#1 悪夢
この世界には"悪魔"という、人を襲う存在がいる。
人類は"魔法"という力で抗ってきた。
そして魔法の力で悪魔に立ち向かう者たちのことを、
人々は"魔導士"と呼ぶ。
これは、人類と悪魔の、アンノウンストーリー…
今から6年前、けたたましく鳴り響くサイレンの音で、
俺は目を覚ました。
「"悪魔警報、悪魔警報、市民の方々は、
すぐに街の外へ避難してください!繰り返します!
市民の方々は、すぐに街の外へ避難してください!"」
この日、俺が住んでいた街に悪魔が攻め込んできた。
悪魔どもは無差別に人を殺していった。
俺は家族と共に家を出て避難しようとしたのだが、
その最中に母さんと逸れてしまい、
俺と姉さんと父さんは途方に暮れていた。
俺が不安でいっぱいでどうしようもなくなっていた時、父さんが言った。
「颯月、睦美、父さんは母さんを探しにいく。二人は避難所まで走れ。」
「嫌だよ父さん!一緒に行こうよ、怖いよ。」
「大丈夫だ颯月、必ず母さんを連れて帰るから、絶対に生き延びるんだぞ。」
父さんはそう言って俺の頭を撫でた。
「睦美、颯月のこと守ってやってくれよ。お姉ちゃんとしてな。」
「うん、わかった。お父さん気をつけて…」
俺の姉さん、山口睦美は不安そうに答えた。
「颯月、大丈夫。お姉ちゃんがついてるからね。」
姉さんは俺の手を優しく握ってくれた。
そして俺と姉さんは、避難所に登録されている隣町の中学校まで走った。恐怖も不安も全部押し殺して、無我夢中で走った。いつもの通学路も死体がたくさん転がっていて、血生臭い匂いがする。
街を出ようとした時、俺は見たんだ。他の悪魔とは次元が違う、まるで神のような姿をした"白い巨人"の姿を。その巨人は神々しく光り輝いていて、周囲には大量の悪魔がいた。
俺はこの時直感したんだ。この巨人こそが、俺たちを死に追いやる、人類の仇なんだと…
そして俺たちは避難所に到着した。
「颯月、ついたよ。もう大丈夫!あとはお父さんたちを待とう!」
姉さんは安心したように俺のことを宥めてくれた。
俺もすっかり安心してしまって、その日はもう眠りにつくことにした。
まあこんなことがあってすぐに眠れるはずもなく、
俺はなかなか寝付けなかった。
「うーん、さつき〜、zzz」
姉さんは疲れてしまったのか、爆睡をかましていた。
俺は夜風に当たろうと思って、少し外に出ることにした。
その日は色々ありすぎて、思考が追いつかなくて、頭がパンクしそうだった。そんな俺の前にそれは現れた。
野球ボールくらいの大きさの白い玉だ。
それは空中にフヨフヨ浮いている。
(なんだろう、これ…)
俺が興味深そうに眺めていると、その玉は俺の方に近づいてきた。俺は避けることができなくて、その玉に当たってしまう…
と思っていたが、その玉は俺の体内に入っていった。
まるで実体を持たないかのように、俺の体にすうっと透けて入っていった。その玉の正体は今でもわからない。まあ6年経った今でも何も起こらないし、多分大丈夫だろう。
次の日、まだ父さんと母さんは来ていなくて、俺と姉さんは再び街を訪れることにした。すでに悪魔はいなくなっていて、問題なく街に入ることができた。
「颯月、私から離れないでね。何が起こるかわからないから。」
姉さんはこの頃から面倒見が良くて、とても頼りになる人だった。そんな姉さんには、今でも助けてもらってばかりだ。
そして俺と姉さんが街を捜索すること数十分、俺たちは父さんと母さんを見つけた。いや、見つけてしまった。
そこには父さんと母さんの死体があった。
二人とも酷いやられ様で、父さんは上半身と下半身が真っ二つになっていて、母さんは頭が潰されていた。
「ああああああああああああああああああああああああああああ!」
