D-DAY+151-152 2027年5月下旬 ウクライナ国交締結 その9 キーウの朝、楽園島の夜
#### D-DAY+151 夜
キーウに滞在するp.admin一行の最後の夜、ウクライナ側の好意により、ウクライナ国立歌劇場で特別に伝統ダンスパフォーマンスが開催されました。p.adminは妻たちと共に、晩餐会と同じく正装で観劇に臨みますが、連日の激務と慣れない服装に、スーツの窮屈さに辟易していました。
招待客は、国家晩餐会に出席した各国外交官やウクライナ政府関係者の一部でしたが、観劇中は座席で静かに鑑賞するのみで、過度な交流はありませんでした。p.admin、W子、R子、S子、N君、そしてOka大使は、歌劇場で最も見晴らしの良い一番前列のVIPブースに案内されました。
オーケストラの荘厳な演奏が始まると、舞台には色鮮やかな民族衣装をまとったダンサーたちが登場します。披露されたのは、ウクライナの魂を象徴する激しくも優雅なダンスでした。特に、男性ダンサーによる「ホパーク(Hopak)」は、空中で回転したり、膝を抱えて飛び跳ねたりするアクロバティックな動きで、観客の度肝を抜きました。彼らの動きは、ウクライナ人の不屈の精神と、豊かな大地の力強い生命力を表現していました。対照的に、女性ダンサーたちの動きは、穏やかで優美な「メテリツァ(Metelytsya)」のような円舞で、大地の豊かさと女性的な美しさを象徴していました
#### チェルノブイリ除染作業の報酬
パフォーマンスが終わり、スタンディングオベーションの中、舞台袖からZe大統領が挨拶に現れました。彼はp.adminのVIPブースに直接やってきて、感謝の意を伝えました
Ze大統領: 「兄弟。そして王妃の皆様。最後の夜に、我々の文化を楽しんでくれてありがとう。君たちが成し遂げたことは、ウクライナの歴史から、原子力の呪いを完全に消し去ったということだ。感謝の言葉では足りない。改めて、我が国から除染作業に対する報酬を提示したい」
p.adminは、立ち上がり、Ze大統領と向き合いました。p.admin自身はウクライナ戦後の復興を考えて、報酬として金銭や資源を望んでいない
p.admin:
「Ze大統領。報酬は不要です。しかし、一つだけ、我々楽園島からのリクエストを聞いていただきたい」
Ze大統領:
「何なりと」
p.admin: 「今回の除染作業は、人類の誤った技術と、全体主義国家の隠蔽体質が招いた最悪の事故を清算するために行いました。ロシアはその独裁的な覇権主義を世界に晒しています。我々の真の願いは、ウクライナが今後、そのロシアの動きを、最も近くで、最も厳しく『目付け』していくことです」
p.adminは、楽園島が直接的な国際政治の監視役になるのではなく、ウクライナという同盟国を通してロシアを牽制し続けることを、支援の最終的な目的として要求したのです
Ze大統領はp.adminの意図を理解し、力強く頷いた
Ze大統領: 「承知した。ロシアが今後、独裁覇権国として世界に脅威を与えないよう、ウクライナが最前線で監視し続ける。それが、チェルノブイリ除染作業の、我々からの静かなる報酬としよう」
#### 外交官たちの接触
Ze大統領との会話が終わると、すぐにフランス大使と、そしてイギリス大使がp.adminの元へと挨拶にやってきました。フランス大使は、核燃料処理に関する交渉の最終確認を行いたがっていました
フランス大使:
「陛下。使用済み核燃料の件、我々は正式に5億ユーロの支払いに合意しました。次のステップについて……」
イギリス大使は、やや落ち着きのない様子で、何か緊急性の高い要件を言いたげな態度でした
イギリス大使:
「朱雀陛下。大変失礼ながら、我々イギリス政府も、是非とも貴国の技術協力を頂きたい案件が…特に機密性の高い協力について…」
しかし、連日の激務と、感動的なパフォーマンスの余韻、そして重い外交決断を終えたp.adminと妻たちは、既に疲労困憊でした
p.admin(朱雀 椿):
「大使方。お気持ちは感謝します。ですが、今日はこれで終わりとさせていただきたい。私は妻たちと共に心身ともに疲れ切っています。要件は後日、改めてOka大使を通して相談に乗ると返事してください」
p.adminは丁寧に、しかしきっぱりと、外交官たちの更なる接触を断ち切りました
#### 旅立ちの夜明け
楽園島(ニュージーランド時間)とウクライナの時差は11時間。ワープゲートを利用すれば、ウクライナ時間の夜10時に出発すれば、ちょうど楽園島の朝9時に到着し、翌日の仕事にスムーズに移行できる計算でした
しかし、ウクライナ側は「我々の国でゆっくり休んでほしい」という好意を示し、ホテルでの宿泊を強く勧めました
p.adminはその好意に甘えることとし、翌日の朝、スターゲーザーに乗って出発することにしました
