借金
ダンジョンが突如として現れた1ヶ月後、俺はゲームをしていた。異世界転生した主人公が最弱だけどそれを隠して最強へと成り上がる、というストーリーだ。
そして、そのゲームの主人公のレベリングをしていたら、突然部屋のドアが叩かれ、開かれた。
「あんた!!いい年して親の金を使うんじゃないわよ!!」
「??」
なにを言っているんだ?という顔をしていると、後ろから親父が出てきた。
「お前の分まで養う金は無い!!」
そう言われ、ほっぺを叩かれ、家の外へと引きずり出されてしまった。
別に、抵抗できなかったわけでもない。だが、突然の出来事に動揺して体が動かなかったのだ。
そうして、今へ至る。
「さて、どうしたもんかね」
まあ、いずれこうなることは予想していた。
だが、こんな訳の分からない俺のニート生活の終わり方は予想してなかった。
もっと段々と追い詰められていくのかと思っていた。
しかも、今はダンジョンが現れて一ヶ月後という事で、全く外を出歩く人が居ない。
だが、幸いなことにダンジョンが原因の問題は今まで起こってない。だけど、ダンジョンができてから気温が5度に固定されているのだ。
だから、外にでたいと思うような奴はいないのだ。
さて、本当にどうやって生きていこうか。
幸いなことに、両親から貰った金がある。
だが、それも何時か消えてしまうだろう。
じゃあ、働くか!
~一時間後~
「いや~、どこも時給安すぎだろ!」
おかしいだろ!
なんで、公園で叫んでるかって?そりゃあ、今すぐに金がもらえるというアルバイトの時給が低すぎるからだ。一番時給が高いので、3500円だよ?おかしいだろ。
ニート時代はなんにもして無くても一ヶ月5万くらいもらえてたのに。
働いて3500円は安すぎるだろ!!
今までの偉人にこの状況を伝えたらどういう助言を貰えるのかを想像してみよう。
まず前提として、偉人は偉大だ。だから、偉人なのだ。で、考えるスケールも偉大なのだ。だから、きっと、どこかの会社に勤めるんじゃなくて自分で会社を作れというだろう。もしくは盗みを働けというか。
だが、犯罪を犯すほどの勇気は「無職歴=年齢」になってる俺にはない。つまり!
会社を作るしかないのだろう。
「じゃあ、どういう会社を作ろうか?」
とは言ってみたものの、正直何を作りたいかは決まっている。
というか、ニート時代に考えていた。
それはズバリ!!
『冒険者ギルド』だ!!
今のこの世の中、ダンジョンというロマン溢れる謎の建物が急に出現して、日本社会が混乱しているのだ。
それに乗じてひょい、っとそのダンジョンの謎を解明する会社を作ればきっと儲かるに間違いなし!!
さあ、早速会社を作る手続きをするぞ~!!
~~~~
「こんにちは」
「あ、はい。こんにちは……」
やっべ~!!人と話すの久々すぎて声出ねーー!
「今回はどういったご用件でしょうか?」
「あの、会社を作りたくて、その。」
「な、る、ほ、どーーー。かっし、こまりました~~~」
なんかベテランっぽいな。この人。
「起業をサポートするのと、うちでやっちゃうのとどちらがいいですかね?」
「あ、おまかせで。お願いします。」
「かっしこまりました~~!では、担当の者を呼んで来るので少々お待ちください」
そう言い、かっこういいサラリーマンは出ていく。
いや、本当はこんな所くるはずじゃなかったんだけどね。
どうやって会社を作るのか分からなくて、この前コンビニに行く途中で見かけた、「起業のサポート!」という看板のある所に入ってみたのだ。
そしたら何故かトントン拍子で話が進んでしまい、今に至る。
で、なんか会社を作るのに土地が必要らしくて、そのために借金をする必要があって、それで得た金を全額渡せば会社を自動で作ってくれるらしい。
なんとも優しいんだ。
「あ、どうも、担当になりました島崎です」
「あ、こんにちは」
「今回は起業の全サポート、つまりこちらで全て引き受けるという事で間違いないでしょうか?」
「あ、合ってます」
「あの、僕も誰かの担当になるのは初めてなので少し段取りは悪くなるかもしれないですが、軽く起業までの流れをご説明いたします」
その後、口頭でくっそ長い説明をされたのだが、要約すると、こうなる。
会社設立のために設立登記?とかをしなくちゃいけなくて、なんやかんやで金がめっちゃ必要だから消費者金融に行って借りられるだけ借りて渡してくださいってな感じだ。
よし。怪しいところはないな!
「じゃあ、早速お金借りに行ってきます」
「分かりました。あ、そうだ。クレジットカードはお持ちですよね?」
と、さも持っているのが当たり前なのかと言うように言ってくる。だが、残念。収入ゼロのニートがクレカの申請が通るわけがないのだ。
「いや、持って…………ないです……」
「あ、そうですか。では、お金を借りるときに、これを持って行ってください」
「は、はあ」
そういわれて渡されたのは、A4サイズのファイルだ。中には何かの紙が入っている。
「それを、中身を見ずに渡してください。きっと、お金を貸してくれるはずです」
「は、はあ」
そう言われたはいいものの、本当に借りられるのだろうか。
~~~
そうして、僕は今、指定された場所に来ていた。
なんか、さっきこの路地に入った瞬間から雰囲気が変わっていた。
普段なら絶対に入らないし、なんなら覗くのすら怖いような、暗い路地だ。
だけど、指定された場所はここで合ってるはずだ。
俺はそう考え、その小さい扉を開く。すると、横からの不意打ちを食らう。
「今日は、なんだ?」
と、柄の悪い人が出てくる。まさか、ここって俗に言う闇金?え?俺、もしかしなくてもハメられた?
いや、でもこのファイルを出せばお金を借りられるって言ってたし…………。
とか考えてると、そいつは急に顔を近づけてくる。え、くっさ。こっわ。
それにしてもどうしたんだろうか。
「お前、それよこせ」
と、そいつが指をさしたのは、俺が持っていたファイルだ。
まさか、このファイルなんか違法な奴なんじゃ…………。
「あ、はい」
とか思ってもそんな事、指摘する勇気なんて僕には備わっていないのさ。
「おお、お前が、へぇ~」
なんか意味深だな。これって、もしかしてなんかの伏線なのか?
「じゃあ、年利0.5%で3000万貸してやるよ」
ん?なんか規模ちがくね?うちの両親が、2000万円問題がどうだこうだ言ってて、大丈夫かな?とか話してたのに、3000万?1000万円プラス?
そう考えてると、いきなりイカしたスーツを着てるおっさんが出てきて、映画とかの違法取引で使うアタッシュケースを持ってきた。
そして、それを俺に渡してくる。それを、取ろうとした瞬間…………!!!!
「おも…………」
「あははははは!!こんな大金初めてか?これが、金の重さだ!」
さっきまでのキャラはどこ行ったんだよ!さっきまでのヤクザキャラは!
「じゃあ、それを、きちんとこのファイルをお前に渡した奴のところに持って行きな」
「はい」
もう、何が何だか分からないよ…………。