もう一つの転写方法 25
改良された立体魔力波形計測装置は正常に作動して、グレン様の耳に残った悪意の魔力波形の模型の隣にマオリ・リカ・カオリ・カベルネ・メルロと出来上がった魔力波形の模型が並んでいく。
「全部、同じに見えますね」
『レイン?!』
「殿下、明後日には試食会を開けるようです。夕食も何時でも食べられます」
レインが帰って来た事で安堵したのか、装置が完成してハチ精霊様を治せる喜びに安堵したのか、私に少し変化があった。少し大きくなったのだ。
グラン様が私を手に乗せたまま、大結界の方へ歩いて行く。自然とハチ精霊様や皆の視線が私に集まって‥‥。
「リーナ嬢ならそのまま体に戻れる。本来の目的があるのだろう?」
『そうでした。グラン様、ありがとう!』
彼の手から飛び立って、大結界の中に入っていく。新緑の光の様な大結界の中を進んで、自分が眠っている姿を見つけた。出てきた時とは真逆に浸透していく感じで、体の中に入った。
木漏れ日と光、キラキラした大結界の片鱗が飛び散って私の視界に皆の顔が見えた。
「リーナ!」
私に手を差し伸べてくれたアルフレッド殿下に微笑むと、殿下は優しい眼差しで抱きとめてくれた。
良かったと抱きしめられて、少し恥ずかしかったから殿下の肩にオデコを当てて、ただいま戻りましたと応えた。
「リーナ‥‥」
ロナルドお兄様とレイモンドお兄様が涙目になっている。こんな状態でも、レイモンドお兄様はハチ精霊様に魔力を送ってくれている事に感動してしまった。
「リーナ嬢、お帰り」
レインと共に来たリリアンヌ様が安堵したように微笑み、リアやレニは泣き崩れている。
私はたくさんの人に心配をかけてしまった。
「アルフレッド殿下、魔力波形を写し取る装置は完成したのでしょうか?」
「ああ、先ほどグレンの耳の中にあった悪意の魔力波形を形にできた。ハチ精霊様方の羽にある悪意も。それら全てが同じ魔力波形だと認識できた」
「では、全てを治しても?」
「ああ、大丈夫だ。しかし、私は君の身体の方が心配だ」
抱きしめてくる殿下の身体を少しだけ押し返して、王太子が精霊様や臣下を後回しにしてはいけないと首を横に振った。
「常に人を憂う、君の高潔さも好きだな」
「で‥‥殿下!」
頬にキスをされ、突然の不意打ちに顔が真っ赤になった。
鼓動が早く高鳴って、思考回路が爆発寸前なものの、この時ばかりは誰も茶々を入れずに背を向けて観ないようにしてくれた。
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