R子:
「お疲れ様でした、旦那様。今夜はゆっくり休めますね」
W子:
「明日の朝、キーウの美しい景色を見てから帰りましょう」
S子:
「フランスとの国交締結は、また二週間後と予定しておりますから…そこは覚えておいてね」
ウクライナ訪問の最後の夜は、歴史的な大事業の終結と、それに伴う深い疲労、そして新しい外交問題の萌芽を静かに包み込みながら、更けていきました
#### D-DAY+152 朝7:00
ウクライナでの最後の朝。p.adminと妻たちは簡素な朝食を済ませました。W子もこの日は時間の掛かる料理は避け、手軽なチーズバーガーを選んでいました
ロビーでは、ホテルの従業員が一列に並び、p.admin一行を見送りました
ホテル総支配人:
「朱雀陛下、かおり皇后陛下、リコ妃殿下、さや妃殿下。またのご来訪をお待ちしております」
p.admin:
「今回は色々お世話になった、日本料理を作ったシェフにもありがとうとお伝えください」
ホテルを出ると、そこには自発的に集まったキーウの市民たちが、p.admin一行を見送るために集まっていました。市民からの温かい送別を受けながら、p.adminは車に乗り込みました。
p.admin: 「ここまで感謝されると思わなかった。逆にちょっと恥ずかしいかも。」
N君: 「ウクライナ人達にとって、朱雀様は彼らを二重の意味で解放したと感じたでしょう。一つはロシアへの介入で平和を取り戻し、もう一つはチェルノブイリの除去ですね。彼らにとっては英雄です」
ボルィースピリ国際空港でも、最大限の敬意を示す空港スタッフが並んで出迎えました。パスポートの検査もなく、一行はそのままネイビーゲーザー輸送機が待つ駐機場所に到着しました
ここで、現地に留まるOka大使と別れの時がきました
p.admin:
「Oka大使、就任早々で申し訳ないが、今後の事は頼みます、M子大使の実習の件もお願いします」
Oka大使:
「お任せください、ワープゲートを使えば直ぐにでも会えますので、お気になさらずにご自分の公務を優先してください」
p.admin:
「ではみなさん、楽園島に帰りましょう!」
一行がネイビーゲーザー輸送機に乗り込み、すぐに輸送機が上昇しネイビーゲーザー本艦に到着した
まだ直ぐにでも楽園島に着くので、p.adminだけがブリッジに移動した
p.admin:
「オメガ艦長、では楽園島までお願いします」
楽園島の宇宙港建設はほぼ終わっていて、ネイビーゲーザーの着陸は既に可能になっていた
オメガ艦長:
「司令官殿、では出発致します」
ネイビーゲーザーのポルポ・カラマリ人スタッフが、翻訳マシーンに頼らず、慣れないながらも習得した英語でボルィースピリ国際空港の管制塔と交信しました
ネイビーゲーザー スタッフ:
「(慣れない英語で)Air force one of Paradise Island, Navigazer, To Paradise Island Spaceport, Request clearance」
管制塔:
「Navigazer, the air force one of Paradise Island, Runway 01 Cleared for take off, wish to see you again」
ネイビーゲーザーは反重力エンジンで高度3000メートルまで上昇した後、ワープ1(光速)に移行しました。キーウから楽園島までの約16,800kmの距離は、ワープ1で約0.05秒で移動しました。ブリッジの窓から差し込む光は、さっきまでキーウの朝の光だったのに、一瞬で楽園島の夕闇へと変わっていました
#### 楽園島 19:00
楽園島の宇宙港は楽園島の東側に4km x 3km規模の人工島の上に建設されています
宇宙港には輸送機やネイビーゲーザーの着陸施設や、もっと規模の大きいポルポ・カラマリ・スター・クルーザーの寄港も想定されています
それに合わせて、ポルポ・カラマリ乗員用の休養施設や、地球航空機用の滑走路や空港施設等も合わせて建設される
補足:楽園島の宇宙港の建設は「サイドストーリー変わって行く世の中1」に参照
ポルポ・カラマリの各種の宇宙船に向けた可変の高低差反重力サポーター設計で、各艦はランディングギアを伸ばすことなく着陸できる
一度着陸する艦は一隻のみなので、コンピューターを使った自動誘導を使っており管制官は居ません
さらに、ハンガーの出口から直接降りることも出来、他の空港のように輸送機に乗って上陸する必要もなくなった
また、今回の楽園島の宇宙港着陸でちょうどネイビーゲーザー乗員の休養も兼ねていた
p.adminはオメガ艦長に労をねぎらいました
p.admin:
「オメガ艦長、こないだは本当にご苦労様でした、乗員たちと島でゆっくり休んでください」
