が楽園島に帰還して、イギリス治療編はイギリスから離れたわけですが

1000人の患者治療の話は少し長引くかもしれない


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