ハチ精霊様と聖属性化した治癒魔法 3
「グレン様、治療の前に一つ約束してください。何があっても精霊王を信じ、私を信じて受け入れると。傷つく現実があったとしても、逃げずに起こった事として受け入れてください。それが全ての為だから」
「たとえ耳が聞こえなくても、後遺症で何かを失っても、誰も恨まない。絶望もしない」
彼が考えている部分と、私が見ているところはかけ離れていた。けれど、最後の言葉を信じてみようと思う。
「何があっても、心を闇に囚われないで、絶望しないと約束してください」
「‥‥リーナ様が何を見ているのか、私には分からない。けど、貴女がそう言うなら、真名の誓いにかけて私は約束します」
「その言葉を信じます」
「雷属性と土属性の聖属性魔法よ、グレン・ロードライ様の耳に入った悪意の雷魔法を退けよ。同時に、水属性の聖属性魔法よ、身代わりとなって彼を救ったハチ精霊様の精霊体を顕現せよ」
「身代わり?!」
エマニュエル様が叫んだ言葉は、その場の誰もが思った疑問かもしれない。
でも、徐々に彼の目の前にボロボロに傷ついた精霊体が現れ、その悲惨さに息を呑む気配がする。雷光の剣のような物が胸に突き刺さって、今もその精霊体に稲妻を受けている。
「な‥‥なんで‥‥どうして、ハチ精霊様が!」
声の出ないグレン様の横で、リリアンヌ様が泣き崩れている。もう生きていないと分かる力の抜けた手足。それでも精霊体のまま守る意思で稲妻の余波を食い止めている。
「あの時、ハチ精霊様は5体ではなく6体‥‥いらっしゃったのですか‥‥私を庇って‥‥」
力なく声に出した真実は、グレン様自身に苦しい現実を突きつけた。
「そっか、そうだったのか。君はグレンに付いていたハチ精霊様だったのか‥‥頑張ったね‥‥」
リリアンヌ様は納得した様に、声無く泣いた。心と身体が悲しみに震え、理不尽への怒りを露わにしていたけど、目の前の知られる事の無かったハチ精霊様に、労う様に泣きながら笑顔を作っている。
ありがとうと、良く頑張ったと、生きている内に伝えたかったのだろう。
魔法は万能では無い。
それは、人が使うからだ。人の心が万能から遠ざけてしまうから。良いことに使えば文明を築き上げるし、悪いことに使えば理不尽を生みだす事になる。
『どうか、この子から雷を取ってあげて』
『精霊体を治してあげて欲しいの』
『精霊王様にこの子をお願いして欲しいの』
『この子にも名前付けてあげてくれる?』
『名前があればリーナと繋がりが出来るから、お願い』
何処からともなく聞こえてきた声が、マオリ・リカ・カオリ・カベルネ・メルロと名付けたハチ精霊様達だと気付いて、私は涙を拭いて笑顔で頷いた。声は全員に聞こえていたらしく、ハチ精霊様の直の声に皆が驚いていた。
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