D-DAY+148-150 2027年5月下旬 ウクライナ国交締結 その5 除染計画
p.adminは、チェルノブイリ原子力発電所の除染作業について
自分が司令官を務めるポルポカラマリ宇宙船「ネイビーゲーザー」のシグマ艦長と、第9艦隊提督のアルファ提督とホログラムで交信した
p.admin:
「アルファ提督、シグマ艦長、事情はもうお分かりでしょうから説明を省きます、私の見立てはやはり半径30kmの土や建造物を深さ100メートルまで掘り出して全部捨てるしかないと思いますが、
でもこれは大雑把で乱暴な策という事実は否定できない、もし艦長殿や提督殿に何か良案があれば教えていただきたい」
アルファ提督:
「司令官殿、本件については我々艦隊がソーラーシステムに到着した頃から状況の収集をやっていたが、結果的に君が言うような策が根本的な解決につながる事を最終評価を下した。地球のことわざ『覆水盆に返らず』のように、我々のテクノロジーでは部分的なエリアなら放射線物質を中和する事もできるが、大範囲で土壌の隅々まで拡散した放射性物質の除去は、現実的ではありません」
シグマ艦長:
「提督殿のおっしゃる通りで、もし『石棺』を含めて、全エリアの地下まで掘り出してソーラーに投棄するなら、異星ドローンだけでは些か力不足と思われますが…」
p.admin:
「それは、ネイビーゲーザーのシールド生成能力と重力場操作を持っててもできないでしょうか?」
シグマ艦長:
「約200回分けて搬送するなら、ネイビーゲーザー単独でも可能ですが…」
チェルノブイリ原子力発電所を中心に半径30kmの範囲を地下100mまで掘り出すと、試算では4.8x10^14 kgの質量になる、ネイビーゲイザーの一度運搬可能な質量の約180倍とシグマ艦長に言われた
ネイビーゲーザー性能のおさらい:
全長500M超え、全高300M超え、横幅200Mの巨大宇宙船であり、標準乗組員が1000人、救助者等を含める最大乗員数は5000人です
「偏向シールド発生装置」では不規則なシールドを最大半径3kmまで展開できる(平面のシールドなら半径5kmまで展開できる)
重力操作による運搬能力は、概ね1.5kmの球状フィールドに囲まれる物に限る
p.admin:
「では福島第一原発の時のように、構造物単位で少しずつバラしながら運ぶのはどうでしょうか?」
シグマ艦長:
「それなら可能ですが、我々が一番心配するのは『石棺』を解体しながら運搬すると、放射線汚染がさらに周辺エリアに及ぼす事です
残念ながら『石棺』周辺とその地下100Mまで一気に運ぶのは、ネイビーゲーザーの運搬能力を超えてしまいます」
シグマ艦長の説明の後に、アルファ提督が口を開いた
アルファ提督:
「今回は、艦隊総出でやっていきましょう、これは人類が持つ『核分裂反応技術』は如何に不完全な技術であることを、地球人の前に示す絶好のチャンスになりえる」
「我が艦隊の母艦、ポルポ・カラマリ・スター・クルーザーの重力場生成装置を使えば、『石棺』周辺や地下を含め、シールドを展開しながら切り離す事は可能です」
「我々はかつてソーラーの近くで似たような作業を行った実績があるので、司令官殿はご心配なくすべてを上手く遂行できるでしょう」
ポルポ・カラマリ・スター・クルーザー:
「ポルポ・カラマリ」地球派遣艦隊の母艦、全長3km、幅約300M、高さ約500M
乗員5000-10000人、ポルポカラマリ第9艦隊の母艦、アルファ提督が指揮しているフラッグシップ
重力操作による運搬能力は、概ね3kmの球状フィールドに囲まれる物に限る
p.admin:
「結構、大ごとになってしまいますね」
p.admin:
「ただ、たとえば例の『赤い森』に生殖している動物達はどうしますかね…」
アルファ提督:
「我々がそれを強要する立場ではないですが、ポルポカラマリの論理として人類が犯したミスだから、最低限の責任を取るべきではないかと」
p.admin:
「解りました、アルファ提督の案で、ウクライナ側に申し入れます」
その後、p.adminはS子とOka先生と共にポルポカラマリが事前調査の資料(周辺エリアの地下の放射線物質のセンシング結果、ポルポカラマリ艦隊による『石棺』の内部の調査結果等)を整理し
ウクライナ側に渡して、改めて「周辺30KM一律ではなくて、ポルポ・カラマリ艦隊の重力操作によるよる実効の汚染地域の完全除去」を提案した
