もう一つの転写方法 11
「分かりました。では、生徒は生徒らしくラリー先生から寮で授業を受けてください」
「ハニエル、それはあんまりにも‥‥リーナ様は何も知らない、だから!」
何処で受けても同じだと思った。
でも、ハニエル様の言葉からは、拒絶したような何かを感じる。私の言葉が今の状況を作ってしまったのだから、そこだけは謝罪しないといけない。
グレン様がハニエル様に抗議されていたけど、私の耳には聞こえていなかった。
「いえ、私が言い過ぎました。どうかご容赦くださいませ。ハニエル様方の時間は貴重ですので、そちらの研究の進み具合に合わせます。ブリジットもごめんなさいね」
それを伝えるのが精一杯。心配したハチ精霊様が髪留めから顔を出している。
「レニ、髪留めを持っていてくださる?」
私に向けられる負の感情は、傷を負ったハチ精霊様にはきつ過ぎる。
ああ、今日は何でこんなに身体が怠いのだろうか。研究室に嫌悪感やいろいろな負の感情が沸き起こって、眩暈がするような濃さだ。
「リーナ様!」
レインとレニの叫ぶ声が聞こえたけど、一人で大丈夫だから‥‥そう思った瞬間に、装置の方からペンが飛んできた。
雷鳴と稲光が辺りに鳴り響き、私の身体が雷に包まれていると理解した時には、レニの土属性の魔法で身体に入った電流を外へと流している。
「リーナ様!」
ブリジットの声がしている。
冷静に考えて、視線を彼女に向けると、アッシュとリアに守られて怪我も無さそうだ。良かったと思ってハニエル様達を見たら、目の前に煤けた水色の髪が視界に入った。
倒れ込んだ私に追いかぶさったレインが、私を見て微笑んでいる。バイオレットの瞳が潤んで『無事で良かった』と言っている気がして、慌てて彼の身体を支えようと背中に手を回した。
近衛騎士の強固な鎧を破壊し、焼け焦げた地肌から滴る血が手に着いて、レインが咄嗟に庇ってくれたのだと。
視線を降ろした先に、深々と刺さるペンから今も稲妻のような光が身体に走っているのが分かる。
私は一体何をした?
なぜ、ペンは飛んできた?
「私は‥‥人の感情に反応してはいけなかった‥‥」
「リーナ嬢、今直ぐそこを!彼の傍を離れてください!」
ハニエル様がレインの傍を離れろと言っている。彼の判断は正しいのかも知れない。
けれど、今の私にその選択は無い。
真名の誓いで彼が示してくれた誠実な心に報いたい。彼が命がけで私を守ってくれたのなら、今度は私が彼を守りたい。
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