ハチ精霊様と聖属性化した治癒魔法 6
精霊王の手の中に、集まっていく光。その光の球体が鶉の卵ほどの大きさまで育ち、片方の手にあった綺麗な光が中に入った。
「今の、ハチ精霊様?」
何気なく聞いてしまったが、精霊王は頷いてくれた。
『リンネと申したか、新たな身体を与えたが、生まれるまでには時間がかかる』
「新たな身体でリンネが生まれる‥‥」
精霊王の言葉に、その場に跪いて祈るように感謝した。
『人とは不可解な生き物よ、精霊に寄り添うもの、仇なすもの、様々におる』
感慨深いのか、精霊王は私を見ながら卵を懐にしまった。
『孵ったら、其方を呼ぶ。ハチ精霊を治癒した礼にそれをやろう』
いつの間にか、エメラルドグリーンのハニカム構造が地模様の裾に蔓の金糸が入った美しいローブが肩にかけられていた。
お礼を言おうと精霊王様の方へ向き直ったら、姿は消えてしまっていた。
「中々手厳しいな‥‥リーナそれは?」
どうやら、アルフレッド殿下は精霊王様を見送ったらしく、別れ際に何か言われたようだった。不意に自分の肩にかけられたローブに視線を向けられたので、ハチ精霊様を治したお礼に頂いたと説明した。
「精霊王様とお会いしたのは何時ぶりだろうか。今回は厳しいお言葉を頂いてしまったな」
「父上もですか。私も現当主として、ハチ精霊様を使役する公爵家として厳然とした態度で犯人を捕まえよと」
精霊王を前にして、1人1人が受け取った言葉は違ったのか、深い息を吐きながら自戒するように自分に言い聞かせている。
グラン様は若かりし頃に精霊王様に会っているのか、感慨深げな面持ちで頷いていた。
こんな神秘的な経験を寝て逃してしまったオースティン殿下とレイモンドお兄様は残念だったかもしれないと言ったら、アルフレッド殿下とロナルドお兄様にリリアンヌ様までもが首を横に振った。
「あの2人が寝ていたのは正解だ」
これは後から分かった話だけど、精霊王様がいらした時に2人は世にも恐ろしい夢を見たのだとか。口にすることすら憚れると、何度聞いても教えてはくれなかった。
ただ、ハニエル様やグレン様、レイン、レニ、アッシュ、リアの6人は、絶対に精霊を怒らしてはいけないのだと、精霊王様に念を押されたらしい。
「精霊王様は精霊を怒らせるな。その怒りの深淵は恐怖を凌駕すると言われました」
レニが耳打ちして教えてくれたけど、恐怖を凌駕する怒りの深淵ってどんなものなのか、想像できなかった。
あの精霊王様が忠告というか警告するぐらいなのだから、余程のものなのだと思う。
本当に犯人に聞かせてやりたいお言葉だと思った。
読んで下さって、ありがとうございます。
毎日、一話ずつ投稿できたらと思います。
貴重なお時間を使って頂き、心から感謝します。
誤字脱字に関しては、優しく教えて頂けましたら幸いです。