なお、p.adminは追加の要求として、汚染エリアに生殖している動物を収容する特別エリア(言わば、動物園)の緊急開設も求めた
#### ウクライナの決断
p.adminは、アルファ提督とのホログラム交信を終えた後、S子とOka先生と共に、整理されたポルポカラマリの事前調査資料を携え、Ze大統領との緊急会議に臨んだ
資料には、地中深くまで広がる放射線汚染のセンシング結果と、母艦『ポルポ・カラマリ・スター・クルーザー』の運用能力が詳細に記されていた
場所は、ウクライナ大統領府の会議室。Ze大統領、首相、外務大臣、そして原子力発電所責任者(A責任者)が出席していた
p.admin(朱雀 椿):
「Ze大統領。検討の結果、我々の最終提案を提示します。結論から言えば、私の最初の案よりも、さらに規模が大きくなります」
p.adminは、巨大なホログラムディスプレイに、母艦『スター・クルーザー』のスケールと、それがチェルノブイリの汚染地域全体を重力フィールドで切り離し、包み込むシミュレーション映像を映し出した
p.admin:
「ネイビーゲーザー単艦では力不足です。しかし、アルファ提督指揮下の艦隊母艦を投入することで、発電所周辺を含む汚染が実効的に広がった地域と、地下100メートルまでの地層すべてを、シールドを保ちながら一度で完全に切り離すことが可能になります」
p.admin:
「これは半径30kmの一律除去ではなく、センシング結果に基づく『汚染された部分だけ』の完全除去です。除去後、その巨大な汚染の塊は、太陽へ投棄されます。」
p.admin: 「そして、追加の要求です。除去対象エリアに生息する動物、特に赤い森の突然変異体を含む。動物達は、我々人類の過ちの証人です。これらの動物を保護するため、特別収容エリア(動物園)の緊急開設を求めます。ウクライナ側には、2日以内にこれを整えていただきたい」
Ze大統領と閣僚たちは、ポルポカラマリ艦隊の圧倒的なスケールと、地表から数十キロメートル四方を根こそぎ消し去るという提案に、言葉を失っていた
A責任者(震える声で):
「……陛下。貴艦隊の力は理解しました。ですが、それは人類が抱えてきた最大の悲劇の場所を、物理的に『無かったこと』にすることを意味します。我々は、石棺を破壊し、発電所の痕跡を消し去ることに、心情的に大きな抵抗があります。我々の国と歴史にとって、チェルノブイリは忘れてはならない場所なのです」
外務大臣:
「除去後の跡地はどうなるのでしょうか?そこに、ぽっかりと巨大な穴が開くことになるのですか?」
p.admin: 「除去後の穴は、我々の技術で周辺地盤と同質の無害な土壌で埋め戻します。跡地には、原子力の脅威を人類が克服した記念碑でも建てればいい。しかし、汚染を未来に残すという選択肢はありません」
Ze大統領は沈黙の後、深く息を吐き出す
Ze大統領:
「……A責任者。私も君の気持ちは理解できる。チェルノブイリは、ウクライナの苦悩と不屈の歴史の象徴だ。しかし、君は言った。『恒久的な処理方法はない』と」
Ze大統領は、厳しい表情でp.adminを見つめた
Ze大統領:
「兄弟。我々は、『人類の過ちの物理的な残骸』を未来に残すか、『自国の歴史的な感情』を捨てるか、という選択を迫られている。だが、我々は未来の命を選ばなければならない」
Ze大統領:
「わかった。ポルポカラマリ艦隊の総力を挙げた除去計画を受け入れよう」
Ze大統領は、A責任者に向かって厳かに命じた
Ze大統領:
「A責任者。君たちの職場は消えるが。しかし、君たちは、人類史上最大の環境修復プロジェクトの協力者となる。これは、『石棺を守る』以上の、未来への偉大な貢献だ」
Ze大統領:
「そして、特別動物収容エリアの緊急開設も、直ちに実行する。2日以内、我々の軍と環境省の総力で、安全な場所を確保しよう」
Ze大統領は、会議を締めくくった
Ze大統領:
「兄弟。頼む。我々人類が犯したこの巨大な傷を、君たちの力で、完全に、そして永遠に治癒してくれ」
ウクライナ側は、歴史的な感情をねじ伏せ、絶対的な安全と未来の責任を選んだのでした。チェルノブイリは、もはやウクライナの負の遺産ではなく、人類がポルポカラマリ宇宙艦隊の力を借りて克服する最初の過ちとなることが決定されました
今回は珍しく4000字以下です、次回は長くなります