オメガ艦長:
「司令官殿、責務なのでお気になさらず、ではご厚意に甘えて、シフトを組んで2週間休ませていただきます」
ネイビーゲーザーの乗員20名のうち14名が島に上陸し、休養施設へと向かいました。楽園島に留守していたH先生らは、つくば大使館のワープゲートを利用して日本から調理済みの海鮮料理や日本酒を仕入れ、住民の協力のもと、乗員たちをもてなす準備を進めていました
#### 4人家族の「家」
p.admin一行は、キーウで朝食を食べたばかりで空腹感はまだなかったため、まずは各自の住居に戻ることにしました。しかし、ここでp.adminは違和感に気づきました。
楽園島の住居は、家族用(大)、家族用(小)、単身用の三種類に分けられていて、1フロアのマンションタイプになっている
p.adminとW子の住む家族用(小)のマンション(70㎡)は、二人には十分でしたが、今はR子とS子も加わり4人。二階建てのつくばの家とは違い、1フロアのこの部屋は、手狭に感じられました。R子もS子も自分の単身用の部屋(45㎡)を持っていますが、長旅の後に別々に分かれるのは、どこか寂しいものでした
同じことに気づいたS子がまず口を開きました
S子:
「旦那様ははやく宮殿を建てくださいね、今日はね…一旦各自の部屋に戻るけど、2時間後はまた旦那様の所に集まるほうがいいかしら?」
R子:
「私も…かおりの邪魔にならなかったら…そのほうが良いかな」
W子:
「今更だから気にしないよ、後でいらっしゃい」
S子、R子:
「ありがとう、ではまた後でね」
p.adminとW子は部屋に戻り、シャワーを浴びた
* ニュースチェックと温かい夕食
S子とR子が来るまでの間、p.adminはソファーでタブレットを手に取り、ネットニュースや2chをチェックしました
「社説:チェルノブイリの除去は果たして人類の利益に繋がるか?」
中をちょっと見てみると、p.adminやポルポ・カラマリの地球介入を批判する記事でした
「速報:驚異の異星艦隊がチェルノブイリの上空に出現!かつてない人類への脅威が浮き彫りに」
記事の中は、p.adminが異星に操られていた傀儡説が盛り込まれた
正直これらの報道はp.adminはもう慣れており、怒りも反論する気力も湧きません
一方、2chでは
「チェルノブイリ物理除去(゜∀゜)キタコレ!!噂によるとチェルノブイリ発電所が空に昇る姿はポーランドとリトアニアからも肉眼で見えるらしいよ」
「報酬の話は出てなかったけど、まさかの無料?」
「ウクライナの現在の財政を考えると豚は多分料金取らないと思うよ、大きな貸しひとつとして留める事で損はないから」
「俺考えたけど、簡単にワープ輸送できるなら使用済核燃料棒問題も一気に解決なのでは?」
「おそらくEU諸国も同じ事を思た、豚の狙いはそこから処理料金を搾り取るかもしれないな」
「異星パワーで金儲けてウハウハ、どうもありがとうございました!」
「そういえば晩餐会のニュースで各国の王女の報道はないから、やっぱり豚のもう嫁を取らない誓いで諦めたかな」
「まあ落ち付け、フランスやイギリスの晩餐会の時に一気に湧いてくる可能性は微レ存」
彼がニュースに飽きたタイミングで、ちょうどR子がやってきました。R子は鍋二つやいくつかの容器を持っています
R子:
「旦那様はルーローハンをホテルで注文し損ねたから、手持ちの食材で作ってみたの」
R子が運んできたのは、ルーローのたれ(豚肉のそぼろの醤油煮と煮玉子)と、白菜の煮込みと揚げ豆腐、台湾風のあっさり漬物、そして炊きたてご飯でした。運ぶのに苦労するほどの量を見て、p.adminはすぐにソファーから体を起こして手伝いました
p.admin:
「R子ありがとう、ちょうどお腹が空いた所でした」
そしたらS子もやってきて、4人で一緒にR子が作った晩ご飯を食べる事となった
R子が作ったルーローハンはそこまで本格的ではないものの、R子の愛情がたっぷりの料理は、疲れた心身に染みわたり、いつもよりずっと美味しく感じられました
その時、彼がソファーに置いてあったタブレットPCのニュースサイト画面に、最新の記事タイトルが飛び込んできました
「速報:イギリスチャールズ国王、ガン再発で緊急入院」
チェルノブイリの清算を終えたばかりのp.adminを、早くも次の巨大な外交課題が待ち構えていました。波乱万丈の日々は、まだ終わっていません
ヨーロッパで飛び回るよりも正直少しまったりとした話は書きたいですよね
M子(台湾人の)は脇役ですが、彼女の夫が起こす事はp.adminの人間不信のど真ん中に当たるいざこざが起きそうです
なお、SF物語中でチャールズ国王のガンを「リンパ腫」と設定する予定です
現実の尊い方の病気を勝手に「設定」することは少し不謹慎と感じてしまいます(異星医療で治すですが)