俺は言葉にならない悲鳴をあげてしまった。
優しくて大好きだった母さん、かっこいい姿を見せてくれた父さん。本当に幸せな家庭だったはずなのに。
なんでこんなことになっちゃったんだ。
二人が、俺と姉さんが何をしたんだ。
この時に俺は誓ったんだ。
"魔導士になって悪魔を絶滅させることを"
そして現在、俺、山口颯月は魔導士になるための専門の学園に入学した。魔法教育の最先端、実力主義で、強者にはそれ相応の待遇が認められる、
"国立対魔戦術学園エクソシア"に。
いや本当に大変だったんだよ…
偏差値バカ高くて、倍率も意味わかんない数字になってた。誰か俺を褒めて欲しい。姉さん以外で…
桜が舞い散る中庭を通って、俺は昇降口にやってきた。そして下駄箱で靴を履き替えて、俺は自分のクラスを確認する。
(俺のクラスは、Aか。)
俺は1年A組の教室に向かう。
そして教室に入って席についた。
10分ほど経って、担任の先生が教室に入ってきた。
「これからこのクラスの担任を務めさせていただく。これからよろしくな。」
先生は爽やかな感じの男の人だった。
「もうすぐ入学式が始まる。廊下に並んで、体育館に行け。」
と先生が言うので、俺たちは体育館に向かった。
入学式は普通の学校と流れはほぼ変わらない。
一つ特殊なことがあるとすれば、
"四天王講和"
この学園には生徒会という制度がない。
この学園の上位4人の生徒、四天王がその代わりを務める。そして壇上に立ったのはそんな四天王の頂点にして、最強の魔導士と呼ばれる存在、
"西行寺天音"だ。
「一年生のみなさん、入学おめでとうございます。しかし、入学はあくまでもスタートライン。あなたたちはこれから、ライバルたちと高めあい、自らの強さを高めていくのです。」
西行寺天音はそれっぽいことを語っていく。
そんなこと言われなくても、俺の心は変わらないのにな。
「そのために、ランク判定テストにしっかり取り組んでくださいね。」
と言って、彼女は壇上から去っていった。
そう。この学園にはランク制度がある。なんでも、
効率よく強者を育てるための制度なんだとか。
俺はこのテストでいい成績を残して、最強の魔導士になってみせる!!
俺たちは教室に戻ってきて、すぐさまテストを受けることになった。テストの内容は実技試験らしい。
(えっ、実技試験?俺まだなんも魔法使えないんだけど… 魔法使える様にするために入学したんですけど…)
そして一人ずつ順番に試験を受ける。
まあ案の定、俺は何にもできなかった。
(終わった。終わった終わった終わった。あーあ、どうにでもなれ。知〜らない!!)
俺は帰りのホームルームが終わってすぐに、学生寮に帰ってきた。この学園は全寮制だ。入学しただけで部屋一つもらえるなんて、太っ腹なものだ。
俺がベッドでゴロゴロしていた時、
携帯の着信音が鳴り響いた。
電話をかけてきたのは姉さんだ。
「もしもし姉さん、どうした?」
「颯月今日入学式だったんでしょ。ランク判定テストはどうだった?」
「全然ダメだった泣」
「まあこれからこれから!あんま気にしないでね!」
「なんでそんなに嬉しそうなんだよ…」
「そんなことないよ〜。今度颯月の部屋に遊びに行くね♩」
姉さんはそう言って電話を切った。
そのあと、俺は適当に夕飯を用意して、ちゃっちゃと食べてシャワーを浴びて、眠りにつくのだった。
次の日、さっそくランク判定テストの結果が返ってくる日だ。俺は朝から胸のドキドキが止まらなくてソワソワしてた。そして朝のホームルームでさっそくテスト結果を返却された。
俺の判定結果は、
最低ランクのEランク!?
読んでいただきありがとうございます!
毎週月曜日と木曜日に投稿できたらなと思ってます。
次回もお楽しみください!!